出会い1
僕、三杉琢磨がS大学医学部に入学したのは、25年前のことだ。当時の記憶はだいぶ薄らいでいるが、入学式の日、僕に声をかけたある先輩の顔は、今でも鮮明に覚えている。
入学式が終わり、古いお化け屋敷のような校舎でガイダンスを受けてた後、校舎から出ようとすると、外には先輩達であろう学生達がわらわらと集まっていて、大きなカードみたいなものを掲げて大声で叫んでいる。
なんだなんだ…?
カードを見ると、「医学部バスケットボール部 〇〇さん」「医学部スキー部 △△君」などと書かれている。何?
「三杉くん、三杉琢磨くん、いますかー!」
えっ、僕?誰?どこ?
あ、あの人⁇
見ると、「地域医療研究会 三杉琢磨くん」と書かれたカードを持っている女の子がいた。
今から考えたら、女子大学生に女の子、という表現は失礼だが、女性というより、女の子といったほうがしっくりくる雰囲気を醸し出していた。
次の瞬間、彼女が振り返った。
えっ…?外国人?
色黒で、少し彫りのある顔は、ベトナム?フィリピン?、とにかくそっちの方にいそうな感じだった。決して美人ではないが、人目をひく顔だった。
目があった。僕の人生が変わった瞬間だった。