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chapter4 これから一緒に暮らすのだから……

 あれから半月の時間が流れ、祖父は作業療法士とともにリハビリに励み、少しずつベッドから車椅子へ移動することができるようになった。

 そして、数日後には退院と医者から告げられ、祖母はもちろんのこと、今井家の全員がその喜びを噛み締める。


「今井さん、退院おめでとうございます!」

「今井さん、ささやかですが、これも受け取ってください!」


 何人かの医者や看護師から退院の言葉とともに、花束を手渡した。

 彼は何度も「ありがとう!」と感謝の言葉を繰り返す。


「今までこんな親父を()ていただきありがとうございました」

「お義父(とうさん)はみなさまにたくさんご迷惑をおかけしたと思います。本当にありがとうございました」

「いえいえ、とんでもないですよ!」


 彰と里奈が女性看護師に申し訳なさそうに告げた。

 しかし、彼女は「患者さんが退院するその日まで責任を持ってお世話をすることが私達の仕事ですから」と微笑みながら答える。

 その時、沙耶は自分がなりたい職種は違うけれど、「責任を持ってお世話をすることが仕事」という言葉は深いなとしみじみと感じていた。


「お父さん、またどこかですっ転ばないでくださいな」

「もう転ばねぇよ!」

「それはどうかねー?」

「あん!? なんか言ったか!?」

「おい。親父、お袋。こんなところで言い争いは止めろよ」


 彰が彼の両親の仲裁に入るが、なかなか治まらない。

 里奈と沙耶はその光景を見て苦笑を浮かべるしかなかった。



 *



 病院から出たあと、彼らは祖父母の家で着替えなどを取りに行くために寄り、今井家に到着した。


「おっ、ここが彰達の家か!」

「そうだよ」

「少し散らかっているけど、親父のところより、狭く感じるかもしれないがな」


 そこに到着した祖父は大興奮。

 なぜならば、彼にとってははじめて見るもので溢れていたからだ。

 家の中は畳ではなくフローリングで卓袱台(ちゃぶだい)は存在せず、リビングダイニングキッチンが設置され、今まで見たことがなかったドアホンが存在している。


「わしのところでは見たことがないものでいっぱいだ!」

「おじいちゃん、興奮しすぎだから」

「彰、里奈さん」


 三世代の微笑ましい雰囲気の中、祖母が彰と里奈を呼んだ。

 彼らは「ん?」、「はい?」とそれぞれの反応を示し、彼女のところに近づく。


「何度も同じようなことを言って申し訳ないんだけど……みんなに迷惑ばかりかけちゃってごめんね……」

「お、お義母(かあさん)……」

「お袋、心配しすぎ。俺達は二人の今後の生活が心配だからさ……」

「そうよね……」

「これから一緒に住むんだから気にするな」


 祖母と両親が深刻そうな表情をしながら話をしている時、沙耶は祖父が乗っている車椅子を押しながら、彼らの元へ近づいた。


「私、おじいちゃんとおばあちゃんに言いたいことがあるの」

「なんだい?」

「沙耶ちゃんの将来の夢?」

「うん。私ね、おじいちゃん達のために、介護福祉士になりたいと思ってるの」

「素敵な夢だね」

「わしらのためにかい?」

「そう」

「沙耶ちゃんなら、素敵な介護福祉士になれるよ」

「わしらの自慢の孫だからな!」

「おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう! 私、頑張るね!」


 彼女は祖父母に伝えておくべきことを告げ、その夢を実現させるために頑張ろうと決意した。

2017/07/10 本投稿

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