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自分、不器用なんで…

 

「怖がることは悪い事じゃない。それに知らない事は誰だって怖いもんさ。その事がベルはもうわかってるんだね。はぁ…年の離れたあのしっかり者のマルと友達になるのもわかる。…どれ、お湯が沸いたようだ」


 グリンデルさんはポットに新しい茶葉を入れてお湯を注いだ。

 一息ついたところで、グリンデルさんが言った。


「それじゃぁ、次はこの匂閉布をみておくれ。布だから、これで裁縫関連が出てきたら、花魔法の本領発揮って事さね。無理そうならすぐに意識を…そうだね…この菓子に向けて。いいかい?ちょっとでも気分が悪くなったりしたら、すぐに気を逸らして『鑑定』したいって気持ちを断ち切るんだよ」


「はい」


 ――ポワワン


 ***

【鑑定】

 匂閉布:大量生産品

 匂いが外に漏れないよう特殊加工した布で主成分は数種類のスライム粉からなる/防撥液でコーティング済

 料理:食べないよ~

 裁縫:袋状にする場合は、防撥液と白スライム粉に浸した糸で縫い合わせると、防水効果が高まる/割合は裁縫スキルで目分量調整可

 ***


『裁縫』欄が出た!

『目分量調整可』って地味に凄いんだけど…スキルがあると、こんな凄い事ができるんだ。

 どちらかというとスキルって『あったらいいな~』くらいのものだって聞いてたけど…。


『料理』欄がまたあるよ…これ、いらなくないか?

『料理』はしゃしゃり出てくるのかね…。


「裁縫欄がありました…匂閉布:大量生産品………割合は裁縫スキルで目分量調整可、以上です。………ステータスに変化なしです」


「体調は…具合はどうだい?」


「大丈夫です」


「…そうかい。ちょっと診させてもらうよ」


 匂閉布ってスライムの粉から出来てるんだ…。

 それどころじゃないのはわかってるけど、スライムの粉よ?

 凄い異世界っぽいのキター!


「うん…大丈夫そうだ。それにしても目分量とは驚いたね。目分量でわかるってどうやってわかるんだろうね…こんな話、聞いたことがないよ…」


 あ、やっぱ特殊な感じだった。


「もう、これくらいじゃ驚かなくなってきてる自分が怖いがね…さて、連続でやってみようじゃないか。次は…この魔道具を『鑑定』してみておくれ」


 ――ポワワン


 ***

【鑑定】

 体力魔力簡易測定用魔道具:注文品

 作成者:魔道具師シーラ(ユスティーナ国エヴァンス領ミネラリア(町)「シーナ魔道具店」)

 特徴:あくまで簡易ではあるが体力と魔力が本人比率で10%残(赤)、30%残(黄)、50%残(緑)、70%以上残(青)が()内の色表示でわかる。5%では緊急音が鳴る

 料理:食べないよ~

 ***


 また出たぞ、『料理』欄!

『裁縫』欄は寡黙だなぁ。自分、不器用なんで…的な奴なのね、きっと。


「あの…読みあげます。体力魔力簡易測定用魔道具:注文品………料理…食べないよ~、以上です。………ステータスに変化なしです」


「こりゃぁ…魔道具も鑑定可能かい。しかもシーラの名前まで出るとは…こんな鑑定って…いや…もう、普通と比べちゃいけないさね…そうさね…」


 グリンデルさん…独り言をぶつぶつ言ってるよぅ…。


「コホン…こりゃぁもう、何でもかんでも鑑定出来ちまうって気がするね…。確かにこれはシーラの店でオーダーしたもんだよ。これも全て正しい情報だったよ。そもそも『鑑定』ってね、間違った事は表示されないってルールなんだ。この大前提が崩れると、世界の根本を揺るがすことにもなるからね。自分のレベル不足で視られないなら、『表示不可』と出ると聞くが…。これは私の『察知』も同じルールなんだよ」


「じゃぁ…書かれている事は正しい?信じても良いの?」


「あぁ、そうしないとこの世のことわりってもんが成立しないからね。今日、ベルが鑑定した物に関しては全部正しい結果が出ているし…正直な所、固有スキルの鑑定に比べて異様に詳細だとも思う。…さて、体の具合は…大丈夫そうだ。念の為、視させてもらうよ」


 体調を確認してくれた後は、ラベンダーっぽい花の話に移った。

 グリンデルさんも研究してみたいので少しわけて欲しいって。

 本当に甘みが出るならお菓子に使ってみたいけど、グリンデルさんの研究結果待ちにしよっと。


「お話し中ごめんなさい」って、マルが申し訳なさそうに声をかけてきたから、ふと外を見たら、もう夕暮れ時になっていた。

 私もたいがいだけど、グリンデルさんも自分の分野になると周りが見えなくなるタイプとみたね…。


 マルが孤児院まで送ってくれるから、そろそろ帰らないといかん。

 マルの帰り道が心配になっちゃうもん。

 そう言ったら、孤児院と薬局は近いし、まだまだ人通りもたくさんあるから大丈夫なんだってさ。


 町中はこれくらいの時間帯なら、仕事帰りの女性が普通に一人で歩いてるらしい。

 特にミネラリアの近くにダンジョンが出来てからは、今までより夜遅くまで賑わうようになって、町中が活気づいてるのを感じるって言ってる。

 さすがに真夜中の女性の一人歩きはやめた方が良いみたいだけど、この時間なら問題ないらしい。


 それもこれも街灯様様だって。

 街灯…それって確か、『ぼんくら王家のまともな采配』のうちの一つじゃなかったっけ。

 街灯が設置されてから、日が暮れても歩けるようになったんだってさ。


 帰る前に、ドラジャの搾りカスの時にもした契約、『守秘匿魔法契約』を結ぶ事になったんだ。マルは魔法契約をもう何度も結んでるんだって~。


 薬師は見習いとは言え、かなり秘密を知る立場だし、特殊技術の流出とかにも関係してくるみたいだからよく使うらしいの。

 沢山、守秘義務のある話を聞いてると、何が話していいことかダメな事かが段々わからなくなってきちゃうから、便利なんだって。


 頭の中で警告音がしたら、それは話しちゃだめって事だから。

 警告音が鳴った時にちゃんとストップすれば何の害もないものだから、むしろどんどん使いたいくらいだってさ。

 そういう使い方もあるんだなぁ。


 お店に契約用魔紙がたくさん用意してあったのが見えちゃった。

 薬師さんってやっぱり大変な職業だよね。


「でも、私も契約なんてなくても、誰にも言うつもりなんかないから安心してよね!それより変な人とか…近づいてくる怪しい人とか…気を付けないとダメだよ。あとは、急に道を斜めに突っ切って来る人とか…」


「あはは。それは普通に怖いから、絶対逃げるってば~!」


 変質者から逃げる方法なんかを延々とレクチャーしてくれたけど…この世界にはそんなに変質者がいるのかい?って逆に不安になっちゃった。

 さっきの治安の良さの話はなんだったんだよ…。


 マルに送られて無事に孤児院へ着くと、お茶菓子で頂いたあの金平糖のようなお菓子の包みを渡してくれた。


 カシュリって言うんだって。

 この町で作られてる大ヒット商品らしい。


 包装紙も本当に綺麗なんだよ。

 ドーンと薔薇柄だけどさ…

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