第24話 米機動部隊殲滅 〜日米決戦 in 沖縄・台湾〜 3
どうも、クラウスです。
勢いがある内に執筆・投稿をしよう!
…と言う事で、頑張って投稿しました。
それでは、どうぞ。
史実では、日米両国とも戦争状態に突入せずに、双方の問題点を解決する事も出来た筈だ。
だが、無情にも両国は戦争状態に突入し、どちらか片方が降伏するまで戦い続けなければならなくなった。
快進撃を続けていた開戦当初の帝国に、対米講和を言いだす事は面子の問題からも出来ず、徒に戦線を拡大せざるを得ず、米国はやられたまま講和を結ぶ事を良しとしない国民性があったからだ。
それは、日米の戦力比が逆転して以降も大して変わらなかった。
そして両国が互いに妥協して講和条約を結ばぬ限り、両国の多くの国民が死に至る事は確実であった。
−−− 沖縄・台湾近海 −−−
第1次攻撃隊336機を出撃させたにも関わらず、1機も目的地である沖縄本島に辿りつけないばかりか1機の帰投機も無く、文字通り全滅した米攻撃隊に替わり、新たに第2次攻撃隊として総勢600機もの大編隊が、一路沖縄本島に向かって突き進んでいた。
一見してこの600機の大編隊が沖縄に押し寄せれば、まず間違いなく沖縄の主要な基地施設・重要都市を灰燼に帰す事が出来たであろう。
彼らの目標であった沖縄に、「今までの帝国軍」しか存在していなかったら…
だが、今彼等が向かっている沖縄には、攻撃隊の搭乗員の予想を遥かに上回る戦闘力を持つ、彼等にとって悪魔とさえ言える未来の装備に身を包む兵士達が、今や遅しと待ち構えていた。
トラック環礁にいた8隻のエセックス級空母の内の1隻『ハンコック』から出撃した攻撃隊の中に、1人の女性がいた。
ローラ・デュエ少尉…今年で21歳になる年若い戦闘機パイロットである。
ローラ少尉の両親は、シアトルにある軍工場で働いていた。
しかし、ある日自宅に押し入って来た日本人…実際は在米中国人であった…に家族を殺されてしまい、復讐の為に軍に男装してまで入隊した。
軍の厳しい訓練をこなして行く内に、上官や仲間に女性であることがバレるも、友人や上官達の計らいによって、このまま軍に籍を置く事を許されていたのだ。
そして今日、今回の出撃が、初めての出撃であった…
『父さん…母さん…必ず…必ずジャップの連中を、女子供を含めて皆殺しにしてやるわ…』
彼女の瞳は、狂気に支配されていた…
来る日も来る日も、ただこの時を心待ちにしていた…
憎き日本人を殺す事だけを…
だが、運命は彼女に対して残酷だった。
不意に彼女が前方に目を凝らすと、太陽の光に反射する物体が確認できた…
『おかしい…』
彼女が呟くのも無理は無い。
彼女が現在搭乗している機体は、僅か2ヵ月前に実戦配備が開始されたグラマン社の最新鋭機であるF8F「ベアキャット」であり、現在の高度は実質1万mを超えているのだ。
最初こそ見間違いかと思ったものの、そのキラキラが消える事は無く、寧ろ急激な勢いで接近していた。
『バカなっ!』
気付いた時には遅かった。
彼女が気が付いた「キラキラ」が自機を通り過ぎた時には、少なくとも50機以上…いや、もしかすると100機以上が落とされた後であった。
『ジャップにこれ程の高高度を飛ばせる機体など…』
悪態を吐いたのも束の間、彼女の言葉を、考えを吹き飛ばしたのは、彼女の眼に一瞬だけ映った敵機の翼に描かれた「日の丸」であった。
『こんな…こんな…こんなぁぁーー!』
半ば錯乱状態に陥りながらも反撃行動に移ったローラ少尉は、しかし、性能差に劣るF8Fに勝機は無かった。
あっと言う間に両翼を敵機の機関砲弾に撃ち抜かれ、海上に向かって落ちて行った…
−−− 第8航空師団 −−−
第8航空師団…それは、未来日本空軍が有する空軍師団の中でも珍しく、海軍の母艦航空隊と同じく対艦攻撃・対地攻撃に重点を置く、戦闘部隊であった。
その技量は、いずれの搭乗員をして総じて高く、対地攻撃に限定さえすれば、海軍の空母部隊に所属する母艦航空隊以上とも言える程であった。
無論、対艦攻撃に対する技量も高く、もし米艦隊が接近してくれば、対艦攻撃の為の切り札的存在であった。
『こちらレッド・インパルス、こちらレッド・インパルス。ブラック・オーダーどうぞ』
『こちらブラック・オーダー。今しがた台南の司令部より通信が入った。「攻撃ヲ開始セヨ」だ。繰り返す、「攻撃ヲ開始セヨ」…以上だ』
『了解…第1波攻撃隊に告ぐ。こちらレッド・リーダー。全機、対艦攻撃用兵装の安全装置を解除せよ。これより第1波は、対艦攻撃を開始する…以上』
『『『了解っ!!』』』
−−− エドガー艦隊 −−−
沖縄・台湾の両島に攻撃を仕掛けるべく艦隊を率いてきたエドガー中将は、顔を真っ青にしながら、茫然と艦橋に立ち竦んでいた。
『ばっ、馬鹿な…』
今まで、どれほど同じ言葉を口にしただろう…
何度同じ事を繰り返した事だろう…
だが、それでも彼は繰り返した。
そしてもう一度…
『バカな…』
と呟いた。
エドガー中将が茫然自失状態に陥ったのは、台湾から出撃した第8航空師団の攻撃に原因があった。
第2次攻撃隊を送り出してから1時間後、ようやく落ち着いてきたエドガー中将の下に、再び彼から冷静さを取り除く報告がもたらされた。
曰く、『謎の超高速飛翔体が凡そ100機、我が艦隊に接近中』
この報告をレーダー員からもたらされた時には、思わず『その報告をした人間を、海に沈めろ』とさえ彼は言った。
だが、現実は直ぐに訪れた。
第8航空師団の108機もの機体から1機辺り4発、合計432発もの対艦ミサイル…「レッド・スパロー」空対艦ミサイル…によるミサイル攻撃を受けたのだ。
現代の技術を持ってしても、飛んできた飛翔体…所謂ミサイルを迎撃して撃ち落とす事は、難しい。
今日の日米が行っているBMD(ミサイル防衛)において、100%の完全なる撃墜率を達成する事は、非常に難しいのだ。
それが、まともなミサイル防衛技術を有していない第2次大戦当時において、100%の迎撃成功など、完全に不可能に近い。
闇雲に機銃弾を発射しても、ミサイルに命中する筈も無く、また回避運動を各艦艇がとったとしても、ミサイル自身のその速度から逃げ切れるはずが無かった。
…どうしようも無かったのだ。
元々兵器の性能差があり過ぎたのだ。
輪陣形を堅持しようにも、瞬く間に命中した対艦ミサイルによる被害が大きく、とてもまともな艦隊運動など出来る筈も無く、中には艦橋を潰され、艦と艦が衝突するものまで表れ始めた。
ローラ少尉の乗艦であったエセックス級空母『ハンコック』も、飛行甲板に満遍なく命中し、飛行甲板を焼き尽くしただけでなく、火の手の一部は艦内にも侵入し、米軍自慢のダメコンチームの活動を大きく制限した。
艦隊の被害は、当然艦隊の中心を構成する空母・戦艦に集中したが、かと言って空母や戦艦を守る軽快艦艇に、まったく被害が無かったとは言えなかった。
寧ろ、多少なりとも持ち堪えられるだけの頑丈さを持っている大型艦艇に対して、駆逐艦や護衛艦の被害は、目を覆わんばかりであった。
また、艦種にもよるが、軽巡や重巡も当たり所が悪ければ、それこそ一撃で撃沈してしまう艦も存在した。
このたった1回の攻撃によって、エドガー中将率いる艦隊は壊滅した。
主要な艦艇だけでも、
撃沈艦艇:エセックス級正規空母8隻全損、インディペンデンス級軽空母11隻全損(9隻撃沈、2隻自沈処分)、サウスダコタ級戦艦3隻撃沈、ボルチモア級、ニュー・オリンズ級、デ・モイン級各重巡合計11隻撃沈
…などなど。
まさしく「殲滅」という言葉が相応しい戦果であった。
更に、この艦隊に所属している空母19隻に搭載されていた艦載機は、1300機以上あったものの、第1次・第2次の2波に渡って出撃させた攻撃隊を未来日本空軍が壊滅させた。
母艦の格納庫に艦載されたまま、海中深く沈んだ機体あり。
沖縄・台湾近海の空で散った機体あり。
エドガー艦隊は、この世から消え去ったのだ。
沖縄の普天間基地から帝都東京に撃たれた無電には、今回の海空戦の大勝利が多く反映されたものだった。
マリアナ諸島近海まで進出した時に、エドガー艦隊からの定時連絡が途絶えた事を不審に思ったハルゼーは、潜水艦隊に偵察をさせた所、艦隊が展開していたと思しき海域に、少なくない両の重油が浮いているのを確認し、エドガー艦隊が壊滅したのを確認した。
同時にハルゼーは真珠湾のニミッツにこの事を報告し、指示を仰いだ。
当然の如く真珠湾の司令部は混乱したものの、紆余曲折の末に撤退を命じ、ハルゼー艦隊はトラック環礁まで後退した。
今回の勝利によって大本営司令部は、米軍が当面は(少なくとも2〜3ヶ月の間は)大規模な攻勢に出る事は無いと判断し、対ソ戦に軍需物資を集中できる事になった。
今回の勝利が、満州・シベリアでの対ソ戦に大きな影響を与えた事は、否定できない事実であり、帝国は、連合国相手に大きな勝利を得たのだった…。
如何でしたでしょうか?
次回は…戦闘後の一幕…
今回撃墜された、ローラ少尉のその後を執筆します。
次回、お楽しみに。