いや、だって総合するとアラサーだからさ。
確かにさぁ、面白そうな魔法が見てみたいとか思ったけど、あくまで他人のをちょろっと見たかっただけなの。
こんなやっかいフラグが立っちゃうような魔法を持たされるのは、正直困るんだけど…。
あたしゃぁねぇ、生活魔法で良かったんですよ…すこ~し生活魔法が使えるだけでさ…。
手からお水を出したりして、ぐふんぐふんしたかっただけなのに…。
「なんか…とんでもない話で…」
「その通りだよ。まったく…本人が自覚してくれて助かるよ。院長が戻ったら一度顔を出すように伝えてくれるかい?すぐ戻るんだろ?」
「はい。今週中には帰ってくるって言ってたから…」
「初期学校が始まる前に、話をしとかなきゃならん事があるからね。『大至急相談したいことあり』って書いておくから、手紙を渡しておいてくれるかい?もちろん詳細は書かないからね」
「はい。あの、本当にありがとうございます。今日、お話させてもらえて本当に良かったです」
グリンデルさんは、やっと一息ついたと言わんばかりにお茶をぐっと飲みほした。
「そう言ってもらえると嬉しいね。…そういやさ、いっとう最初の『鑑定』って、一体何を調べたんだい?なんだか薬草って言葉が聞こえて気になっていたんだが、差し支えなければ私にも教えて貰えないだろうか」
「お話を聞いて頂けるのなら、是非お願いします。以前、マルは雑草だって言ってたけど、私の鑑定画面によると薬草の一種だったらしいお花の事で…」
「…ほぅ。面白そうだ。どれ、お茶を入れなおそう。是非、私も見させてもらいたいね。見てもいいかい?」
「是非見て頂けますか?できれば少し相談がしたくて…」
「薬草の事なら、こっちから見せてもらいたいくらいさ」
「雑草としか思われてないって事は、強い作用はないのかもしれないけど…良い香りだし、成分に『精神安定』や『体内バランス調整』ってあったから、興味が湧いたんです」
「雑草としか思われてないって事は、昔は雑草だったが、時を経て効能が付いた可能性もあるし…それこそ鑑定スキル持ちが、力が弱くて情報を取りきれなかったって事も考えられるね。大袈裟に言うと『花/無害』としか鑑定画面に出ない人だっているんだろう。間違っちゃいないが、鑑定には個人差があるもんだからね。私はさ、薬草茶の研究をライフワークにしてるんだ。強い効き目はないけど、穏やかに作用する薬や病気の予防薬にだってなるのさね。まぁ、この考えが邪道だって言ってくる奴もいるが…」
薬草茶って汎用性が高いよなぁ。
ハーブティーくらいな感じで考えてたけど、もっと効果も高そうだしお得感がある気がする。
それにさ、ポーションがある世界で、予防薬って考えに行きつくのは結構凄い事な気がするんだけど…邪道だなんだって言ってくる人って、いやそれ絶対利権絡みでしょ…。
「薬草茶はね、薬やポーションとは値段が全く違うんだ。薬草茶なら庶民が気軽に買える価格に抑える事もできる。ポーションを少しだけ使って、薬草茶で効能を向上させる事だってできるんだ。薬を受け付けないくらい体が弱っている人にも使えるものもある。ずっと…長年研究を続けてるんだよ」
「お話を聞いていて思ったんですけど…これ、鑑定したら『毒性無し』って出たの。ポーションやお薬で使う薬草には、成分の分量によっては毒にもなる物が多いってマルが言ってたから…もし本当に『毒性無し』の薬草だとしたら、たくさん摂取しても大丈夫だろうし、薬草茶の材料の一つとして使えるようになるんじゃないかなって…」
今朝摘んだ生花と勝手に完成されてしまった例のポプリを、持ってきた袋から取り出した。
「そこに置いてある桶、使っても良いですか?」
「かまわないよ」
「お借りします」
桶に水を張りながら話を続ける。
「最初はマルと薬草採取していた時に綺麗だからって摘んだんです。こっちは摘みたての生花で、こっちが乾燥させたものです。生花のほう、花をもいで揉むと…」
「………おっと、こりゃぁ凄い匂いだ」
「でも、この手を水に…」
「つけるのかい?」
「はい」
「ほぉ…こりゃ凄いね。花一つでこれかい。なんと良い香りだろう」
「マルから雑草で害はないって聞いてたんですけど、香りが強いので…本当に害がないか知りたかったの。それで、調べたいなって思ったら、『鑑定』って画面が急に出てきて…」
「なるほどね。鑑定スキル持ちはとにかく少ないから、わからない事も多いが…通常、固有スキルは何かに特化されてる場合が多いんだ。例えば私の職スキルは『薬師』だろう?それに『察知』の固有スキルもあったのさね。すると『体の状態異常』の『察知』が出来るようになったって訳なんだ。わかるかい?何でもかんでも『察知』出来る訳じゃないんだよ」
スキル同士で結びつくって感じかなぁ…裁縫が出てこないのはそれが原因?
「じゃぁ、私の『鑑定』は『料理』に関する事かも…あれ?薬草って料理…違うかなぁ…」
「いや…これは固有スキルとしての『鑑定』の話さね。もう、ここまできたらベルの場合はこれも無制限なのかもしれない。ふん………ベル、もう一つ二つ鑑定してみないかい?」
「はい、してみたいです。本当は色々鑑定したかったんですけど、故意に鑑定するのはまだ怖くて…。魔力の覚醒がすごく遅かったから…なんか起こると怖いって思っちゃって…。だから…まだこの草しか鑑定してなかったの。ここで…グリンデルさんがいるところでなら安心できるから…」
「まだ小さいのに自制心も強いときたもんだ」
「怖がりなだけです」
いや、だって総合するとアラサーだからさ。
無謀なことして色んな意味で残念賞な人、たくさん知ってるもんね…