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Dear My Doctor  作者: 美月沙紀
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乙犬

僕は、地域医療研究会のメンバーとともに、居酒屋に行った。看板には「乙犬」と書かれていた。


「こんばんは〜」

「ああ、佐藤くん、今日は何人?」

「10人です」

「こっちどうぞ」


佐藤さんを先頭に、みんなゾロゾロ入っていった。どうやら行きつけっぽい。


「飲み物どうする?未成年は飲んじゃダメだよ。」


あ、そういうことはしっかりしてるんだ。


「三杉くんは飲めるね。何がいい?」

「僕は、生中で」

「美月と高岡さんと渡辺くんは適当にソフトドリンク頼んで。他の人は生中でいい?」

「はい、いいです」「いいですよ〜」


ポンポンポンと話が進んで、ドンドンドンと飲み物が置かれた。


「じゃあ、乾杯!」

「カンパーイ!!」


久々に飲む生中、美味しい!


しばらく木村さんと他愛もない話をしていたら、佐藤さんが質問してきた。


「三杉くんは、どうして医学部に来たの?」


唐突にそんなこと言われてビックリしたが、僕は答えた。


「僕、精神科医になりたくて…」

「へえ、どうして精神科?」

「…高校の友達が、うつ病になって…学校に来なくなって、連絡もしなくなって、しばらくしたら、自殺しちゃって…」


自殺、という言葉にみんな反応して、あたりがし〜んとしてしまった。あ、マズかったかな…


「そうなんだ…、それで精神科医になって、鬱の患者さんとか治したいと思ったの?」

「…そうです」

「なるほど。でも、実際なかなか難しいよね。薬飲んでうまく効けばいいけど、うまくいかないことも多いし、医者と患者の相性とかもあって、ドクターショッピングする人も多いって、知り合いの精神科医が言ってたよ。

まぁでも、自分が関わることで、患者さんが良くなっていったら嬉しいよね、どの科でもそういうとこあるけど。そういう醍醐味でもないと、医者なんてやってられないよね」

「どうして…」

「だって、忙しすぎるもん。その割に給料そんなに良くないしさ。医者の平均寿命は10年短いらしいから」


フフっと笑って佐藤さんは僕をじっと見た。そして、続けて、

「三杉くんは、どんな医者になりたい?」

と聞いてきた。


「僕は…、患者さんが話しやすいと思ってもらえるような医者になりたいです」

「へ〜」

「患者さんて、高圧的な医者の前では、言いたいこと言えないじゃないですか。そしたら、肝心なことも言えなくなっちゃうんじゃないかと思うんですよね。そうはなりたくなくて」


お酒の力なのか、僕は饒舌になっていた。同じクラスの友達とは、こんな話したことなかった。このサークルの人たちは、何でも自由に好きなことを話し合える人たちなんだな…。


「そういえば、美月も似たようなこと言ってたな…、そうそう、関係ないけど、三杉くんを勧誘しようと言い出したの、美月なんだよ、知ってた?」

「へ?」

「いや、美月と三杉って、呼ぶと似てるでしょ?それで勧誘するって決めたみたいよ」

「はぁ…」


その程度の理由で勧誘されたんだ、俺…。でも、不思議と悪い気はしなかった。この人達の中なら、自分は自然にいられる、そんな気がした。





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