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第12話 灼熱の日ソ大戦4

どうも、クラウスです。第12話を更新です。


今回は、帝国側がソ連領内へ侵攻いたします。


特に激しい戦闘描写はありませんので、そこの所は悪しからず…


では、お楽しみください。

 −−− ソビエト連邦 暫定首都エカテリンブルク −−−



ここに、ソビエト連邦のトップに位置する人物が、エカテリンブルクのホテルにいた。


ご存じ、ヨシフ・スターリンである。


今彼は、モスクワにあるクレムリンに替わるソビエト連邦の仮行政府として定められたホテルにいたのであった。



『…この報告は、いったいどういう事なのだ?私は、こんな報告は聞きたくないのだがなぁ』


『もっ、申し訳ありません…』


『ふんっ。言っておくが、次は無いぞ?分かったな?』


『はっ、はいっ!!』



ふうっとため息をついたスターリンは、近くにあったコップに水を注いで、一気に飲み干した。


『ヤポンスキーどもが…』


コンコンっとスターリンがいる部屋をノックする音が聞こえる。


スターリンが入れと命じたら、若い兵士が一つの報告書を持って現れた。


『スターリン同志、これを』


若い兵士が、さっと差し出した報告書に目を通していたスターリンの顔は、俄かに嶮しくなった。


そこに書かれていたものは…


「モスクワ奪回作戦の失敗」・「スターリングラード奪回作戦の失敗」


…というものであった。



1945年の1月4日に、ソ連軍はドイツと戦う西部戦線(世界地図でソ連を中心に見た場合)において、地上軍300万・航空機2千機・戦車1万2千両・火砲4万2千門を投入した、冬季大攻勢をドイツ軍に対して仕掛けたのであった。


しかし、ドイツ軍を始めとする枢軸国の同盟軍の死力を尽くした奮戦にあって、戦車・火砲は5割、航空機に至っては8割を超える損害を受けて、奪回作戦は失敗に終わってしまった。


さらに、ようやく訓練が終わって前線に配備された部隊や、開戦当初から戦ってきた歴戦の部隊を含む多数の部隊が壊滅的損害を受けた事で、これ以後の西部戦線(ドイツから見れば東部戦線)はドイツ軍が握っていたイニシアチブをさらに強固なモノとしてしまう事となった。


しかし、これ以後もドイツ軍が大規模に東進する事は無く、あったとしても2〜3個師団の部隊がモスクワから東へ200km程進んだだけであった。


ドイツ軍に、最早開戦以来の勢いは残っていなかったのだ。



 −−− 4月12日 チタ 極東ソ連軍司令部 ーーー



『スターリン同志の様子は?』


『聞く必要があるか?』


『いや…知りたくもない』


『………』


司令部にいた将校の顔色は、良くなかった。


前日の午後8時に、緊急電がチタの司令部に届いた。


内容は…


「北樺太駐留ソ連軍の降伏」


…つまり北樺太の陥落であった。



ソ連軍は、満州国・南樺太双方に侵攻したものの、開戦4日目にして満州の大地にソ連兵は1人も立っておらず、あろうことか北樺太が陥落した。


ソ連軍の対満州国・対日戦争プランは、予定通りに侵攻するどころではなくなっていた。


…いや、帝国がソ連軍を撃退し、さらに北樺太を占領した事は予定通りだった。


ただし、雨宮兄妹達の方であったが…




ソ連軍はこの日、全軍をソ連領内に後退させた。


「再侵攻の為の戦略的撤退」とチタにいる軍の司令官達は言っていたが、実態は敗走同然の後退劇であった。



しかし、開戦5日目を迎えた極東ソ連軍の司令部には、北樺太陥落・満州国からの敗退という事態に更なる追い討ちを、仕掛けるような報告がウラジオストクから舞い込んできた。


「ウラジオ沖に、敵艦隊が出現!」



ウラジオストク…ウラジオストク市は、沿海州地方にあるピョートル大帝湾の南にある。


ロシア帝国時代から極東に有する良好な不凍港として、珍重されてきた港だ。


日露戦争当時は、この軍港を拠点にウラジオストク巡洋艦隊が配備され、朝鮮・満州で戦う日本兵への補給物資を輸送する日本の輸送船の大きな脅威となった。



革命によって、ロシア帝国からソビエト連邦に国の体制が変わってからも重要な拠点である事に、変わりは無かったのであるが、如何せんソビエト連邦での海軍の軍備力が劣っていた事もあり、極東の良港であるウラジオストクに配備された艦艇は旧型で、数も満足に揃っていなかった。


一言でいえば、「宝の持ち腐れ」状態であった。



釜山の軍港を10日に出港した第1・第2艦隊は、対馬から北へ20kmの位置の海上で、南方で慣熟訓練を行っていた第4航空艦隊と合流し、ウラジオストクへ向かっていたのである。


さらに、佐世保港に集結していた仮称第8艦隊…改装後の『大和』を中心とした艦隊…も、同日中に出港し、ウラジオストクへ向かっていた。



ウラジオストク守備隊が、海上から接近してくる大規模な黒点を見つけたのは、その黒点がウラジオストクまで残り10数分という距離まで接近してきた時であった。


第4航空艦隊、仮称第8艦隊の空母から発進した航空機の数は、8隻の空母から2波合計418機にも及ぶ大編隊であった。


これに加えて、2隻の伊勢級航空戦艦改から出撃した各6小隊ずつ計48機も加えると466機にも及んだ。


攻撃隊の主力は、新型機と従来機の改良型に身を固められていた。


艦攻には「烈火」一一型、艦爆には従来アツタ三二型発動機を改良したアツタ六六型を搭載して、稼働率を回復させた「彗星」。


そして艦戦には、最新鋭機である「雷鳴」一一型が配備されていた。



帝国海軍機動部隊の攻撃隊がウラジオストク上空に着いた時には、ソ連空軍機は1機も上空に舞っておらず、お陰で容易に攻撃隊が爆弾の投下を行えた。


急降下爆撃を仕掛けるべく、一本棒にほぼ垂直に近い角度で目標に向かって降下する「彗星」の急降下爆撃隊がいる一方で、胴体下に抱え込んでいる如何にも重そうな500kg、あるいは800kg爆弾で水平爆撃を仕掛けている「烈火」水平爆撃隊もいた。


戦闘機部隊は、機体に装弾された機銃弾による地上にある対空兵装、その他兵器・兵士に対する機銃掃射を仕掛けた。


航空隊の空襲を受けたソ連軍は、成すすべが無かった。


すぐにでも侵攻してくるであろう帝国軍を防ぐためのソ連軍陣地は、急降下・水平の両爆撃によって壊滅的損害を受けた。


中でも戦車・火砲の損害は大きく、ウラジオストクに配備されていた内の6割以上を爆撃のみで失ってしまった。


さらに戦闘機部隊による機銃掃射による被害も少なくなかった。


新旧問わず、ソ連軍主力戦車であるT−34戦車は機銃弾によって穴だらけされ、不用意に射線上に現れた兵士がいようものなら、機銃弾の直撃によって身元が分からないほどバラバラにされてしまった。



約40分にも及んだ第1波の空襲は、ソ連軍に大損害を与えていた。


しかし、災厄は未だ終わる気配を示さなかった。


何故なら、第1波の部隊が撤退すると同時に、入れ替わるように第2波の部隊がウラジオストクの上空に現れたからである。



…第2波空襲が終わった時、町のあちこちで煙が上がっていた。


美しい港町の気配は、たった2回の空襲で吹っ飛んでしまった。


ソ連軍兵士達は、空襲後の街並みを呆然と見ていた。


しかし、運命は彼らに事態を把握する時間すら与えようとしなかった。


何故なら現地を守備するソ連軍にとって、2波に渡って行われた空襲以上に恐ろしい「モノ」が、洋上から現れようとしていた。



洋上にはためく「旭日旗」


黒光りする砲塔が、力強く快晴の青空に向けられていた。



ウラジオストクに止めを刺すべく、第1・第2艦隊が仮称第8艦隊の『大和』他少数の艦隊と合同で、対地砲撃をするべく突撃してきたのである。



第1艦隊…長門級戦艦『長門』・『陸奥』、金剛級戦艦『金剛』・『榛名』、陽炎級駆逐艦8隻


第2艦隊…重巡洋艦『妙高』・『高雄』・『鳥海』、軽巡洋艦『大淀』・『阿賀野』、夕雲級駆逐艦8隻


仮称第8艦隊…大和級戦艦『大和』・軽巡洋艦『北上』・『大井』、島風級駆逐艦『島風』、峰風級駆逐艦4隻


戦艦5隻に重巡3隻、軽巡4隻(内2隻は重雷装艦)に各種駆逐艦21隻。


合計で33隻にも及ぶ艦艇が、対地砲撃とは言え集結した姿は、久しぶりであった。



ウラジオストク沖20kmまで接近した艦隊は、


『30分以内に降伏をしないなら、ウラジオストク市内に砲撃を行う』


…といった恫喝をした。



しかし、ソ連軍が降伏する気配は30分を過ぎても見えず、やむなく市街地…無論病院や学校などの施設は対象から除外された…に対して砲撃が開始された。


艦砲射撃の威力は凄まじく、着弾した場所では派手に爆発が起こり、付近の建物を根こそぎ破壊した。


駆逐艦の主砲は、口径の違いもあれど基本的に12.7mmである。


この主砲は、戦艦や巡洋艦が搭載する主砲に比べたら、大人と子供程の差がある。


戦艦『大和』に至っては、史上最大の巨砲である46cm砲を搭載しているのだ。


それに比べたら、12.7cm砲など玩具同然に見えても仕方ないだろう。



しかし、陸にいる者にとっては、12.7cm砲といえども決して馬鹿に出来ないものであった。


12.7cm砲は、陸軍の火砲として見てみると、重砲の位置に分類され、かなりの威力を誇る。


つまり、艦砲射撃に限れば駆逐艦の貧弱な主砲といえども、決して油断できない物なのである。



2時間にも及んだ艦砲射撃は、ウラジオストクの市街地をただの瓦礫の山に変えてしまった。


運が悪い事に、『陸奥』が放った第17斉射が地下にあったソ連軍のウラジオストク司令部を直撃し、司令官を始めとした多くの将校を葬送してしまった。


待ってましたとばかりに進軍を開始したのは、片身清治中将指揮する未来日本陸軍3個師団と豊田龍之介少将指揮する帝国陸軍2個師団の計5個師団11万4千人であった。


万が一という事態に備えて、上空を旋回してくれている一式戦「隼」の援護の下、5個師団はソ満国境線を突破してウラジオストクの北に位置する「ウスリースク」を攻撃し、僅か3時間の戦闘で陥落させた。


同地は、ソ連軍2個師団3万2千人が守備についていたものの、この内の片方の師団は満州に侵攻し、敗退して撤退してきた師団であった為に、士気も低く、戦車・火砲も損耗していた為に、戦力として計算出来ない部隊であった。


半身不随状態のソ連軍に、有効な反撃など出来る筈も無く、あっと言う間に陥落してしまったのである。



午後には後続の帝国陸軍部隊2個師団が到着し、合計7個師団となった同地の部隊は、帝国陸軍から2個師団、未来日本陸軍から2個師団を抽出し、ウラジオストクへ向けて進軍を開始した。



主要司令官を失ったウラジオ駐留のソ連軍は統制を失い、進軍してくる日本軍を迎え撃つ準備を全く整える事が出来なかった。


…もっとも、2度に渡る空襲と2時間にも及んだ艦砲射撃によって、市街地・防衛線はボロボロになるまで破壊されており、出来ることなど高が知れていたが。



そうこうしている内に、日本軍はウラジオストクに到着してしまった。


一向に応戦する気配の無いソ連軍の動向を見て、日本軍側は軍使を送り、降伏を促した。


結局、一部のソ連軍兵士が抵抗する模様を示したものの、未来日本陸軍の千式重戦車・零式機動戦車の巨体を見て、戦意を失ってしまい、ウラジオ駐留のソ連軍は全面降伏をした。



この時降伏を決断したソ連軍指揮官は、セルゲイ・ウラジミール・バレンティン少佐であった。


これは、彼以上の階級を持つ司令官・参謀が、艦砲射撃によって全員戦死してしまったからであるが、降伏文書に署名したセルゲイ少佐にとっては、戦死した上官達が羨ましく思えた程であったと言われる。


スターリンという男は、戦争で負けた者を絶対に許さないからである。


まして、降伏した将兵などもっての外であった。


降伏した将兵の末路は、シベリアに送られるか、前線に送られて弾避けにされるか…或いはそのまま処刑されるかであった。


幸いにも、セルゲイ少佐の親族は全員ウラジオストクに住んでいて、しかも先程の空襲・艦砲射撃による攻撃を生き残っており、スターリンに懲罰と称して殺される…という心配は無かった。


また、セルゲイ少佐が降伏時に懸念していた「勝者の特権」…帝国陸軍将兵によるソ連国民に対する略奪・陵辱は、軍内部のモラル回復を命じた昭和天皇の一言によって禁止されており、史実のソ連軍の満州侵攻時やドイツのベルリン進駐時に発生したソ連軍兵士による虐殺・略奪・婦女子に対する陵辱行為のようなモノは、起こらなかった。



兎にも角にも、ソ連が極東に有する一大拠点であるウラジオストクは、陥落した。


ソ連軍は、この一連の戦闘で1万8千人が戦死し、8万人近い捕虜をだしてしまった。


ソ連の…スターリンの面目は、丸つぶれだった。



エカテリンブルクにいるスターリンの下に、「ウラジオストク陥落」の報告が舞い込んだ。


スターリンの怒りは、想像を絶する程であったと言われる。


しかし、悪い報告は続くものである。


怒りが収まらないスターリンの下に駆け込んで来た彼の秘書が示したモノには、「火に油を注ぐ」物ばかりであった。



『いったい奴等は何をやっているのだっ!!』


怒鳴った彼の右手には、2枚の報告書が握られていた。


「ハバロフスク陥落」


「ブラゴヴェシチェンスク陥落」



スターリンの極東支配の野望は、最早夢物語になってしまっていた。

如何でしたでしょうか?


…最近、大学のテストが近いもので、忙しいです。


経済学…いざやってみると面白いのですが…なにぶん覚える知識も多いもので、結構大変です。


自分としては、「源氏物語」を読んでる方が楽しいですね…



…今の発言は、経済学の勉強をしている者にとってどうなのでしょうかね(苦笑)


さて、次回も日ソの戦いが続きます。


予定では、後2〜3話で日ソ戦に一区切りをつけます。


それでは、また次回。



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