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ゲンソウトーレ  作者: 黒須
24/36

ガットーレRe03

黒妖精【オリジナル】

黒いドレスを纏った妖精で本名は不明。

近くを通りがかった人間を連れ込んで『楽しく遊んで』いた。

「迷符『ミステリアス・ミスティカル』」

「陽光『サンシャインブラスト』」


黒妖精の放った霧のような弾幕と、サニーミルクの放った光の弾幕が激突する。

しかし、意外にも自信たっぷりな黒妖精の弾幕はあっさりと撃ち抜かれてしまった。


「もう2枚目じゃない、私はまだまだやれるわよ?」


サニーは黒妖精に対し余裕の表情を見せるが、黒妖精の方も焦った様子を見せずに後ろへ退く。

諦めてくれたのだろうか……と思ったのが甘かった。


「困惑『パラレルライン5丁目』」

「!?」

「宣言に無い3枚目なんて反則よ?」


黒妖精は確かにカード2枚と宣言した。

だが、そこには一つだけ落とし穴があった。


「音符『妖精オルガン第二章』」

「踊符『ワルツナイトフィーバー』」

「遮断『侵入禁止の横弾幕』」

「私のカードは2枚でも、他のみんなは何枚出すのかしら?」


弾幕ごっこでは必ず一対一というわけではない。

二対二だったり三対一だったり……そして黒妖精の決闘は終わったが、この場には何人もの妖精がいる。

彼女たちの目的が黒妖精と同じなら、あるいは彼女たちが黒妖精の下僕なら、三妖精たちに決闘を挑むのも不思議ではない。




「「「日・月・星熱『アイスディゾルバー』」」」

「幻燈『ランプ・ザ・ファンタズム』」


三人の最後のカードが放たれた。

一方で、黒妖精たちのグループは数枚が残されている。

自分たちの勝利を確信したのか、黒妖精は俺の隣でゆっくりと見物していた。


「あらあら、必死になっちゃって」


三妖精は三人とも必死に弾幕を放っていた。

黒妖精の策略を知ってからは一枚のカードで多くのカードを潰していくしかなかった。

故に、最後の方は時間ギリギリのマラソン弾幕となったのだ。


「ねえ、あんな芋臭い子より私たちと一緒にいる方が楽しいでしょ?」


ああ、道に迷うのは妖精の仕業と聞くが、これが正にそれなのか。

甘く蕩けるような声が俺の頭の中に響いた。


「あなたは私たちと踊って歌って楽しく暮らすの」


魔力が切れたというやつだろうか、三妖精の最後の弾幕が途切れてしまった。

もはや動く力も残っていないのか三人ともその場にへたり込んでいる。


「私たちがあなたのことを、ずぅっと愛してあげる」


黒妖精の甘い囁きは止まらない。

しかし、俺は目の前の光景を糧に最後の力を振り絞った。


「悪いけど、そんな芋臭い子の方が好みなんだ」

「よく言ったぜ」


強烈な光が屋敷の壁を焼いた。

黒い帽子、黒いワンピース、白いエプロン、そして大きな箒を持った金髪の少女。

そこにいたのは幻想郷において有数の知名度を持つ人間、霧雨魔理沙だった。




正しく圧倒的だった。

人間を弱者と呼ぶのなら、人間の彼女の上をいく妖怪たちはどれほどの力を持っているのだろうか。

彼女が放った無数もの星屑が部屋を埋め尽くし、黒妖精の仲間たちはあっという間に吹き飛ばされていった。


「さぁて、お前さんも一回休みにするかい?」


彼女は不敵な笑みを浮かべて箒を突きつけるが、返って来たのは簡単な答えだった。


「……飽きた、もういらない」


まるで遊びを邪魔されたから、遊んでいたオモチャにまで執着を失った子供のように、黒妖精はあっさりと引き下がった。

いや、妖精とは自然の体現である。

ならば、自然現象がここまで気紛れであっても不思議ではない。

とにかく、俺はようやく自分の日常に戻れるらしい。

俺はその事実と、魔女の助太刀と、俺を助けようと奮闘した少女たちに心から感謝した。




「……とまあ、こんな感じさ」


あれから数日後、俺は貸本屋の鈴奈庵に来ていた。

実は魔理沙に礼をする予定だったのだが、なぜかここを指定されたのだ。

だが時間になっても魔理沙は現れず、仕方ないので丁度その場にいた稗田様や小鈴に今回の事件の顛末について話していたのだ。


「なるほど、しかし謎は残りましたね」

「……というと?」

「なぜ妖精は貴方を攫ったのか、なぜ妖精たちは一丸となっていたのか」

「その黒妖精とかいう子が周りの妖精を引き付けていたんでしょ?」


稗田様の疑問に対し軽い口調で答える小鈴。

幻想郷についても、妖精についても知識の浅い俺にとっては全くついていけない会話なので肩身が狭い。

そうやってソワソワと話を聞いているとようやく待ち人が来た。


「おお、遅れてしまったようだな」

「あー、○○もう来てるー!」

「だから早く出ようって言ったのに」

「ふふっ、みんな揃って遅刻ね」


光の三妖精たちを引き連れてやってくる魔女。

そこまで広くないうえに(失礼だが)物が多い鈴奈庵の人口密度は一気に高くなる。

気軽に話せる相手が増えた一方で美少女に囲まれているのだから、唯一の男としては更に肩身が狭くなってしまう。


「すまんな、寺に寄っていたら遅れたぜ」


寺、というと命蓮寺だろうか。

縁日や墓地の関係で人里にも縁のある所というのは知っているが、逆に言えばその程度しか知らない。


「さて、お前さんには少しばかり仕事をしてもらうぜ」


魔理沙は何の説明もなしに荷物を机に置く。

それは巨大というわけではないが、中身は色々と詰まっていそうな袋だった。


「これは何なんですか、魔理沙さん?」

「ああ、あの屋敷に置いてあった遺品だぜ」




俺が助け出された翌日、魔理沙は一人で黒妖精の屋敷を探索していたらしい。

流石に黒妖精は姿を消していたが、何も見つからないわけではなかった。

一つは大量の荷物、そしてもう一つが……


「荷物の持ち主、というわけですか」

「供養は私が頼んだ、荷物は私が有効活用してやるぜ」


罰当たりというべきか逞しいというべきか。

いや、持ち主が死んだマジックアイテムという話も聞かないわけじゃないのだから、魔法使いという職では常識なのかもしれない。

しかし、俺に出来る仕事と死者の遺品とどういう関係があるのだろうか。

俺は疑問に思いながらも袋の中に手を入れるが、中の荷物を見て驚いた。


「MADOKAYA-m78……携帯電話?」

「流石は外来人、知っていたか」


MADOKAYA-m78、円家電工から発売されたガラケーだ。

確か「光よりも速く、ビッグに繋がる」という分かりやすいキャッチフレーズは大々的に宣伝されたおかげで有名だ。

よく見てみれば遺品は外の世界で見かける物ばかりだ。


「迷い込んだ外来人が標的だったのね」

「妖精の事だから標的なんて意識すら無かっただろうがな」


自分も辿り着く場所が違っていたらこうなったのか、そう思ったら背筋が少しだけヒヤリと来た。


「そういうわけで、香霖の所に売っ払う安物と、私のコレクションになるレア物の分別に協力してくれないか」


そう言って魔理沙は袋の中身を机の上に広げていく。

仮面ファイター変身ベルト、四代目HPブラザーズのCD、三分でわかる東アジアの崩壊……オモチャだったり書籍だったり雑多にもほどがある。


「希少本は鈴奈庵が引き取りますからね」

「そのつもりで、ここまで来たんだよ」


何があったのかは知らないが、思いのほか数が多いので目視で適当に捌いていく。

……が一瞬なにか、その場には異色のものが見えた。


コミック愛楽園


「なんでこんなものが……」

「なになに……巻頭カラー、幼女に監禁された俺はもう限界だ」


ようやく全ての謎が解けた。

妖精は時に人間の真似をすることがある。

食事にしろ、ファッションにしろ、行動にしろ。

……つまり俺はエロ漫画に殺されかけ、被害者は実際に殺されたということか。


「うぁ、外の世界の大人って……」

「性癖も歴史を重ねることで歪んでいくのね」

「ちょ、そこ、見るな!」

「ずるいー、私にも見せてよ~!」

「ねえ、この尖った置物って貰ってもいい?」

「とーきょーたわー2009……って何かしら」


「いかん……蒐集品を分別しに来たのに、まったく収拾がつかんぜ」

何だかんだで、もう一年の1/3か……年を取ると時間の流れがマッハ

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