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閑話
人を殺すのには気力が必要だ。人間はヒトのカタチをした者には特別なナニカを感じる。不快感や安心感など、感じるものは人それぞれだろう。だが、誰もがソレを壊すのにはストレスを感じてしまう。
それが普通だ。人間はそんな風にできている。
だから、ソレを問答無用で何も感じずに殺せてしまう人間は、ソレに対する感情がおそらく壊れてしまっているのだろう。それはつまり、「麻痺する」ということだ。ヒトの死への麻痺。自分がソレを壊したということへの麻痺。
ただ、壊れてしまった人間が改めて自らの行いに気づいてしまったら、「麻痺」が治ってしまったらどうなるのだろうか。
きっとその人間は再起不能になってしまうまで壊れるのだろう。
私は人殺しを代行する。他人のためではなく、自分のために。己が生を示すために。私は自分が壊れてしまうまで突き進むしかないのだろう。いつの日か自らの行いに気づいてしまうまで。
ソレが人間であると気づくまで。私にはそれしかないのだから。