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策略 ~恋の駆け引き~

作者: AGEHA

「さようなら」


そう言って 彼女は去っていった。


「はぁ これで何回目だろう…」



突然告白されて 付き合い出して

ちゃんと相手を好きになる努力をして 「あぁ 僕 この子の事 好き?かも」と思った頃に  僕は必ず振られる…

だから最初に言ってるのに…

「僕と付き合っても 辛い思いすると思うよ!?  それでもいいの?」って

それでもいいって言うから付き合ったのに…


僕を振ってきた彼女達が言う 別れる時のお決まりの言葉



※どうして千暉から連絡くれないの?

※どうして千暉から誘ってくれないの?

※どうして何もしてくれないの?

※本当に私の事 好き?

※本当に 私に会いたいと思ってる?

※千暉の愛を 全く感じない

※千暉は 私じゃない誰かを見てる気がする

※別れよう さようなら



もう 聞きあきた…









「千尋! こっち!」


僕は振られると毎回 昔から来ているこの喫茶店に 幼なじみの千尋を呼び出して 話を聞いて貰っている。

 

『千暉 何?』


「まぁ とにかく座って」


『私 あんま時間無いんだけど!』


「何で? ってか早く座って」


『何!?』


「振られた」


『やっぱり…』


「うん…」


『何回目よ!?』

   

「7回…目?…」


『はぁ~ ···んで? また同じ振られ方?』


「う···ん」


『あのさぁ 千暉 学習能力無さ過ぎだよ!!』

  

「なんだよ 学習能力無さ過ぎって…  言い過ぎじゃね!?」


『ううん 全く言い過ぎじゃないよ!』


「何だよ だってさ! いきなり告白されて付き合い出しても 直ぐに相手を好きになれないじゃん!? 相手の事 よく知らないんだし! 好きになるまでの期間ってもんがあるじゃん!? その間 下手に手出しできないし!  僕は ちゃんと相手を好きにならなきゃ それより先に進めないタイプだから…」


『何語ってんのよ! じゃあ何で よく知らない相手と 告白されたからって付き合うのよ!?』


「それは 付き合ってってお願いされるからに決まってんじゃん!」


『··· あのね! お願いされたからって 直ぐに付き合わなくてもいいんじゃないの? 相手の事 よく知らないんだから まずは 友達から始めるのが普通なんじゃないの!?  それで 相手の事好きになったら 千暉から付き合おうって言ってあげればいいんじゃないの!?』


「だから僕だって努力してるんじゃん 好きになるように…」


『は? 好きになる努力って…  それなら尚更 友達から始めようって言わなきゃいけないんじゃないの?』


「う·····ん」


『全く…   あっ! やばっ!  もう行かなきゃ!!』


「えっ!!  何で!?  どこ行くんだよ!?」


『え? デートだよ!  じゃあね!!』


「えっ! デ…  おい ちょっ…」



千尋は足早に店を出て行った…


デート!?  千尋が!?  ウソだろ!!

僕は 自分が振られた事よりショックを受けていた。



何だ? この感覚…

何か 胸がザワザワする…



僕と千尋は 家が隣同士の幼なじみ

同じ産婦人科で 生まれた日も同じ

そのせいもあってか お互いの母親同士が仲良すぎて 名前まで似てるから 昔はよく「双子?」と聞かれた。

物心付いた頃から 僕の側には千尋がいて 僕は何でも千尋に話してきた。  本当に何でもだ! 

初めて女子に告られた時だって 初めて手を繋いだ時だって…

なのに…


彼氏?  どんな奴なんだろ…

何で言ってくれないんだろ… 




千尋に彼氏がいると知った日から 足早に店を出て行った千尋の後ろ姿が頭から離れず 僕はずっと不機嫌で イライラしていた。



僕は 千尋の彼氏がどんな奴なのか どうしても知りたくて いつもの喫茶店に千尋を呼び出した。



『千暉 今日は何?』


「今日は デートじゃないの?」


『うん 今日は会えないの  で? 何の用?』


「いつから いるの? 彼氏」


『えっ? 何で?』


「答えろよ! 僕は何でも話してきたのに…」


『それは千暉が勝手に私に話してきただけじゃん!』


「いいから 教えろよ!  いつからなんだよ!?」


『2年前からだけど…』


「2···年 そんな前から… どんな奴?」


『どんなって…  大学のサークルの先輩だよ』



大学の… やっぱ同じ大学に行くべきだった…  



「何で言ってくれなかったんだよ!」


『何で言わなきゃなんないのよ!』


「水くさいじゃんか!!」


『だって こうして会う時はいっつも千暉振られた時じゃん! そんな時に彼氏できました 幸せです なんて言えっこ無いでしょ!?』


「···   それでも 言って欲しかったよ」


『あ~ ごめんごめん じゃあ これからは話すよ!  それでいい?』


「何だよ その面倒くさそうな言い方は…」


『ごめんって…  それはそうと 少しは失恋の傷 癒えた?』


「失恋?」


あっ そうだった! 僕は失恋してたんだった…


『えっ? 何? 自分の失恋忘れる程 私が話さなかった事の方がショックだったの?』


「だって…」



あー くそっ  何だよ このイライラ!  もっと彼氏の事聞きたいのに 色々聞くこと考えてきたのに 言葉が出てこない…  くそっ…



結局 あれから何も聞けないまま千尋と別れた僕は イライラも 胸のザワザワも消えず 前より増して不機嫌になっていた。

そんな僕を見て 親友の博貴が話を聞いてくれた。



『なるほど!  千暉が最近ずっとイライラしてて 不機嫌な理由がやっと分かったわ!』


「何だよ!?」


『千暉 それは 嫉妬だよ!』


「嫉妬!?」


「そう! 嫉妬』


嫉妬? 何で僕が?

確かに 初めての感情だけど…


これが   嫉妬…



博貴に このイライラと不機嫌は 嫉妬だと言われてから ずっと考えていた。

何で 嫉妬しているのか…

何に 嫉妬しているのか…








数年前


千暉から 彼女ができたと聞かされたのが 中2の春

ショックだった…  どれだけ泣いたことか…

それと同時に 千暉は私の事を 幼なじみとしてしか見ていないんだと 思い知らされた。


私は幼稚園の頃から 千暉を意識して ドキドキしたり ワクワクしたり 目で追ったり ぼーっと眺めたり…

それが 恋だと気付いたのは 小学校3年生の時だった。 

それからずっと 好きという気持ちを伝えるべきか悩んで でも 気持ちを伝えた事で 今の関係が壊れるかもしれないと思うと怖くて 気持ちを隠して幼なじみを続けてきた。


中学に入学して 初めてクラスが離れて 不安で 嫌な予感がしていた。

それでも私は 何の行動もできず 正直 辛かった。


そして とうとう 中2になってしばらくして 千暉から彼女ができたと聞かされて…


でも その子とは何もなく 一年も続かなかった…

その子が別れ際千暉に

『千暉の気持ちを感じない

 本当に私の事 好き?

 付き合ってる気がしない』

と言ったらしい。

千暉がその時言ってた

「仕方ないじゃん まだ好きになってなかったんだからさ…」


「じゃあ何で 付き合ったの?」

と 私は心の中で問いかけた。


千暉はこんな風に 好きでもない相手と付き合って 毎回同じようなセリフを言われて振られ続け その度に私は千暉に呼び出され 慰め続けて もうすぐ10年になろうとしている。





「誰から?」


『千暉』


「千暉くん何だって?」


『また いつもの所に来てって』


「あ~ また振られたんだ」


『たぶん…』


「千尋 もう 前進みなよ」


『う……ん』


「まだ 諦められない?」


『何か もう よくわかんない…』


「じゃあさ! 駆け引きしてみたら?」


『駆け引き?』


「そう! 駆け引き!」


『どうやって?』


「呼び出されたのはいつ?」


『明日の10時』


「じゃあ 明日千尋は 11時からデートって設定で!」


『えっ! 誰とデートするのよ!?』


「本当にしなくていいの! 駆け引きなんだから デートが控えてるって 千暉くんの前で演じればいいの!!」


『演じるって…  私にできるかな…』


「大丈夫だって! きっと上手くやれるって!  頑張って千尋!!」


『う…ん 頑張ってみるよ』


「うん!  もしこれで 千暉くんの反応が変わらなかったら 諦めるんだよ!?」


『うん  そうだね そうするわ』




私は 親友の美希に背中を押され 千暉に対して 最初で最後の駆け引きを実行した。





『あ~ 緊張したー』


「どうだった? 千暉くんの反応」


『どうだろ… 足早に店出てきたし 緊張で千暉の事よく見れてないし  わかんない…』


「そっか…  まぁ しばらく様子見だね!」


『うん』



千暉が7回目の失恋をした次の日 美希と考えた駆け引きを実行してから3日後 私は千暉に呼び出された。

そして 第2の駆け引きを実行した。

今回は前回と違って 少し気持ちに余裕があったから 千暉の反応を見ることができた!


千暉は 明らかに動揺してる!


私は千暉と別れて直ぐ 美希の所に行き 千暉の反応を報告した。


「千尋 それって脈あるかも!!」


『ほんとに?』


「うん 100%とは言えないけど 高い確率で 脈有りだわ!!」


美希の言葉を聞いて 私は願った

『どうか 幼なじみから一歩進めますように…』 と







何で僕は 嫉妬してるのか…

何に 嫉妬してるのか…

あの時 同じ大学に行くべきだったと 後悔したのは何故なのか…





実は もうずっと昔に気付いてた!


僕は 千尋を幼なじみとして 見ていないって事!

でも 千尋は…


彼女でもできれば この気持ちが変わるかな… と思って 告白してきてくれる女子と付き合ってきた でも 全く駄目で… 

大学も 別々の大学に行けば変わるかな… と思って わざと 違う大学に決めた…  僕なりの 駆け引きだ!

だけど 千尋への思いは全く消えず 千尋の反応も薄く…

だから僕は 何か理由を探しては 千尋を呼び出して会う事ばかり考えるようになってた。


終いには 千尋に彼氏ができれば 諦められるのに… と女々しい自分を正当化しだした。


千尋に彼氏ができたら もう 取り返しがつかなくなる事ぐらい 分かってるくせに…





「なぁ 千暉 お前さ どうすんの? 千尋ちゃんの事 諦めんの? まぁ 彼氏いるんだから諦めるしかないけど… いいのか? このままフェードアウトで」


『良く無いさ! でも どうしたらいいか わかんなくて…』


「そんなの! 千尋ちゃんに秘めてきたお前の気持ちを伝えて 彼氏との事 応援するって言えばいいんだよ! それで 千尋ちゃんの気持ちがどうなるかは分かんないけど 千暉の気持ちは整理付くと思うし 前に進めると思うぞ!?  千暉が前に進まなきゃ 千尋ちゃんとの幼なじみの関係も崩れてしまうぞ!」


『うん… そ…だよな… 』




僕は 博貴の言う通り 前に進む為 千尋を呼び出した。





『千暉 どうしたの?』


「おぉ! ん…  ちょっと…  大事な話があって…」


『ん? 何?』


「·······」


『何!?  ひょっとして もう次の彼女できたとか!?』


「違うよ!」


『じゃ何? 言わないんだったら帰るよ!!』


「待てよ!! ···· 千尋 彼氏と上手くいってる?」


『えっ? ··· いっ··いってるけど何でよ』


「そっか… 別れる予定無いの?」


『は!? 何よ 別れる予定って!  無いに決まってるじゃん!! 千暉と一緒にしないでよ!!』


「そっか…」


『何よ! 何でそんな事言うのよ!?』


「ん··· 千尋 僕…    本当は千尋の事がずっと好きだったんだよ!」


『えっ? ·····う···そ···』


「本当だよ! だけど 千尋は僕と違う気持ちだと分かってたから ずっと隠してきたんだ…」


『えっ 待ってよ! じゃあ 今まで彼女いたのはどういう事よ!』


「彼女を作れば 千尋への気持ちに整理付けられるかな… と思って…  告白してきてくれた子の事を好きになれば 諦められるかな… と思って…」


『そ…んな…』


「ごめん… いきなりこんな事言われても 困るよな! 彼氏いるし!」


『··ない』


「えっ? 何て?」


『いない 彼氏なんて…』


「えっ? どゆこと?」


『だから! 彼氏なんて最初っからいないの!  私も千暉と同じで 千暉の反応を見る為に 美希と考えて 駆け引きを…』


「えっ! じゃっ… 」




僕達は もうずっと前から幼なじみではなく 男と女として意識し合っていたんだと この日知った。



随分こじれた2人だけど やっと 言える…



「千尋 好きだよ 僕と 付き合ってください」





千暉も私と同じ気持ちだったと知って 涙が流れた。

もっと早く 自分の気持ちに素直になっていたら こんなに時間がかからなかったのかもしれない…  

でも 今の私達だから 素直になれたのかもしれない…


長い片思いだったけど やっと言える



『私も 千暉が好き  よろしくお願いします』




         ー完ー

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