自殺した彼 1
僕は文化祭での発表を引き受けたはいいものの、何からどう手をつけたらいいのかを考えると、途方にくれてしまった。地域との関係で考える、と美月さんには言ったものの、自分の中で今ひとつピンときていない。
僕の脳裏に、ふと、高校時代に自殺した友達、水野友也のことが浮かんだ。彼は時折、僕の頭の中に登場し、その度に僕は神妙な気持ちになる。
水野は高校でいつも成績はトップクラスで、運動もでき、サッカー部では次期キャプテンとして期待されていた。友達も多く、いつも人に囲まれていて、どちらかというと人付き合いが苦手な僕は羨ましく思っていたが、どういうわけか、彼は僕とも親しくしてくれた。
高校2年のある日、たまたま学校の最寄り駅の改札の前で、彼と出くわした。珍しく、彼の表情が曇っていたので、僕は、「どうかした?」と声をかけた。
「いや、別に…」
「そう、それならいいけど」
僕と水野の乗る電車は別の方向で、僕はその日予備校に行く予定で急いでいたので、じゃ、と言って行こうしたら、
「三杉!」
と、大きな声で呼び止められた。振り返ると、水野が切羽詰まったような顔をして、僕を見ていた。
「あの…、少し、時間あるかな?」
「え…、う、うん、あるけど」
全然無かったが、彼の懇願するようは表情を見ると、行かなきゃとは言えなかった。
「…そこの喫茶店で、話できないかな?僕がおごるから…」
「…あ、いいよ」
駅前には、少し寂れた喫茶店が一軒あった。
「行こうか」
「ごめん、ありがとう」
僕と水野は、喫茶店に入った。
実際に、私は大学時代の友達を一人、数年前に偶然仲良くなった人を一人、自殺で亡くしています。何故止められなかったのか、今でも苦しく思い出します。