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Dear My Doctor  作者: 美月沙紀
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文化祭 4

正直、僕は話を切り出すのを戸惑った。

1学年しか違わないけれど、相手は先輩で、医学・医療に関しては僕より知識もあるし、いろんなことを考えてきただろう。僕の考えなんて、浅はかで取るに足りないと思われはしないだろうか…


美月さんは、僕の口から何が出てくるか、興味深々という顔をして、僕の目をじっと見つめている。うぅ、余計話しにくいじゃないか!だが、話し始めなければ何も進まないので、僕は口を開いた。


「僕、いろいろ考えたんですけど、精神疾患を持ちながら、社会の中で生きていく、ということに焦点を当てようと思って…」

「疾患を持ちながら生きていく…?」美月さんはキョトンとした顔をして僕の顔を見た。

「そうです。例えば、うつ病の患者さんは、気力が出ないとか、夜眠れなくて昼間身体がきついとか、頭痛とかもあったりしますよね。そういう症状を持ちながら生活するのって、とても大変なことだと思うんです。」

「そう…だろうね」

「うつ病であれば、勉強にしろ仕事にしろ、やらなきゃいけなくても気力が出ない、でもやらなければ日常生活送っていけないじゃないですか。仕事ができなければ金銭を得られない、家事をしなければ子供に食事を与えられない、とか。お金がなければ生活保護受けたり障害年金もらったりする方法もあるけど、申請すれぼ誰でももらえる訳じゃないし、もらえたとしてもギリギリの生活しか送れないんです」


僕はさらに続けた。

「社会との関係では、精神障害者に対する偏見や無理解がある。怠けてるとか怖いとか思われたりして、自分が精神疾患を持っていることを公にしにくい。雇用も、身体障害や知的障害に比べても精神障害の場合は遅れている。生活保護をもらうこと自体、税金の無駄遣いだという風潮もある中で、精神障害を持ってる人は、憲法25条が謳う最低限の生活すら保障されず、肩身の狭い思いをしながら生きていかなければならないんです…」


調子に乗ってしまった僕は、その後も、自分の知っていること、考えていることを取り留めもなく喋り続けた。どうやら僕は、一度波に乗ると一気に調子づいて喋る傾向があるらしい。


…あらかた話した後、僕は思い切り後悔した。美月さんの反応も見ずに、ひたすら1人で喋ってしまったせいか、彼女はポカーンとした顔をしている。


どうしよう…


しばらく無言のときが暫く流れた。

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