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第30話 帝国軍の大反攻 ビルマ戦線編2

お久しぶりで御座います。


作者のクラウスです。



今回も、前回と同様に「帝国軍の大反攻」の続きを執筆いたします。



どうぞ。



飛行第252戦隊を中心とする帝国軍の戦闘機部隊と、タウンジー基地の爆撃の為に出撃した米英合同の攻撃隊が戦闘を行ってから2日後…



帝国軍が占領しているビルマの中心地「マンダレー」に、栗林忠道中将が率いる増援部隊が到着した。



この増援部隊は、帝国軍が画策している「インパール」を含めた帝国軍の反攻作戦の中核をなす部隊であった。



8万を超える増援部隊は、鹵獲した外国製戦車で固めた2個装甲師団や、同じく鹵獲した外国製のトラックなどで機械化された3個歩兵師団を中心とした部隊は、マンダレー郊外の帝国陸軍駐屯地へと向かい、すぐさま野営の準備を始めた。



一方、増援部隊の司令官である栗林中将は、マンダレー市内にある司令部に向かっていた。


着任の挨拶や現在の戦況等、報告したり聞いたりする事が沢山あった。



『御無沙汰しています、牟田口中将、安藤少将』


『おぉ、元気にしてたかね』


『御無沙汰してます、栗林中将』



司令部室内に入った栗林中将は、ある部屋に案内され、支那戦線以来の戦友と再開した。


第18方面軍隷下の第15軍の指揮を執る牟田口廉也中将。


その第15軍に所属する第63師団を指揮する安藤信光少将。



この2人は、支那戦線以来の栗林中将の戦友であった。


しかし、無慈悲にも戦局は逼迫している事もあって、戦友の再開を喜ぶ暇も無く今後の展開についての話し合いが、早速行われた。



『私が率いてきたのは、対ソ戦にも投入された2個装甲師団と比較的「機械化」された3個歩兵師団だ』


『うん…それは助かるな…』


『ここにいる部隊と、「パトカイ山脈」の麓に展開している友軍とを合わせると、我々は13万を超える兵力を擁しています』


『ビルマ全域で見ると、帝国側は凡そ18万の兵力を擁した事になるな…』


『しかし…』


『うむ…正直な話、今回の増援部隊以外はハッキリ言って使い物にならん…』


『『………』』


『長く増援が無かった事もあって、また心身共に大きく消耗するゲリラ戦を中心とした事もあって、前線の兵達は限界に近い』


『…中将は、如何にお考えですか?』


『無理にインパールを陥落させる必要は無い…と考えている。しかし、もしインパール攻略を目指すなら、しっかりとした補給を確立させた上で、航空隊との連携の上で実施するべきだろう………』


『確かに…』


『無論、ラングーンから出発した部隊がチッタゴンを攻めるのと同時に…というのが前提だがな』


『そうですね…』


『…栗林、君の考えはどうなんだ?』


『もし…作戦を実施するなら、中将の案が最良かと。ただ…』


『ただ?ただ…何だ?』


『加えるなら、海軍さんにも応援を頼むべきかと…』


『『!?』』


『海軍さんなら、足の長い戦闘機や爆撃機も持っているでしょう。それに、チッタゴン攻略なら艦砲射撃とやらも期待出来ますし…』


『ふむ…読めてきたぞっ、君の考えが。海軍の奴らを引っ張ってきて、大々的にチッタゴンを攻める。そうすれば、インパールにいる米英軍も無視は出来ず少なくない航空戦力を「そっち」に向ける可能性が高い…』


『もしかしたら、地上部隊も移動させるかも知れませんしねっ』


『うん…そこを狙って、君が連れてきた装甲師団・歩兵師団にインパールを攻めさせる…』


『それが、最も万全な策かと…』


『成る程…可能性はあるな…』


『この案…もう少し、煮詰めてみますか』



そう言った安藤少将は、マンダレーに残っていた主要な将校・参謀達を集め、牟田口・栗林の両中将が言った案の分析を始めた。


主要な将官・参謀が集まり、約3日間に渡って行われた会議の後、現地の最高司令官であった牟田口廉也中将は、1本の伝聞を大本営がある帝国本土へ向かって打電させたのだった。




 −−− ラングーン −−−



帝国本土が梅雨の時期を迎え、「ここ」も同じく強烈な雨が降り注ぐ中、2人の指揮官に率いられた其々の部隊が海軍の艦艇の護衛の下、ラングーンへと到着した。


「赤鬼」の異名を持つ武田少将と、「青鬼」の異名を持つ上杉少将の2人が率いる2個師団だ。



『やれやれ…何だってこっちはこんなにジメジメしてやがんだ…』


『あぁ…まったくだ。まぁ、この雨の御蔭で、敵さんも思う通りに動けないと思うがね』


『…だといいんだがなっ。油断してると、足をすくわれるぞ?』


『確かにな…気を付けておこう…』


『あぁ…そうしとけ。それにしても…これじゃ俺んとこの砲兵隊も、お前んとこの戦車部隊も、大して動けんなっ』


『別に今すぐ動く訳ではあるまい?まぁ、命令とあらば、まず一発は上官の顔をぶん殴ってから出撃するが…』


『はははっ、着任早々問題を起こすなよっ』


『くっくっくっ、あぁ…そうだな』


『さて…そんじゃ、ラングーンの司令官殿に、顔を見せに行きますか…』


『あぁ…そうだな』





ラングーンに到着した増援部隊は、「赤鬼」・「青鬼」の2人が率いる2個師団だけでは無かった。


彼等2人の率いる部隊の到着から遅れる事2日、支那戦線において中国軍(正確には「中国国民党軍」及び「中国共産党軍」)から性が同じという理由から、豊臣政権下において行われた朝鮮出兵の折に武威を示して恐れられた島津義弘に倣い、「鬼石曼子(島津)の再来」と恐れられた島津栄吉中将が率いる第88師団が。


更にその2日後には、中川毅中将率いる第117師団がラングーンに到着した。



到着した増援部隊は、それだけでは無い。



ついこの前までは、満州・東部シベリアに掛けてソ連軍と戦っていた陸軍航空隊の戦闘機部隊・爆撃部隊が、多数到着した。



数にして戦闘機が200機余り。


爆撃機の増援も、ほぼ同数である。



これで、ビルマ全体に展開した兵力は、歩兵戦力だけを見ても20万を超えた。


航空機の数も、戦闘機は500機に迫り、爆撃機の数も400機を上回った。



機甲戦力に関しても、当初から現地に展開していた部隊に配備されていた九七式中戦車改・一式中戦車に加え、新たに満州・東部シベリア戦線から増援として派遣された部隊に配備されていた三式中戦車・三式砲戦車に多数の鹵獲された外国製戦車を加えれば、かなりの数の戦車がビルマ戦線に展開している事になる。




しかし、それは表面上の事であり、実際の戦力事情はもっと厳しいモノであった。



まず、新たに増援として派遣された部隊は兎も角、当初から現地で米英軍と戦ってきた部隊は、とても攻勢に使えるような状況では無かった。


相次ぐ爆撃に加え、圧倒的な物量を用いて攻めてくる米英軍の攻勢に、数年に渡って耐えてきた部隊に多くは、心身ともに大きく損耗し、長期の攻勢にはとても参加させられない状態であった。



また、増援として派遣された航空機部隊も、東南アジア特有の多湿気候に悩まされ、稼働率はそれ程上がらず、額面通りの部隊を運用できなかった。



機甲戦力に至っては、巨木が無限に広がる熱帯雨林が行く手を遮り、鹵獲した外国製の戦車の運用を著しく制限した。


現地の機甲戦力の主力は、鹵獲されたドイツの4号戦車や5号戦車、ソ連製の「T−34」等も配備されていたにも拘らず、相変わらず九七式中戦車改・一式中戦車であった。



防衛する分にはそれでも問題無かったが、いざ侵攻となると話は別だった。


満州や東部シベリアのように地面が硬くない東南アジアでは、帝国軍製の戦車に比べて重量のある外国製の戦車というのは運用に適さなかった。


帝国軍がビルマ戦線において運用できるギリギリのラインが、ドイツ製の4号戦車であった。



その4号戦車においても、雨によって地面が水浸しとなれば、とてもではないが重量のある戦車は運用できなかった。


もしそんな状況で運用しようとしたら、沼のようになった泥の地面に車体の重みで濱ってしまい、身動きが取れなくなってしまう。



そんな状況が予想される中での侵攻戦など、論外であった。




しかし、それでは「ビルマ戦線」における一連の戦闘におけるイニシアティブを、これまでと同様に常に米英側が握る事になる。



たとえ強力な戦力を補充し、レーダー等の設備が充実しても、守勢に回る帝国側はイニシアティブを握る事は出来ない。


たとえ強力な戦闘機部隊が米英の爆撃機を撃墜し、なお且つ侵攻してきた地上部隊を撃破したとしても、それは侵攻してきた部隊を追い返した事に過ぎず、結局は急場凌ぎに過ぎない。



問題の先送りに過ぎないのだ。



そして敵部隊を撃破しても、いずれは戦力を回復した米英の部隊に、好きな時に好きな規模で、再び攻撃を受ける事に繋がる。



例えば、兵士達が床に就いている深夜や、兵士達が食事を行う時間帯など、好きな時に攻撃を行う事が出来るのだ。



防衛側は、常に攻勢側に戦闘のイニシアティブを握られているからだ。



その事を憂慮している本土の軍上層部は、その苦境を打破すべく、大規模な増援を送り、ビルマ戦線での大規模な攻勢を計画したのだ。




そして7月3日…

  


ビルマ戦線に展開している大半の部隊の指揮官が一堂に会した軍議の結果、7月10日を以て「ビルマ大攻勢」…作戦名「神武作戦」…が決行される事と成った。



主目標は、2つ。



1つは、ビルマ西部に位置する「パトカイ山脈」に位置する米英軍の最前線拠点である「インパール」の制圧及び同都市に駐留する米英軍の殲滅。


2つ目は、米英側のビルマ南部への侵攻の拠点と成っている都市…「チッタゴン」の占領であった。



勿論、2つの拠点(都市)には、米英のビルマ方面軍の主力部隊が駐留しており、簡単には行かない事が、容易に推測された。



どちらも侵攻の拠点と成っており、其々の都市には8万を超える兵力が存在していたのだ。



軍議に参加した将校達の心配も、当然であった。



もっとも、彼等の心配は杞憂に終わる。




その軍議に参加していた1人の青年将校が、ある一言を述べた。


『我々も2隻の小型空母を中心とした機動部隊を、作戦の支援の為に派遣しましょう』



この青年将校は、雨宮兄妹と共にこの世界へやって来た未来日本軍に所属する海軍将校の1人であり、不足するであろう航空戦力を補完する為にこのような発言をしたのであった。



この発言を聞いた者の多くが、この青年将校の発言を訝しんだものの、実際にその3日後にはシンガポール港に2隻の小型空母…とは言っても艦体の大きさは戦艦『大和』すら上回っていたが…を中心とした小規模な機動部隊が、姿を現したのだ。




この事態に、多くの将校達は唖然としていたものの、一部の将校達(主に牟田口中将や栗林中将といった面々)は内心で苦笑していた。



彼等は以前に、今回の作戦を実施するにあたって海軍側の協力を得るべく、本土の東条首相に雨宮兄妹への工作を依頼していた。


栗林中将は、『海軍側の協力を得るには未来日本海軍の出動が鍵になる』と考え、東条首相を通じて暗に『帝国海軍を動かして欲しい』と要請したのである。



そして雨宮兄妹は、栗林の思惑通り(?)に自らの指揮下にある未来日本海軍の出撃もチラつかせてまで、帝国海軍の作戦への参加を要請した。



帝国海軍としては、自身の面子の手前、未来日本海軍ばかりが活躍するのは面白くなく、そこを見越しての栗林から要請であった。



その要請を出してから数日が経ったとは言え、見事に栗林の要望を実現させた雨宮兄妹の「手回しの良さ」には、栗林や牟田口を始めとした真相を知っている数少ない将校達は、驚く表情を表面で浮かべると共に、『そこまでするか』内心で苦笑していたのだ。




そして、雨宮兄妹の「手回し」によって、現在シンガポール港に錨を下ろしていた第4航空艦隊第2戦隊に所属する2隻の正規空母『大鳳』・『信濃』とそれを護衛する少数の軽快艦艇の作戦への参加も決定し、これによって栗林・牟田口の両中将が計画した「ビルマ大反攻作戦」は一気に進みだした。



作戦の発動は7月10日に決定され、この作戦に参加する部隊は前線への移動を俄かに開始した。



気の早い部隊などは、予定していた移動地点に到着直後に、すぐさま攻勢を開始しようとする部隊まであったほどだ。


*もっとも、上級指揮官からの厳命もあって、独断専行が行われる事は無かったが。



兎に角、作戦発動の前日には、全ての帝国陸軍部隊が予定の地点まで進出・移動し、海軍側もシンガポール港に錨を下ろしていた第4航空艦隊第2戦隊を中心とした小規模な機動部隊がアンダマン海にまで進出していた。


完全では無いものの、こうして遂に陸海軍の共同による大反攻作戦が、今まさに、開始されようとしていたのだった。




如何でしたでしょうか?



さて次回は、遂に帝国軍のビルマ戦線における大反攻が開始されます。



次回の更新をお楽しみに。




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