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Dear My Doctor  作者: 美月沙紀
12/17

文化祭 1

夏休みは明け、僕は通常の大学生活に戻った。


僕は同じサークルの渡辺と、学籍番号の近い松岡徹という男と一緒にいることが多くなった。


渡辺は最初何となくとっつき難い感じがしたが、根が真面目で人の話をよく聞くので、僕は徐々にいろいろな話をできるようになった。そのうち、意外と自分をしっかり持っていて、譲れないことは譲れない、という一種の強情かあることがわかり、僕はそこに好感を持つことができた。


松岡は、弓道部所属で、高校時代は弓道ばかりやっていて、医学部に入るのに三浪してしまったとのことだ。僕や渡辺と違い、少しチャラチャラした感じがあるが、表裏がなく、自分の意見をハッキリ言う。渡辺もそうだけど、自分の意見をはっきり持ち、表明することができる人間に僕は好感を持つらしい。男でも女でも。


だが、同じサークルの一年生の高岡美晴とは、どうもソリが合わない。よく自分の意見をまくし立てるけど、相手がどう受け取るかを考えて発言しない。部長の佐藤さん曰く、「脊髄反射で物を喋る」。要するに大脳を介していないで喋るということだが、言い得て妙だ。特に僕に対しては攻撃的で、何かと文句をつける。最初のうちは、彼女の言い分をちゃんと聞いていたが、今はもう面倒くさくなって、ほとんど聞き流している。



さて、サークルの話だが、10月に入って最初の例会で、佐藤さんから唐突に、


「文化祭で、自分の興味ある分野でいいから、何か発表して欲しいんだけど、いい?」


と、ほぼ強制的にやれ、と言う口調で言われてしまった。部として、夏休み中のフィールドワークのまとめを発表することは前々から決まっており、その準備は既に進んでいるのだが、別の発表をするつもりだった看護学部の木村さん(佐藤さんの彼女)が、実習で忙しくて準備できない、と根をあげたため、誰か代わりに発表してほしい、とのことだった。ちなみに、文化祭は11月初旬。もう一ヶ月切っている。


「いや、でも僕、特に発表したいことある訳でもないし、あの、時間もないし…」

「何でもいいから」

「でも…」

「大丈夫大丈夫。あ、美月、使っていいから」


へ?


「何ですか、それ。私、佐藤さんの物じゃないんですけど」と美月さん。

「まぁ、鈴木くんの物だけどね」と佐藤さん。

「そういうこと言ってるんじゃないんですけど」

「いいじゃん、どうせ美月、ヒマでしょ?」

「ヒマですけど…」


美月さんは二年生だが、実際、授業のコマ数は少ないし(よくサボる彼女にはあまり関係ないことだが)、バイトは週一回家庭教師やってるぐらいだから、ヒマはヒマらしい。


美月さんは少しブスっとしていたが、僕の顔をじっと見て、


「どうする?手伝ってもいいけど」


と僕に話を向けた。


「…何でもいいですか?」

「何でもいい、何でもいい」

佐藤さんが目をキラキラさせて僕を見た。


「じゃあ、やります」


「ヨシ!や〜、良かった良かった!発表しないと、土谷にブツブツ文句言われちゃうからさ〜。アイツ、ねちっこいんだよね〜」


土谷というのは、文化祭の実行委員長で、割と佐藤さんと仲が良いらしかった。


「ま、美月とテーマとか相談して。ホント、何でもいいから」

「…分かりました」

「よし、今日はこれで解散!お疲れさま〜」


そう言うと、佐藤さんは嬉々として部室を出て行った。


僕は美月さんを見た。美月さんも僕を見た。そして、少し肩をすくめた。


「テーマは三杉くんに任すから。また後日、相談しましょ」


そう言うと、彼女も部室を出ていった。僕は

、ハァ〜とため息をついた。なんか、複雑な心境だ。大丈夫か、俺…




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