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第2話 帝国の戦力

第2話を投稿いたします。お楽しみください。

1941年の末に、南雲忠一中将が率いる6隻の正規空母が、ハワイ真珠湾を奇襲攻撃して始まった太平洋戦争は、開戦から半年までの間の6ヶ月の間に真珠湾・インド洋・南太平洋・ソロモン海と縦横無尽に戦っていた。


彼の指揮下のある赤城級空母4隻と加賀級空母2隻は、帝国が誇る機動部隊として米英を大いに恐怖させてきた。


帝国が誇る機動部隊は、一つだけでは無かった。山口多聞少将が率いる空母6隻・・・翔鶴級空母2隻、蒼龍級空母2隻、客船改装の飛鷹級空母2隻・・・も負けず劣らずの戦果を挙げていた。


しかし、1942年の6月に行われた第2次珊瑚海海戦において、南雲機動部隊は空母4隻を失って後退し、翌7月に行われた第2次ソロモン海海戦において第2機動部隊の空母2隻を失い、空母戦力は半減した。


連合艦隊は残った空母6隻・・・赤城級空母2隻(第1機動部隊)、翔鶴級空母2隻(第2機動部隊)、飛鷹級改装空母2隻(同第2機動部隊)・・・で新たに第3機動部隊を再編した。


しかし、米軍の反攻は待ったと許してはくれなかった。


7月に行われた第2次ソロモン海海戦から早2ヶ月後には、米軍の反攻の第一歩としてニューギニア方面への攻撃を開始した。


日本軍の必死の抵抗も空しく、43年の6月までに大半の拠点が陥落した。


唯一ニューギニアの西部と、今村均中将が指揮する第16軍が駐留するラバウルの拠点のみしかソロモン方面の拠点は無かった。



44年の三月までに、トラック環礁を始めとする太平洋にあった日本軍の軍事拠点は軒並み陥落し、4月には遂にマリアナへの侵攻を米軍は開始した。


正規空母22隻、軽空母17隻、護衛空母33隻を中心とする総計400隻近い戦闘艦艇は、マリアナ諸島近海に出現し、同地の守備をしていた日本軍将兵の多くを驚かせた。


しかし、もっとすごかったのは、その後方に展開した輸送船団・上陸船団の艦隊であった。


何といっても、武器弾薬を満載した輸送艦だけで200隻を超える数を揃えたのである。


その合計は凡そ2千隻で、海を埋め尽くすと言わんばかりの数であった。


大本営は、同地の守備隊に絶対死守を厳命したが、量・質とも劣る日本軍の苦戦は必須だ。


陸軍は3万の兵力を集め、海軍は陸戦隊を中心に5千の兵力を集め、その他諸々を集めても合計で4万を超える事は無かった。


戦車にしても、主力として配備されてしるのは満州事変当時の主力であった九七式中戦車『チハ』や、その改良型である一式中戦車『チヘ』であり、米軍の主力戦車であるM4中戦車『シャーマン』には装甲・砲撃力共に劣っていた。


もしM4とまともに戦いたいなら、本土で開発中だった四式中戦車『チト』や五式中戦車『チリ』を完成させるしか無かった。


数の差が圧倒的に違うのである。


米軍は、陸軍の歩兵戦力だけで6万を数え、海兵隊も含めれば凡そ10万近い人数を投入可能であった。


戦車にしても、米軍が千両近くの数を投入可能だったのに比べて、日本軍は主力の九七式・一式、更に旧型の九五式軽戦車等も合わせても3百両前後が精々であった。


数が全てと言う訳ではないが、数が戦闘に大きな影響を与える事は間違いない。


航空機にしても、もはや旧式機の烙印を押された零式艦上戦闘機21型が大半を占めており、時折少数の32型や54型を確認できたが、その数は21型に比べて遥かに少なかった。


陸軍機にしても、旧型の一式戦闘機『隼』や、二式戦闘機『鍾馗』が主力であり、ごく少数ではあるが三式戦闘機『飛燕』が配備されてはいるが・・・


軍艦にたいする攻撃戦力として、九六式陸攻や一式陸攻も配備されてはいたが、脆弱な機体であったために多大な損害が出る事は火を見るより明らかであった。



4月2日


米軍は、マリアナ諸島への攻撃を開始した。


日本軍は、水際での防衛戦を放棄して持久戦を指示。


おかげで米軍は、橋頭保を確保できたものの、それ以後の侵攻が大幅に遅れてしまった。


何せゲリラ戦術を駆使した日本軍の攻撃は、これまでの戦いで米軍が経験した『バンザイ突撃』とは全く違っており、米軍兵士の油断もあって損害はウナギ登りに増加していった。


しかし、地上の戦いは比較的有利に進んでいる一方で、空と海の戦いは日本軍に非常に不利な展開を歩んでいった。


まず一番最初に行われた航空戦において、米攻撃隊の攻撃を受けた帝国陸海軍の航空戦力は大打撃…いや、寧ろ壊滅的損害を受けて、マリアナ諸島一帯の帝国側の航空戦力は、1日持たずに沈黙した。


海上戦力においても、マリアナ諸島の各島々から出撃した基地航空隊の部隊を中心とする部隊と連携して、第3艦隊から攻撃隊が発進したものの、結果として基地航空隊の部隊の梅雨払い的役割を演じてしまい、第3艦隊の母艦機による華々しい戦果は、得られなかった。


それどころか、攻撃隊は米艦隊の分厚い防空網に絡め捕られ、次々と撃墜されていった。


更に、米艦隊に発見された第3艦隊は、米機動部隊の執拗な航空攻撃を受けた。


主力の空母機動部隊は、歴戦の空母である翔鶴級空母の一番艦『翔鶴』や、赤城級空母の二番艦『天城』、更には客船改装空母の『飛鷹』の三隻が撃沈され、新鋭空母の『大鳳』・『瑞鶴』・『赤城』の三艦が飛行甲板に多数の爆弾を被弾し大破の損害を受けた。 


前衛として展開していた戦艦・巡洋艦主体の艦隊も、扶桑級戦艦『扶桑』、金剛級戦艦『比叡』・『霧島』を始めとする多数の艦艇を撃沈破され、第三艦隊司令部は戦闘の継続を断念し、退却を開始した。


米機動部隊の追撃は執拗で、退却中に更に高雄級重巡洋艦の二・三番艦である『愛宕』・『摩耶』に妙高級重巡洋艦の四番艦である『羽黒』を沈められ、長門級戦艦の二番艦『陸奥』と金剛級戦艦のネームシップである『金剛』が、あわや撃沈されるというような損害を受けてしまった。


運よく内地に帰還できた艦艇も多かったが、損傷艦の多さには目を覆わんばかりであった。


そして海軍にとっての何よりの痛手は、再建なった機動部隊の航空戦力の7割を今回の海戦で失ってしまった事であった。



結局、マリアナ守備隊の必死の抵抗も空しく9月にはマリアナ諸島全島が陥落した。


この時点で大日本帝国の戦力は、


海軍:戦艦9隻、航空母艦(軽空母含む)9隻、巡洋艦(重軽合わせて)12隻、駆逐艦各種合計83隻、潜水艦各種合計54隻、その他の艦艇56隻


航空戦力の減退が著しく、基地航空隊の内戦力を維持できている部隊は一つも無かった。


一方の陸軍ではあるが、


南方に各部隊合計23万が展開し、支那(中国)方面に合計80万、満州方面に凡そ47万の戦力を展開していたために本土の戦力は著しく低下していた。


戦車の主力はようやく量産が開始された三式中戦車『チヌ』であるが、その生産量も生産設備の不備もあり月産25両が一杯一杯であった。



大陸でも戦闘機・爆撃機不足が叫ばれている中で、帝国は有効な戦略を取れずにいた。


しかし、南方にはまだ多くの物資を満載した輸送艦艇が取り残されていた。


特に、ワシントン会議以降に建造が中止されて廃艦となった『紀伊』級戦艦4隻や、仮称『13〜16号艦』と呼ばれた4隻を、設計を変更して超大型の輸送艦として秘密裏に建造された超大型輸送艦8隻の存在は、今の日本軍にとって非常に魅力的な存在であった。


無論それ以外にも多数の大型の高性能な輸送艦は、沢山あった。


それを帝国海軍は、有効に使う術を持たなかった。



そもそも現在の帝国海軍は、補給という概念を重視していなかった。


ワシントン条約調印後も、海軍首脳の頭の中は『いかにして米国艦隊相手に日本海海戦の再現をするか?』であった。


ワシントン海軍軍縮条約調印時も、主力艦保有率を6割8分で妥協する代わりに航空母艦の保有を対米英比に対して2倍を得るなど航空主兵を海軍の主軸にしつつも、飽くまで艦隊決戦重視で軍備を増強していた。


その為に建造された艦艇は、居住空間を劣悪にする代わりに戦闘能力を高め、新たに開発された航空機は防弾性能を削ぎ落とした攻撃一辺倒な性能の機体であった。


そしてそのシワ寄せは、開戦後に大きくしっぺ返しを喰う事となる。


南方へ向かっていた陸軍兵士を乗せていた輸送船6隻が、海軍の旧型駆逐艦4隻に護衛されていたにも関わらず、輸送船5隻を潜水艦に撃沈されるなど、大きな損害を受けた。


そしてこの護衛艦艇の不足は、今日の今日までまったく解決していなかった。


44年の末期となっては、連合艦隊で運用する駆逐艦でさえ不足する事態となった今では、新たな護衛専門の艦隊の創設など夢のまた夢であり、少数の駆逐艦を護衛に廻す事でさえ難しくなってきた。


帝国は、雨宮兄妹がこの世界に現れるまでの間、この苦しみから逃れる事は無かった。



それ程帝国は追い詰められていたのだ。


頑張って投稿いたしました。しかし、やはり削除前のと比べると、内容も構成も大幅に変わってますね(汗)。まぁ仕方ありませんが。次回は、この世界の日本が歩んできた歴史を話したいと思います。この手の話が苦手な方は、ちょっと受付難いかもしれませんが、ご了承ください。それではまた。

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