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第14話 灼熱の日ソ大戦6

第14話を更新いたしました。


どうも、クラウスです。


今回の話は、ちょこっと視点をずらしております。


支那も日本にとっては大切ですしね(汗)。


それでは、どうぞ。

 −−− 大日本帝国首都「東京」 首相官邸 −−−



『東条さん、おめでとう』


『いやいや、米内さんもお人が悪い。海軍あっての陸軍ですよ』


『我々は、ただ援護をしているだけですよ…』


『この勝利は、我々に大きな希望を抱かせるものではないかね?』


『確かに…ウラジオストク・ハバロフスク・チタという極東の要地を占領出来たのは、我が国にとっても大きい』


『これで、チタ以東に位置するソ連軍の継戦能力は、大きく落ちますね』


『こんなに上手くいったのも、惟善君がいたからだよ』


『いえいえ、そんな』


『謙遜しなくてもいいじゃないか。君は、それ程大きな仕事をしたのだからな』


『『『はははっ』』』



『…さて、戦勝祝いは、一旦お開きにしようか?』


『今後は、一体どこを狙うおつもりですか?』


『それは…な(チラッ)』


『私が代わりに…』



雨宮兄妹の兄である惟善が、すうっと立ち上がり、部屋の中央にある大きなテーブルの上に一部の地域を拡大した世界地図を広げた…


『やはりカムチャツカを狙うか…』


『本当なら、東シベリア全土を制圧するのが望ましいのですが、生憎とそこまでの兵力は未来にもありませんのでして…』


『ほぉ〜。君達の生まれた世界でも、無理なのかね?』


『及川さん…人間の数は、有限ですよ』


『はははっ、確かにそうだな』


『…それで、カムチャツカを狙う意図は?』


『北方戦線における中継拠点…つまり後方支援の一大拠点を得ると言う事が、カムチャツカ攻略の主要目的です』


『成る程……』


『及川さん。彼の様子を見て下さいよ。まだ裏がありそうじゃないですか?』


『うん?……確かにな。口元が笑っておるよ、惟善君』


『いやぁ〜バレテしまいましたか(苦笑)。実はですね…カムチャツカ半島には、莫大な天然資源が眠っているのですよ』


『その天然資源の種類と量は?』


『天然資源の種類は、石油・鉄鉱石・希土類金属(レアメタル)に、金・銅などが…量も十分に確保できる程ですよ』


『それは、開発が出来ればであろう?』


『大部分はそうですが、鉄鉱石・金の2種に限れば、ほとんど露天掘りです』


『どうやら鉄に関する不安は、当分心配いらないようですな』


『いやいや東条さん、まだ占領してませんよ』


『『『はははっ』』』



チタを占領した大日本帝国軍は、少ない工兵を総動員して都市機能の復旧を目指し、ウランウデから来るであろうソ連軍の攻撃に備えていた。


チタに集結してした帝国軍は、補給面を考慮して20万前後にまで減ったものの、北樺太・ウラジオストク・ハバロフスクなどで鹵獲したソ連製の兵器をチタに集結させて、武器弾薬・戦車・火砲の数を揃えた。


これまでの日ソの戦闘で鹵獲したソ連製の兵器は、T−34戦車1200両以上、火砲各種2700門、小銃51万挺、トラック600両に戦闘機80機以上、爆撃機50機以上あった。


さらに、ソ連軍が独ソ戦で鹵獲したドイツ製兵器も、この極東での戦闘でソ連軍によって運用されていた物が、帝国軍に再び鹵獲された物もあった。


その中でも特に喜ばれたのは、やはり戦車だった。


北樺太で鹵獲された「パンター」・「ティーガー」両戦車は、これまで自分達が運用していた戦車が紙か何かで作られているのではないかと錯覚させる程のものであった。


もっとも、この極東にもっと大きく強力な戦車を日本軍が保有している事実を知っている者にとっては、このドイツの「パンター」・「ティーガー」も玩具同然であったが…



チタとウランウデの間で睨みあう日ソ両軍。


戦線は、この地域に限っては膠着していた。


対象的なのが、チタ以東のシベリア戦線であった。



開戦当初200万を超えていたソ連軍は、開戦から僅か10日間の間に多数の戦死者・降伏者をだしてしまい、140万人弱にまで激減してしまった。


その内の実に8割…110万を超えるソ連軍が、チタ以東の各地に展開していたのであるが、それらの部隊も補給が滞りがちであり、まともな攻勢に出れる余裕などまったく無かった。


それどころか物資不足によって部隊の維持すら難しくなっている部隊もあった。


戦車があっても燃料が足りずに動かせない。


火砲があっても砲弾が無くて戦えない。


兵員は揃っていても、食糧不足で満足に動けない。


そんな部隊が各地にいた。


それ等の部隊に対して帝国軍は、航空支援の下で各個撃破を狙って戦闘をしていた。


そしてその戦い方は、大きな戦果を上げる。



日ソの間で戦闘が始まってから3週間もすると、チタ以東に展開していたソ連軍部隊は各個撃破され、その兵力を60万前後まで減らされていた。


残存する部隊の一部は、ヤクーツクに集結していたものの、その部隊も同市を維持する事で手一杯であり、とても攻勢に出られる程では無かった。


極東ソ連軍に最早攻勢に出る戦力は無く、彼らに出来る事は唯一つ、帝国軍に対する時間稼ぎしか無かった。



そんなソ連軍に止めを刺すべく、ヤクーツクに対する総攻撃を計画していた。


ヤクーツク攻略の為に揃えられた戦力は、未来日本陸軍3個師団を含む24個師団48万8千人の地上部隊に、陸海軍の戦闘機各種300機に爆撃機各種500機が揃えられた。


この攻略部隊の主力は、文句なく未来日本陸軍の3個師団であった。


彼等が擁する未来戦車の威力は、戦場伝説と成るほどであり、ソ連軍の戦車部隊がたった1両の千式重戦車を相手に20両の戦車部隊が全滅したという噂も流れた程であった。



ヤクーツク攻略が計画される一方で、満州戦線に投入した110万を超える帝国側の兵力の内、遊軍と成りつつあった20万弱の兵力を北海道と樺太へと向かわせた。


勿論、今後行われるカムチャツカ攻略作戦に参加する事になるのである。



話が逸れる事になるが、ここで支那戦線についても語っておこう。


現在支那戦線では、70万を超える兵力が中国東部の太平洋岸一帯に展開していた。


占領地は広大であったが、その実情は各地の都市(点)とその都市を結ぶ鉄道沿線沿い(線)を支配しているに過ぎなかった。


重慶に逃げ込んだ蒋介石を討つ力は、今の帝国軍には無く、むしろ国民党軍・共産党軍の攻撃を凌ぐのに必死だった。


支那戦線の最高司令官である帝国陸軍の喜多誠一大将にとって予想外だったのは、支那戦線に配備される予定だった李大将率いる22万の部隊が、急遽予定を変更して満州に配備された事であった。


お陰で45年の2月から4月の始めに掛けて行われた国民党軍・共産党軍による大規模攻勢に対する応戦で、大いに苦戦していた。


一部の地域では、大規模攻勢によって沿岸部付近まで後退した部隊もあった程であった。


この大規模攻勢は、帝国陸軍の必死の応戦と3月始めに北京・南京の両市に進出した増援の未来日本陸軍部隊の援軍によって辛くも撃退した。



この時両市に現れた未来日本陸軍の主力は、千式・零式戦車を配備された部隊では無く、それ以前に配備された百式重戦車「紅洋」・陸式機動戦車「武雷」を配備された部隊であった。


百式重戦車「紅洋」


車体長8.88m×全幅3.58m 重量65.6トン


武装:48口径155mm滑空砲1門、12.7mm連装重機関銃1門(砲塔上部)


解説…未来日本陸軍が千式重戦車を配備する以前に主力戦車として配備していた戦車。その力は、千式が配備された以後も多数が配備され続けられた事は、この戦車の優秀性を示しており、他国からも好評であった為に300台以上が同盟国に輸出された事からも明らかであった。



陸式機動戦車「武雷」


車体長7.92m×全幅3.14m 重量51.9トン


武装:50口径127mm滑空砲1門、7.7mm車載機関銃(主砲同軸)、12.7mm単装機関銃1門(砲塔上部)


解説…未来日本陸軍において、零式機動戦車が配備される以前に主力機動戦車として配備されていた機動戦車である。他国の同規模の戦車と比較して、その高速性と小回りの良さは好評で、前述の百式と同じく多数が輸出された。その基本性能の高さは、他国の新型戦車開発にも利用された程であった。



この2種の戦車を配備された計10個戦車師団が到着した事もあって、3月の末には国民党・共産党の大規模攻勢は駆逐され、再び中国東部は帝国軍の占領下に戻った。


面白い事に、今回の戦いで犠牲になった人の割合は、帝国軍の兵士よりも中国東部に住んでいた中国人の方が多かった。


中国人が自国民である中国人を、自分達の目の敵にしている帝国軍兵士達以上に殺していたのだ。


まさに皮肉としか言いようがない。


国民党軍・共産党軍の双方に犠牲になった中国人の数は、数十万とも数百万とも言われ、中国東部の沿岸部一帯が親日の傾向に傾く一因を作る。


もっとも、それも表面的な事ではあったが…



4月には、国民党軍・共産党軍双方ともに完全に後退してしまった。


両軍合わせて200万を超える軍勢を揃えて攻勢を仕掛けた両軍であったが、帝国軍の遅滞防御戦術と航空機の攻撃によって進撃を大幅に遅らせられ、遂に後退させられてしまったのである。


この時中国大陸には、800機を超える米軍機いたものの、国民党軍・共産党軍双方との連携を欠き、さらに帝国軍側が新型の戦闘機部隊を支那戦線に展開させた事もあって、最新鋭機であるP−51「マスタング」やP−47「サンダーボルト」を揃えていても、苦戦は免れなかった。


未だ日本軍に、開戦以来のベテラン搭乗員が存在している事を、まざまざと見せつけたのであった。



国民党・共産党の両軍の大規模攻勢を返り討ちにした支那戦線の帝国軍であったが、しかし実情は「薄氷の勝利」と言っていいものであり、とても反転攻勢に出れる力は無かった。


一部の部隊が、武漢(ウーハン)洛陽(ルオヤン)まで再進出したものの、これ以上の進軍は不可能であった。


結局、これ以後しばらくの間は帝国側が再占領した武漢(ウーハン)と国民党側の長沙(チャンシャー)、帝国側の洛陽(ルオヤン)と共産党側の西安(シーアン)の間で、睨みあい・小競り合いが続く事になるのである。



…さて、ここから再び満州・シベリアでの戦いに目を戻そう。


満州国の奉天にいる石原莞爾「関東軍最高司令官」は、同地にいる関東軍参謀達や未来日本陸軍の李峻来大将とその参謀達と、これ以後の戦略について激論を重ねていた。


『何を言っているのだっ!』


『そうだ、そうだっ!』


『…皆さん、冷静に考えていただきたい』


『だから、それが生ぬるいと言っているのだっ!』


『ふんっ。どうやら未来の日本人というのは、随分お優しくなったようですな…だが、ここは戦場だ。戦場にそのような甘い考えはいらないのですよ。お分かりですか、李大将殿?』


『ふむ…確かにその通りですよ、相場大佐。戦場に甘えは不要だ』


『分かっていながら…何故ここで進軍を停止しなければならないのですか!!』


『…落ち着きたまえ、相場大佐』


『閣下…』


『事はそう簡単には、運ばないものだよ…』


『……』


『さて…一之瀬君、前線の様子はどうだね?』


『はっ。現在のチタ方面に対するソ連軍の圧力は、徐々に強まりつつあります』


『数にして…凡そ18万がウランウデに、その後方のイルクーツクには40万弱…か』


『正面兵力だけで60万近い兵力がいます。これを打ち破るには、ヤクーツク攻略に向かう兵力並みの増援がいります』


『それ程の兵力を何処から集めるのだね。相場大佐…』


『いやっ、そのっ…ですね、あの…』


『はぁ…まったく。李大将、これ以後の有効な戦略は?』


『チタ方面は、防御に徹します。1ヶ月〜2ヶ月は、現状の兵力でも十分敵の攻勢に耐えられます』


『…その間に、ヤクーツクを落とす!』


『そう言う事です、閣下』


『…その後はどうするのです?イルクーツクを落とすのですか?』


『…徒に戦線を拡大させるべきではありませんよ、相場大佐。ここを第2の支那にするわけにはいきません』


『なんだと!?』


『まぁまぁ、落ち着きたまえ。李大将の言っている事は正しいよ、相場大佐』


『しかしっ!』


『相場大佐…帝国軍の補給体制を考えれば、致し方ないのですよ』


『………』


『そう言う事だ。相場大佐、納得してくれ』


『…分かりました』



…強固なまでに進軍を続けるよう進言していた相場大佐を筆頭とする関東軍の参謀達も、補給という現実問題をチラつかされれば、押しが弱くなる。


石原閣下と李大将の勝利であった。



これ以後満州・シベリア戦線は、ヤクーツク方面とカムチャツカ方面を除いて攻勢から守勢に転換することとなる。


逆に、支那・ビルマ戦線に徐々に力を移す事となっていくのであった。



如何でしたでしょうか?


次回は、いよいよ日ソの戦いも佳境に入りまして、「ヤクーツク」攻略作戦を中心に執筆いたします。


予定では、ここで一旦日ソ戦は終了いたします。


飽くまで予定ですが…


それでは、また次回。



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