新入生歓迎ランチ1
僕と、その他2人の新入生が連れて行かれたのは、大学から徒歩10分程の、洋食屋さんだった。
「こんにちは〜!」
「ああ、沙紀ちゃん、みんな来てるよ〜。奥の席、どうぞ。」
マスター(と思われる男性)が向いた方向を見ると、すでに6名の客が座ってお喋りをしていた。
「お、美月、ご苦労さん。ちゃんと3人連れてきたじゃん!えらいえらい」
背の高い、ガッチリとしたラガーマンのような男性が、ニヤニヤしながらこっちを見て言った。
「頑張ったんですよ〜。さ、3人ともこっち来て座って!」
美月さんに促されて、僕たちは席についた。僕の正面に、彼女は座った。そして、僕の顔を見ると、ニンマリと笑った。にっこりではなく、ニンマリと。
「僕たち、もう注文したから、みんなも食べるもの決めて。聞いたかもしれないけど、新入生はおごりだから、好きなものどうぞ!」
ラガーマンがそう言うと、僕の隣に座った新入生の女子が、「いいんですか?じゃあ、高いもの食べちゃおー!」と、目をキラキラさせてメニューを覗き込んだ。先輩達の前で、そういうこと言うか?普通…(-_-;)
「どうぞどうぞ。他の2人も、好きなもの選んで!」
美月さんがニコニコしてそう言った。今度はニコニコ。もともと笑い顔っぽいが、その表情が、ニンマリしたりニコニコしたり、忙しく変わっていく…。
注文が済んだあと、自然と自己紹介タイムに突入した。まず、ラガーマンが口火を切った。
「はじめまして、医学部四年生で部長の、佐藤真吾です。出身は愛知で、一浪してます。みんな現役?」
「私も一浪です!」隣の女子が言った。その向かいのもう1人の新入生の男子は、「僕は一応現役ですけど…」と答えた。一応ね…、この謙遜の仕方、いつも引っかかるんだよな…。
「君は?」ラガーマンが僕を見て言った。
「僕は…2浪ですけど…」
「へぇ、そうなんだ。大丈夫大丈夫、この大学ね、2浪なんてウジャウジャいるから。一回大学出てきた人も多いしね。もとIBMとか丸紅とか、そういう人もいるよ。IBMにいたほうが医者になるより儲かるのにね」
へー、そういう変わり種もいるんだ…
「お、てことは、美月のほうが年は下じゃん♪ 」
ラガーマンが彼女を見て言った。
「そぉですねぇ、そぉなりますねぇ。まぁでも、医学部ではよくある話ですけどね〜」
そうか、美月さん、現役なんだ。頭いいんだな…
あんまり切れ者って感じはしないけど。
「あ、食事きたきた!とりあえず食べよう!」
スパゲティ、オムライス、ハンバーグ、などなどいろんな料理が運ばれてきた。お腹すいてた僕は、ガツガツと食べることに熱中した。