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いや嘘です。ガッツリわかってます。

 

「もう一回お湯を入れても良いんだろう?」と言って、グリンデルさんはお湯を沸かすとポットに継ぎ足して、暫く無言でお茶を飲んでいた。すると突然、膝をバシッと叩いた。


「あぁ、色魔法ならステータス画面でわかるじゃないか!こりゃ嫌だよまったく…年は取りたくないもんさね。ごめんよ、ベル。色魔法持ちかどうか…わかる方法があったんだ。久々の色魔法の事ですっかり忘れていたよ。どうする?ここでもう一歩踏み込んで確認してみるかい?詳しい事がわかるかもしれないけれど」


「グリンデルさんが一緒に居てくれる時なら安心だし、お願いしたいです」


「簡単なことなんだ。ただ、最初はちょいと苦労する奴も居るらしいから、まぁ一度やってごらん。ステータス画面を開いて………」


 グリンデルさんに言われた通りにステータス画面を確認する。


 ――ポワン


 ***

 ベル(6)

 ♀ 人間族


 体力60/60

 魔力60/60


 色別

 無


 職スキル

 料理1

 裁縫1

 ***


 で、意識を『無』の表示に…ぐぐぐ…うまくいかない…。


 あ!これはもしかして…ふっふっふ。


 …上手くいった~。

 イメージが大事なんだぜ!


 マウスポインター『⇒』をイメージして、矢印を『無』の部分へ置いてみる。

 からの~、クリック!


 出たっ!!


 ――ピロロン

 

 ***

 鑑定1

 収納1

 浮遊1

 転写1

 吟遊1

 +

 ***


「グリンデルさん…出来ました!」


 グリンデルさんは体力魔力簡易測定魔道具を使いながら、気分は悪くないかなどを尋ねて、ステータス画面を確認するように言いながら、診察をしてくれた。


「大丈夫です。ステータス画面に変化はありません」


「…ベル、大事な事だから良くお聞き。ここから先は、私に伝えても良いと思うスキルだけを話しておくれ。もともと『鑑定』なんて話を無防備に店中で話し始めたから、危なっかしくってつい話に割り込んじまっただけだからね」


「すいません」


「謝らなくたって良いさね。ただ、魔法やスキルってのはね、本来むやみやたらに他人に開示するようなものではないんだ。もちろんベルが話したければ話を聞くし、魔力暴発や魔法やスキルの暴走の相談事も薬師が頼られるから…薬師ってのは色々と蓄積されたノウハウもある。でもね、私がその薬師だからといって、全てを開示する必要はないんだよ。ベルが選ぶ事なんだ。わかるかい?」


「わかります…」


「そりゃ、暴発しちまったり、その診察に自ら来ておいて隠されても困るがね」


「はい」


「…聡い子だから言ってるんだよ。キツい言い方かもしれんが、ベルには家族がいない。自分の身は自分で守って生きていかないとならない事も…理解出来ているだろう?」


「はい」


「先を見据えて言うがね、この事だけじゃないんだ。取捨選択…決定権はいつだってベル自身にあるって事を、忘れないで欲しいんだよ」


「うん…」


「ただね、相談できる人がいるって事も忘れないで欲しい。道理をわかってる子だから、自分で解決出来る事も多いだろうが…危ない事かもしれないって感じたり、違和感があるような時はいつだって、ここに来てくれてかまわないんだからね」


 確かに後からいくらでも聞けるし…初期学校で基礎訓練を学んだり、出来るかどうかわからないけど、魔法の情報を自分で集めたりしてからでも遅くない。

 ここに来れば助けようとしてくれる人がいるんだって思えるだけで、心にずいぶんと余裕が出てきた気がする。

 

 とりあえずは『鑑定』と、どうしても確認しておきたい『浮遊』、この二つだけ今日は聞いておこう。


「ありがとうございます。でも…その上で教えていただきたい事があるので、話を聞いて頂きたいんです。『鑑定』の他に、『浮遊』っていうのがあって…あ、あの…ラナが…木に登って怪我した子なんですけど…木から落ちた時に『ラナ、止まって!』って…私、叫んだんです。その時…ラナの体が宙に浮いて…落下が止まったの。ずっとパトナが力を貸してくれてたんだと思ってたんです。でも…パトナが私の力だって…もしかして『浮遊』って、そういう力なの?…怖くって、ずっとみんなには黙っていて…」


「そんなことがあったのかい…いや、黙っていた事はいけないのかもしれないけれど…今回のこれに限っては黙っていて正解…だろう…。いや、道理でラナの体が傷ついてないはずだ。ラナを助けたのはベルの『浮遊』の力だろう」


 差し支えなければ、スキルの横に書いてある数字…レベルを教えて欲しいと言われ、レベル1だと伝える。


「レベル1で…木から落ちた友達を浮遊させたって…なんと強い力なんだろうね…。しかも初めて使ってそこまでコントロールできたって事か…。そういやベルは、詠唱してないね。その…詠みを知っていたのかい?鑑定を使うときも特に唱えていないようだが…心で唱える事で詠唱になる?…いや、まさか…一体どうなってるんだい…」


 詠み…詠唱って、呪文みたいなやつ?


「詠唱って?『ダメ!』とか『止まって!』みたいな事は言ったと思いますけど…違いますよね…?鑑定と違って、浮遊は勝手に出てきたりしないから良くわからないけど、どっちとも特に何かを唱えるって事はしてないです…鑑定も、『鑑定したいなぁ』って思っただけで…」


「『助けて!』ってのは違うだろうねぇ。色魔法はね…どんどん廃れてきているんだ。その原因の一つとも言われてるんだが…詠唱が異常に長いのさね。色魔法は攻撃力が強いものが多かったんだが…戦いながら攻撃魔法なんて使えやしない。強い防御魔法でも使える仲間がいりゃぁ別だが…防御スキルも魔力をたくさん使うものが多いと聞くからね…詠唱してる間に相手に殺されちまうだろう?」


 あー、それは…。


「色魔法は膨大な魔力を消費するからね。魔力の多い奴だって、そこそこの威力の魔法だと、日に一回二回使えれば良い方だろう…もともと魔力量が足りなくて使えない輩も多いんだ。本人の魔力が100なのに、使える魔法が魔力を最低でも300程くっちまうとかさ。平民たちに色魔法使いが残ってない理由も恐らくそこさね。日々の糧にならない魔法なんざ要らないからね」


 詠唱が長すぎて使えないとか、しかも一日に一回二回しか使えないとか…異世界の魔法イメージが崩れ去ってくわよ…格好よく攻撃魔法で魔獣を倒す冒険者とか…見てみたかったのに!


「それにしても…無詠唱かい…。ベルは『守秘匿魔法契約』って知ってるかい?」


「…一度、結んだことがあります」


「おや、そうかい。なら話は早い。孤児院には手紙を書いて渡そうかと思ったけど、書面なんて論外だ。この話は院長以外には話さないよ。ベルはとても珍しい(いにしえ)の魔法と言われる力を使えるって事になる。しかも、今のところ魔力消費なしで、だよ。さっきも話したがね、もし知られたら悪用しようとするやつがいつ出てくるとも限らない。話が…難しいかい?」


「…何となくわかります」


 いや嘘です。ガッツリわかってます。


「とにかく、話をする相手はよくよく選ぶことだ。普通の『鑑定』持ちってだけで、狙う奴らもわんさといるんだよ。だがね、この『浮遊』は…もっとまずい。非常に強い力だし、攻撃にも…相手を浮かしちまう事がもしできるのなら、無力化が出来るって事にもなるさね。これは知られたらとんでもない事になるのは…もうわかるね?」


 他にも色々ある挙句に、最後には『+』マークもついてるなんて言えない…

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