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第17話 米軍の歩んだ軌跡1

どうも、クラウスです。


今回は、42年から44年末までの日米の戦闘を、米軍の視線で執筆いたします。


飽くまで流れを掴むため…という目的ですが、必要な事ですので、最初は迷ったのですが投稿しました。


今回は、42年に行われた2つの大海戦を中心に書いております。


それでは、どうぞ。

1945年4月7日


この日、ソ連軍が満州・南樺太へと侵攻を開始した。


日ソ中立条約を一方的に破棄しての侵攻であった。



 −−− ワシントン ホワイトハウス −−−


アメリカの白い家…ホワイトハウスでは、現在大統領であるフランクリン・D・ルーズベルトと政府高官を中心に、ソ連の満州侵攻について話していた。


『マーシャル君、遂にスターリンは極東に手を伸ばしてきたぞ』


『はい…正直信じられませんでしたが、ここに至って事実と認めざるを得ません』


『いや、私もだよ。東部戦線でナチの連中に梃摺っている現状で、まさか極東に…日本に対して向かうとはな』


『大統領、一つ提案があります』


『おおっ、キング大将、何かな?』


大統領と、陸軍のトップであるマーシャル大将の会話に割って入ったのは、合衆国海軍司令長官兼海軍作戦部長というやたら長い肩書を持つ、アーネスト・J・キング大将であった。


『私は、これをチャンスだと考えます。現在マリアナには、カーチス・ルメイ少将率いる新型爆撃機B−29が配備されております。この機体を使って日本本土を爆撃すると共に、現在我々が保有しているトラック環礁・ハワイの2ヶ所に展開している機動部隊を出撃させます』


『…目標は?』


『B−29は、陸軍の管轄であるため、私からとやかく言う事は出来ません。しかし、我が海軍が誇る機動部隊は、いつでも出撃可能です。目標は台湾・沖縄の2ヶ所です。ここを落とせば、奴らは南方との繋がりを絶てます!』


『それは、余りにも危険ではないかね?現に我が軍は、未だニューギニア全域を制圧しておらんのだぞ。そんな状況で沖縄は兎も角、要塞と化している台湾を攻撃するなど…』


『だからこそです!奴等の目は現在、満州に注がれている。戦力が足りなければ、本土や台湾・南方からも戦力を引っこ抜くだろう。だから今なのですよっ、大統領!』


『……どれほどの戦力を投入する?』


『はっ、対日戦に投入出来る正規空母全部と軽空母の8割を中心に編成いたします』


『………マーシャル君、君はどう思うかね?』


『異論はありません。我々の爆撃隊も、後1週間程でマリアナへの展開を終えます。第1陣の攻撃は、早くて2週間も経たない内に攻撃可能です』


『ふむ…少し考えさせてくれ』


『『はっ!』』



 −−− ハワイ真珠湾 −−−


『ハルゼー、スプルーアンス、これから言う事を二人とも心して聞いてほしい』


『何があった?ジャップを殺す許可が下りたのか?』


『何があったのですか、ニミッツ長官』


『うん、ハルゼーの言うとおり、攻撃の許可が下りた』


『なにっ、本当か!?』


『あぁ、本当だ。今本土から新たにエセックス級5隻とインディペンデンス級軽空母12隻を中心とする増援艦隊が向かっている』


『本当ですか?』


『あぁ、勿論だともスプルーアンス』


『ふっふっふっ、豪勢じゃないかないか、大統領閣下は』


『増援はそれだけじゃないぞ、ハルゼー、スプルーアンス。とんでもないプレゼントも一緒だ』


『一体なんです?空母17隻だけでも十分なプレゼントだと思うのですが…』


『聞いて驚くなよ?大西洋艦隊に配備されていた2隻のエセックス級に3隻のインディペンデンス級空母が、太平洋へと回航されるんだ』


『ほっ、本当ですか、長官?』


『落ち着きたまえ、スプルーアンス』


『いや、しかしよく大西洋艦隊司令部が了承しましたね』


『まぁ、裏でキング大将や大統領が手を廻してくれたんだろう』


『そんな事はどうでもいい、これでトラック諸島とここにいる機動部隊の空母と合わせれば、エセックス級が30隻にインディペンデンス級が37隻……ふっふっふっ、これで心おきなく薄汚いジャップを地獄へ送れるぜっ!!』


太平洋艦隊司令部の一室は、ハルゼーの不気味な笑い声に包まれていた。



米国太平洋艦隊は、開戦以後約1年間の間、帝国海軍に苦戦を強いられていた。


真珠湾攻撃における帝国海軍機動部隊の攻撃によって、多数の艦艇が沈められ、緒戦の苦戦を招いたのだ。


転機が訪れたのは、開戦から約半年後に起こった2つの海戦だった。


第2次珊瑚海海戦と、第2次ソロモン海海戦である。


この2つの海戦によって、無敵機動部隊と誇っていた帝国海軍の機動部隊を撃退し、6隻にも上る主力空母を撃沈したのだ。


この当時、米国が太平洋に展開出来た空母は、ヨークタウン級空母の『ヨークタウン』・『エンタープライズ』、レキシントン級空母『レキシントン』・『サラトガ』の4隻と、排水量に置いて軽空母クラスである『ワスプ』の5隻だけであった。


ヨークタウン級空母の『ホーネット』は、海戦劈頭の真珠湾攻撃時に運悪く真珠湾港に停泊していた為、日本軍機の攻撃目標とされ、魚雷8本と爆弾3発を命中されて沈んだ。


第2次珊瑚海戦は、6月の始めに起こった帝国軍のポートモレスビー攻略作戦に起因して、戦闘が起こった。


ポートモレスビーへの制海権を得る為に、連合艦隊は第1機動部隊を派遣した。


対する米軍は、ヌーメア港から出撃したミッチャー少将指揮下の第33任務部隊が迎え撃った。


ミッチャー指揮下の任務部隊には、『エンタープライズ』と『レキシントン』、『ワスプ』の3空母が配備されていた。


帝国海軍は6隻の空母に544機の母艦機を保有していたのに対し、米軍は3空母で257機と半数しか母艦機を保有していなかった。


しかし、ミッチャー少将は勇躍進撃をして、敵機動部隊を発見するや全力攻撃を仕掛けるべく攻撃隊を発進させて、見事帝国海軍が誇った第1機動部隊の空母4隻を撃沈した。


しかし、流石は帝国海軍が世界に誇る機動部隊であった。


ミッチャーが4隻の空母を撃沈して歓喜の渦に包まれている中に、冷や水をぶっ掛ける様に表れた帝国海軍の攻撃隊が、怒涛の攻撃を仕掛け、『エンタープライズ』を除く2隻の空母を撃沈させられた。


『エンタープライズ』も、泡や沈没と見間違える程の損害を受けており、実質第2次珊瑚海海戦は痛み分けに終わった。



第2次珊瑚海海戦は、帝国の進撃を食い止めた…挫いた戦いであったと言われる。


そして、42年以後の戦闘の主導権を確固たるものとして決定づけた戦いが、翌月に行われた第2次ソロモン海海戦である。


第2次珊瑚海海戦において、4隻もの空母を失った帝国海軍であったが、無謀にもポートモレスビー攻略は続行されていた。


しかし、連日ラバウルから陸攻隊が出撃しているものの、損害が大きく、ポートモレスビーの航空戦力の無力化が急務であった。


その為に、連合艦隊司令部はなけなしの機動部隊となった第2機動部隊を、南太平洋に向けて出撃させたのである。


7月の末に行われた第2次ソロモン海海戦は、ポートモレスビー空襲を狙ってトラックを出撃した第2機動部隊を、米軍側がソロモン海で捕捉した為に起こった海戦である。



第2機動部隊は、山口多門少将指揮下の6隻の空母部隊で編成されていた。


搭載機数は6隻合計で、430機。


またまた迎え撃つ形となった米軍は、『ヨークタウン』と突貫工事で修復を終えた『エンタープライズ』に、『サラトガ』の3隻であった。


3空母の搭載機数は、合計で271機。


先月の海戦に比べて差は少ないものの、それでも戦力差は大きかった。


しかし、指揮官であるスプルーアンス少将(当時)は、ポートモレスビーの陸軍航空隊と連携を取る事によって戦力差を補い、天候を生かした攻撃によって2隻の空母を撃沈した。


第2機動部隊も、ただやられるばかりではなく、『ヨークタウン』を撃沈させたものの、母艦機の損害は米軍の67機に対して帝国海軍側は223機を失い、これ以上の戦闘続行を不可能と判断して撤退した。


この2つの大海戦によって、帝国の進撃は停滞し、反対に米軍の本格的大反攻が始まる切っ掛けとなってしまった。



42年以降、両軍共に戦力の回復・拡充に努めてきた。


特に、正規空母6隻を失った帝国海軍は、新型空母の『大鳳』と大和級戦艦の3番艦を空母へと改装した『信濃』の戦力化を急ぐと共に、既存の艦船からの空母への改装を進めた。


一方の米軍はと言えば、2度の大海戦によって太平洋に展開していた5隻の空母の内、残存艦は2隻にまで減ってしまった事もあり、即反撃とまではいかなかった。


しかし、部隊は思わぬ方向へと動く。


なんと、第2次ソロモン海海戦から2ヶ月後の9月に、金剛級戦艦4隻と大和級戦艦2隻の6隻の戦艦を中心とする第2艦隊が、軽空母『龍驤』・『龍鳳』・『瑞鳳』の3空母の傘の下、アリューシャン列島にあるウラナスカ島の港湾都市…ダッチハーバーを砲撃した。


この時、『エンタープライズ』と『サラトガ』の2隻は、2度の海戦における損傷を修復するために、ハワイにいた。


幸いにも、2ヶ月間という比較的長い時間があった為に修復作業を終えており、この2隻を中心とした任務部隊を編成し、出撃させた。



『エンタープライズ』・『サラトガ』の2隻を中心とした21隻の艦隊は、アリューシャン列島のアッツ島近海で連合艦隊第2艦隊を捕捉し、攻撃隊を発進させた。


対する第2艦隊からは、3隻の軽空母から69機の零戦が出撃し、迎え撃った。


第2艦隊に配備された3隻の空母には、艦攻・艦爆は一切搭載されておらず、全搭載機が艦戦である零戦であった。


迎撃に出た零戦の数は、3隻の空母に搭載されている全機体数の約7割であり、ほぼ全力出撃であった。


さらに、この3隻の空母に搭載された零戦とそのパイロット達は、米国との海戦以前から支那戦線へと出撃していた事もあり、嘗ての第1機動部隊・第2機動部隊の零戦搭乗員と同等の技量を有する一騎当千の搭乗員であった。


第2艦隊を討つべく出撃した米機動部隊の第1次攻撃隊は、戦爆雷混合の約60機であった。


しかし、ここで機動部隊の司令官であるミッチャー少将は、一つのミスをしてしまった。


それは、出撃した第1次攻撃隊と出撃準備をしている第2次攻撃隊の両方とも、護衛の戦闘機の数をいつもより少なくしてしまった事である。


もっとも、この時ミッチャー少将は、ミスを犯したなどの考えは微塵も思っていなかった。


3ヶ月前の第2次珊瑚海海戦でミッチャーは、敵機動部隊から出撃した攻撃隊の護衛を務める戦闘機…零戦…の数の少なさを見て、帝国海軍の攻撃力重視の考え方を見抜いていたからだ。


今回発見した敵艦隊にも、空母が確認されている。


奴らは必ずこちらに大規模な攻撃隊を送って来るに違いない。


ミッチャーは、その為に態々攻撃隊を護衛する自軍の戦闘機の機数を削ってまで、艦隊の制空力を高めていた。



しかし、今回の「アッツ島沖海戦」は、3ヶ月前にミッチャーが経験した海戦とは勝手が違った。


ミッチャーの艦隊が発見した第2艦隊から攻撃隊が来る事は無く、逆に2次に渡って攻撃隊を送り込んだものの、敵艦隊の上空を舞う零戦の数の多さに圧倒され、出撃した計100機の攻撃隊はF4F「ワイルドキャット」4機とSBD「ドーントレス」5機を残して全滅した。


特に、艦攻であるTBD「デヴァステイター」は2波に渡って計38機が出撃したものの、1機も搭載していた魚雷を投下する事無く撃墜されてしまった。


結局、米機動部隊は2隻の空母に擁していた171機の機体の半数を失い、あまつさえ近海に潜んでいた3隻の帝国海軍の潜水艦による雷撃を受け、戦艦『ワシントン』を撃沈された。


開戦以来のベテランパイロットを多数失い、米軍の本格的反攻作戦は来年以降へと持ち越しとなってしまった。


43年に入るまで、米軍は苦悩の時期を過ごす事になった訳である。



如何でしたでしょうか?


次回は、43年から44年の話を中心に書いて投稿する予定です。


メインはニューギニア戦線と、マリアナでの戦闘になる予定です。


これは、今後の作品の展開に必要な重要な要素となるように描いておりますので、悪しからず…


それでは、次回の投稿をお楽しみに。


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