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それは僕の素っ裸を見たからでしょうか?

「獣人は匂いに敏感だけど大丈夫かしら?」って言われたけど、嗅覚が発達した感じはしないなぁ。

 『もともと僕はほとんどというか、まったくの人間でして…』なんて言えないから、しっかりとお礼だけ言ったんだ。

 

 なんと旦那さん、ガイアさんは獣人さんなんだそうだ。今は他の国へ仕事に行っているらしい。


 さっそくズボンを履いてみる。お尻の部分にちゃんとシッポ用の穴が開いていて凄く穿きやすい。

 ズボンをはいた時点でシーラさんが「アタシの服のほうがサイズが合うかも」って言いだしたから急いでシャツも着たさ。男物があるのにレディの服を借りるのは気がひけるからね。

 

 …なにこの幼稚園児が父親の服着ちゃった感。

 ガイアさんはすっごく大きい人なんだろうな。僕が小さすぎるんじゃなくて…絶対、きっと、たぶん。


 でも服のせいってだけな訳じゃないと思うんだけど…話の端々から10歳そこそこだと思われているのをひしひしと感じるんだ。


『それは僕の素っ裸を見たからでしょうか?』なんて聞く勇気はとてもなかった…後で泣こう。


 下着は新しいものを明日、町で仕入れくるから我慢してくれって言ってくれて…いやもう服だけでもありがたいです。

 …な、はずなのに、下着を買ってきてくれるって言われてたら、急にパンツが欲しくて欲しくて仕方がなくなってきた。パンツめ…布切れ一枚でこんなに僕を惑わせるとは。まったく…さっきまで素っ裸だったくせに、僕の欲望は尽きないんだからまいっちゃうよ。


 シーラさんだけなのか異世界全体かは知らないけど、思ってたより断然清潔で本当にありがたい限り。シャツもズボンも、ざらっとした洗いざらしの綿みたいな感じで清潔感があった。

「ガイアの使い古しのパンツは…うわっ…なんかキモっ…」とか、ぶつぶつ言っていたから衛生観念みたいなものがしってかりしてる感じも窺えたしね。

 

 それにしても…僕、このご恩は絶対に絶対に忘れません。

 シーラさんが拾ってくれなかったらどうなってたか…考えるだけでもシッポが股の間にギューって勝手に入り込もうとするほどだ。

 そんな事を思いながら、ダボダボのシャツとズボンを履いた僕は鏡を手にとった。鏡を見たら何か思い出すかもって思って渡してくれたんだろうな。


 名前以外は覚えていないなんて嘘ついてごめんなさいごめんなさいごめんなさい…人の親切の上に胡坐をかいて嘘をついてます僕…しょんぼりした気持ちになりながら鏡を覗いたら、申し訳なさそうにしょんぼりと垂れ下がったケモ耳をつけた僕、滝ノ宮明の顔が映っていたんだ。


 うゎーーお。なんすかこれーーーーー!

 ケモ耳がぁぁやっぱり頭の上にあっるんだよぉぉぉ…いや、ちょっと触ってわかっちゃいたけどね。実際に見るとキョ・ウ・レ・ツゥ~!!!

 

 昼間見ないとはっきりとは言えないけど…全体的にシッポと同じ色合い。髪の毛が白に…たぶん灰色?銀?のメッシュみたいになっちゃってる…先週渋谷で見たよぉ、こういう色合いのお兄さん…。そう言えば皮膚も物凄く白い。なんか僕…全体的に白い…


 シッポが同じ配色だからか、すでに違和感がなくなってきてる自分が怖い。眉毛も同じ。そういや下モジャの色もうす…え?どうでもいい?…ごめんごめん。

 耳と目が…何だろうねこの色。薄い茶色かなぁ。夜だから暖炉と玄関先のランプと燭台の灯りじゃよくわからない。明日よく見てみなくっちゃ。


 …あれ?僕の顔が僕の顔なのにかっこいい!…気がする。僕は僕なんだけど…目が大きくなって…西洋人っぽいな…あ、鼻の穴がすっごい縦長になってるぞ!鼻が高い!!やけに視界の真ん中で鼻が存在ちらつかせてるなって思ってたんだよ。これはひょっとして…ひょっとしなくても…い、イケメンなのでは!?

 

 シーラさんみたいに彫りが深い顔立ちの人にも違和感を与えないように、その上で僕の特徴は残し…。転移補正の使いどころが思いっきり斜め上方向にずれてる気がするけど、今更変更はなしだぞ!


 これで転移補正を使い切ってたとしてもそれはそれで。イケメンは正義だからね。僕は犬人…なのかな。まさかのイケンメン…なんちゃって。


 おや?銀歯がないぞ。歯もなんだか綺麗になってる。ふんふん、犬人だからって特に犬歯が出てきたりはしないんだな。

 やっぱり…眼が良くなってる………うん………間違いないよ。転移補正はこれか!顔面も嬉しいけど眼も歯も嬉しい!!いや、顔面嬉しい!!!大事な事は2回言おう。


 自分なのに見どころ満載だな~。一番気になるのはやっぱり耳のあったところに耳がない事かも。不思議だなぁおい。こんな事ある?え?これどうなってんのさ?

 でも耳の位置が変わったからって聞こえる感じはあまり変わってない。なんでだろう…。

 

 顔が小さくなった気がするんで思ったより差異がないのか…いや、やっぱあるよな。うーん…不思議だ。

 もっとずっと見ていたいけど、ナルシストだと思われちゃうと恥ずかしいからとりあえずは鏡を置こう。

 じっくり見たけど記憶が戻らないって雰囲気を醸し出せば、今ならまだナルキッソスとは呼ばれんはず。


 …ほら、早く置きなさい自分!シッポ!!鏡に巻き付かないっ!ナニコレ。シッポって勝手に動いちゃうもんなの?

 

 ちょっ…コントロールできないんだけど…コラっ!!

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