表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dear My Doctor  作者: 美月沙紀
13/17

文化祭 2

10月第3週の月曜日、私が昼休みに部室でお昼ごはん食べていると、三杉君が「失礼します」と入ってきた。三杉君は最近週3日ぐらいは昼休みに部室に顔を出す。


彼は私の向かいの席に腰掛けると、おもむろにコンビニおにぎりを食べ始めた。彼は食べるのがとにかく早い。かつ大食いで、運動しているようには見えないのに太らないのだ。羨ましい限りだ。私は食べた分だけ確実に太る。


三杉君はガツガツとおにぎりを平らげた後、ふうっと息を吐いて、


「あの、文化祭のことなんですけど」


と切り出した。


そういえば、佐藤さんに、三杉君の手伝いしろって言われてたっけ?自分が主体じゃないから、そんなに深刻には考えていなかったが、文化祭はもう3週間後だ。マズい。


「あ、そうだね、いい加減に準備しないとね。テーマ、考えた?」

「あの、いろいろ考えたんですけど、時間もないし、今まで自分があまり考えたこともないテーマだと間に合わないかな、と思って」

「まぁ、そうかもね」

「それで…、僕、今のところ一番興味あるの、精神医療なんです」

「へえ…。あ、そういえば、精神科医になりたいって言ってたっけ?」

「はい」


そうだ、友達が自殺したって言ってたな…


「いいんじゃない?まぁ、精神医療って言っても漠然としてるから、もうちょっと具体的なテーマにした方がいいと思うけど」

「それで考えたんですけど、精神医療を地域との関係で考えてみればどうかなって」

「て言うと?」

「あの、ほら、例えば、長期入院してた患者さんが退院した後、地域で生活するときの問題とか、地域に病院や施設を作るときに反対運動があったりしますよね、そういう問題とか、取り上げたらどうかな?とか。…すみません、頭の中でまだまとまってないんですが…」


なるほど。一応、地域医療研究会だから、それらしくしたいんだな。


「…いいんじゃない?やってみようか?」

「いいと思いますか?」

「うん。私、精神科のことはよく分からないけど、面白そうだとは思う」

「じゃ、どうやって作業進めていきましょうか?」

「そおだなぁ、とりあえず、さっき三杉君が言ったみたいなことと関係あること、列挙して持ってくるかな?関係する本とか、新聞記事とか。基本的に毎日昼休みにここで話し合おうよ」

「そうですね、よろしくお願いします」


彼はそう言うと、安堵したような表情を見せた。その表情が、なんとも言えない暖かな雰囲気を醸し出した。この人は、周りに柔らかな空気をもたらす才能があるのかもしれない。得だな、とちょっと思ってみた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ