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ハイファン・SF・VRもの

31日目の悪魔

作者: 采火

キャラ紹介


羽柴bro.

羽柴 このは[はしば このは]。モニターの管理者。チャットの管理も兼ねていて、フルダイブしている者とチャットによる意思疎通をしている。


羽柴sis.

羽柴 もみじ[はしば もみじ]。研究員プレイヤー。このはの姉。


いっしー

石田 弘哉[いしだ ひろや]。研究員プレイヤー。研究チームの責任者で筋骨隆々のおっさん。


めりさ

細川 芽里沙[ほそかわ めりさ]。研究員プレイヤー。気の弱い二十代の女性。


カトー

加藤 圭雅[かとう けいが]。研究員プレイヤー。冷静沈着な男性研究員。


福島県

福島 将紀[ふくしま まさき]。研究員プレイヤー。芽里沙の彼氏。


Nero

ネロ・アンディー。研究員プレイヤー。陽気で紳士的なイギリス人男性。

 これは、今は主流となっているVR型ローカルネットワークの、とある研究チームの制作記録である。

 制作記録といっても、試運転による修正チェック程度のもの。

 制作チーム計、九名のうち六人が一ヶ月間連続フルダイブし、残りの三名で修正、補正を行った。

 今からお見せするのはその最後の一日である。

 どうか忘れないで欲しい。

 諸君が安心してローカルネットワークに接続しVR世界を楽しめるのは、彼らの尊い犠牲があっての事だということを。



†♯†♯†



8時00分

《羽柴bro.がR通信チャットにボイス入力設定で参加しました。》

羽柴bro.

「本日の担当、羽柴このはです。おはようございます。9月31日午前8時00分、メニューバーの時間表示にズレが無いか確認してください」


8時01分

《羽柴sis.、以下6名がR通信チャットにキーボード入力設定で参加しました。》

羽柴sis.

「このは、おはよう。異常無しよ」

いっしー

「わしもだ」

めりさ

「私もです」

カトー

「以下同文」

福島県

「俺もー」

Nero

「便乗」

羽柴bro.

「それじゃ、今日の仕事を確認します。今日は“三十一の悪魔イベント”の確認だけです。その後、ログアウトして貰い、お仕事終了となります。お疲れさまでした」

いっしー

「おいおい、まだ仕事は終わってねえぞ?」

Nero

「そうですね。でもまあ、これが終わったらシャバに戻れるので良いのでは?」

カトー

「ネロ君、シャバって……」

福島県

「ネロって案外ホスト系?ww」

めりさ

「皆さん、お仕事中ですっ。話が脱線してますっ」

福島県

「芽里沙! お前はいつ見ても可愛いなあ!」

羽柴sis.

「そこのリア充黙りなさい?」

羽柴bro.

「……何はともあれ、チーフ、話を進めていいですか?」

いっしー

「いいだろう。とは言っても大半は内容を知っているだろうがな」

カトー

「そうですね」

羽柴sis.

「確認よ、確認。抜けてる情報があったらめんどくさいしね」

めりさ

「このは君、お願いしますです」

福島県

「め、芽里沙! あれほど俺以外の名前を呼ぶなって言ったのに……!」

羽柴bro.、羽柴sis.、いっしー、カトー、Nero

「「うっさい」」

めりさ

「将紀君、まだ朝だから、ね? ちょっと落ち着こう?」

福島県

「芽里沙がそう言うなら……」

羽柴bro.

「リア充達の話は落ち着いたかな? じゃ、説明するよ。これは2ヶ月に一度の31日限定イベントだ。VR世界のあちこちに出現する31体の悪魔を倒して貰う、ローカルネットワーク用VR世界で唯一の戦闘型アトラクション。低レベル悪魔が30、ボス悪魔が1。彼らはVR世界の公園に出没するからね。ボスだけは中央広場に出現だ」

いっしー

「その日の午前中のみ、公園内及び中央広場に武器売りのNPCが出現。そこで悪魔退治のクエストを受注し、武器を購入だったか」

Nero

「さすがチーフ。よく覚えていらっしゃいますね」

いっしー

「やっと、この自慢の筋肉のお披露目ができるわい!」

羽柴sis.

「一応、レベル制のイベントでしょ? 初めて受注したときに貰えるクエストカードが、イベントのデータを管理するんじゃなかったかしら。筋肉どうのこうのの問題じゃないわ」

めりさ

「もみじちゃん、チーフが拗ねちゃった、よ?」

福島県

「ほっとけばよくね?ww」

Nero

「で、僕らはこれからそれを受注しに行くわけですねですね」

カトー

「そうだね」

羽柴bro.

「次、プレイの仕方だ。NPCで買った武器でのみ攻撃可能。相手から攻撃を受けると痛覚ダメージを受け、更に弱い攻撃なら数秒フリーズ。強い攻撃なら強制ログアウトだ」

Nero

「攻撃を華麗に避けなくてはね」

福島県

「このナルシストめ」

いっしー

「ローカルネットワークだから、VR世界の規模は我らが街と同じ広さだ。全員、移動用のスクーターはあるな?」

羽柴sis.

「チーフが復活したわ」

めりさ

「【スクーター:移動用アイテム。 装飾課金・可 能力課金・可】」

Nero

「貼り付けありがとうございます」

カトー

「そういえば課金関係のチェックをしてないけど、大丈夫かい?」

羽柴bro.

「まだ課金先の整備をしてないので、また後日です」

カトー

「それなら良いけど」

いっしー

「確認はこれで終了かね? 各自、マップを見て悪魔を5体視認がノルマだ。戦っても戦わなくてもいい。面倒だから。悪魔の出現時間は正午からだから、それまでにクエストの受注、武器の購入だけしたら後は時間まで自由だ」

羽柴bro.

「15時までにノルマを達成して中央広場へ来てくださいね。ボスを倒して、クエストクリアをしたら本当にお仕事は終了です」

羽柴sis.

「えぇ? ボス倒すの?」

羽柴bro.

「姉さん、頑張って下さいよ?」

いっしー

「それでは解散だ。クエスト中はチャットにログインすること。 キーボード入力ではなくボイス入力、フレーム表示ではなく音声出力だ。いいな?」

羽柴sis.

「了解」

めりさ

「はい」

カトー

「了解だ」

Nero

「それではまた後で」

福島県

「芽里沙、デートしようぜ!」

羽柴bro.

「……不安ですね」

いっしー

「……だな」



12時03分

《羽柴sis.、以下6名が入力設定をボイス入力設定に変更しました》

羽柴sis.

「これから行ってくるわ。武器は無難にレイピアを買ってきた」

いっしー

「わしは手甲だ。男の拳だ!」

カトー

「僕と細川さんは弓を買ってきた」

めりさ

「はい」

福島県

「男はやっぱり剣だろ、しかも大剣! な、ネロ!」

Nero

「そうですねぇ。大剣は動きにくそうですから、僕は普通の片手剣と盾ですが」

羽柴bro.

「なんだかんだ楽しんでる?」

羽柴sis.

「まあね」



15時07分

福島県

「ボス発見~」

カトー

「一人で突入するなよ?」

福島県

「分かってるって」

めりさ

「危ないこと、しないでね?」

福島県

「おう!」

Nero

「それにしてもアレは怖そうな悪魔ですね」

羽柴sis.

「ふふん。さっきのノルマ簡単すぎて手応え無かったから、これは楽しめそうね」

いっしー

「5体とも倒してきたのか?」

羽柴sis.

「ええ、そうよ」

羽柴bro.

「そんな無謀な事したの、姉さんだけだからね……」

羽柴sis.

「あら? そうなの?」

いっしー

「何はともあれ突入しようではないか」

福島県

「おっしゃ、一番乗り~!」

めりさ

「あ、」

カトー

「こら! 福島く、ん……?」

羽柴bro.

「どうしました?」


15時18分

《福島県、が強制ログアウトしました》

羽柴bro.

「一瞬でやられましたねww ログアウトしたようなので、ちょっと様子を見に行ってきます」

いっしー

「頼んだぞ。その間にわしらはあれを倒そうかの」

Nero

「非常に骨の折れそうな仕事です」


15時34分

《Nero、と、いっしーが強制ログアウトしました》

羽柴sis.

「ちょっと! 女の子だけ残してログアウトするなんてひどいわww じゃ、次は私が行ってこようかしら」

羽柴bro.

「駄目だ姉さん!」

羽柴sis.

「あら?」

めりさ

「どうしたの、です?」

羽柴bro.

「福島先輩を筆頭にネロ君もチーフも心肺停止状態が確認されました! 強制ログアウトは脳や身体機能に何らかの影響を与えるようです! 今すぐその場を離れて、強制ログアウトを回避してください!」

カトー

「なっ?」

めりさ

「将紀君が……? 死んだの……?」

羽柴bro.

「蘇生中ですが、時間的に見込みは」

めりさ

「いやああああああああああああああああああああああああ!!!」

羽柴sis.

「あ、こら! 芽里沙!」

羽柴bro.

「どうしたんです!?」

カトー

「遠距離武器のくせに飛び込んで行ったんだ!」

羽柴bro.

「マズい! 誰か止め」


15時39分

《めりさ、が強制ログアウトしました》

羽柴sis.

「あ……」

羽柴bro.

「芽里沙ちゃん……」

カトー

「ぼーっとするな! 羽柴姉! 安全圏へ移動するぞ!」

羽柴sis.

「……了解!」

カトー

「羽柴弟は、他の研究員に連絡だ! あの2人に解析させろ!」

羽柴bro.

「は、はい!!」

カトー

「何が何でも生き残ってやる……!」


15時52分

羽柴bro.

「加藤先輩! あの2人と連絡が取れません!」

カトー

「……」

羽柴sis.

「加藤先輩?」

カトー

「すまん今、悪魔が近寄って来たから息を潜めていた」

羽柴bro.

「安全圏にいるんじゃないんですか?」

羽柴sis.

「安全圏に進入してきたのよ! 低レベル悪魔とボス悪魔!」

カトー

「すまないが、残り何体の悪魔がいるか早急に調べてくれ」

羽柴bro.

「あ、はい!」


15時56分

羽柴bro.

「残り23体です! 姉さんが5体、チーフが2体、福島先輩が1体を倒してます!」

カトー

「悪魔が近くにいない場所へ誘導してくれないか? そこで正当な手順を踏んでログアウトしたい」

羽柴bro.

「すみません、こちらからでは視覚情報は入らないので、誘導ができません。ただ、悪魔の反応を摘出したときに、北西第三エリアに反応はありませんでした」

羽柴sis.

「あたしが一掃したところじゃない」

カトー

「よし、そこまで駆け抜けよう。 羽柴姉! スクーターの用意をするんだ!」


16時21分

《カトー、が強制ログアウトしました》

羽柴bro.

「か、加藤先輩!?」

羽柴sis.

「いやあああああああ!!!」

羽柴bro.

「姉さん! 落ち着いて! 芽里沙ちゃんの二の舞になるよ!! 一体どうしたの!?」

羽柴sis.

「ほ、北西第三エリアに着いたんだけど、油断していて……。ログアウトしようしたら、後ろに悪魔がいて……」

羽柴bro.

「姉さんは無事!?」

羽柴sis.

「加藤さんが庇ってくれたのよっ……!」

羽柴bro.

「僕のミスだ……! 僕が定期的に悪魔の反応を確認しなかったから……!」

羽柴sis.

「このはのせいじゃ、な、い……」

羽柴bro.

「姉さん!?」

羽柴sis.

「……ごめんね、このは」


16時17分

《羽柴sis.、が強制ログアウトしました》

羽柴bro.

「ねえ、さ、ん……?」


16時19分

羽柴bro.

「うわああああああああ─────!!!」


16時31分

羽柴bro.

「………このシステムは失敗だ」


16時34分

羽柴bro.

「僕はもう、このシステムに関わりたくない……」


16時38分

羽柴bro.

「誰かに委託しよう………。ちゃんとこのシステムをありのままを伝えてないと……。二度とこんな事にならないように」


16時41分

羽柴bro.

「皆、ごめんね」


16時42分

《羽柴bro.、がログアウトしました》



†♯†♯†



 この出来事から丁度一年後、VR世界は正式に実現した。とある企業がこの研究チームから、このシステムを買い取ったのだ。

 世界中でVR世界が次々と普及して行く。

 その中で、VR世界にプレイヤーを閉じこめデスゲームを始める闇企業が現れ出す。

 それはこの研究チームにとって最悪な事であった。連絡の取れなかった研究員二人。あの二人が荷担しているだろうと、羽柴このはは推測する。

 死亡者六名。羽柴もみじ、石田弘哉、細川芽里沙、加藤圭雅、福島将紀、ネロ・アンディー。

 これがVR型デスゲームという名の刑事事件、最初の犠牲者達だ。

 どうか忘れないで欲しい。彼らの犠牲を。

 そしてどうかVR世界に関する犯罪を、彼らのためにもなくして欲しい。

 彼らはVR世界に、夢のみを求めていたのだから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 誰が死ぬか予想出来ないし、テンポいいっすよね。 [気になる点] 登場人物が並列に存在するので、誰が主人公かわからない。 登場人物の誰が死んだか、憶えきれない。 ←そのためのキャラ紹介がある…
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