表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

さよならの、そのさきで・・・ ➀

作者: mikioneko
掲載日:2026/01/19

暴走してきた車にはねられそうになった玲奈。

それを咄嗟に助けてくれた男性。


しだいに心惹かれていく気持ちに気付く。



短編の恋愛ものです。


甘いお話をお楽しみください。

 辻野玲奈の人生は、ある日突然の出来事で少しだけ色づいた。


 その日、仕事帰りに交差点を渡ろうとした瞬間、猛スピードで突っ込んでくる車が視界に入った。ブレーキの音もなく、直進してくる車に玲奈は足がすくみ、咄嗟に動けなかった。

「危ない!」

 突如強い腕に引き寄せられた。世界がぐるりと回転し、玲奈は誰かの胸にしっかりと抱き止められていた。心臓が大きく跳ね、血の気が引く感覚に襲われる。

「大丈夫ですか?」


 優しく低い声が耳元で響く。顔を上げると、見知らぬ男性が心配そうに覗き込んでいた。整った顔立ちに、落ち着いた眼差し。ほんの一瞬、時間が止まったように感じた。

「……助けてくれて、ありがとうございます」

 ようやく言葉を絞り出すと、彼は小さく微笑んだ。

「気をつけてくださいね」

 それだけ言うと、彼はその場を去っていった。玲奈は、しばらくその背中を見送った後、「名前も聞けなかったな……」と呟いた。

 その日から、玲奈は不思議と彼のことを思い出してしまうようになった。

 

 それから数日後——。


 玲奈は仕事終わり、疲れた身体を引きずるようにして行きつけのカフェへと向かった。お気に入りの席が空いているかどうか、そっと店内を見回したとき——。

「あ……!」

 彼だ。

 玲奈が驚いて立ち尽くしていると、彼も気づいたのか微笑んで言った。

「よく来るんですか?」

 まるで偶然の再会を喜ぶように、自然な口調だった。玲奈は胸の奥がドキリと跳ねるのを感じた。「運命って、こういうことを言うのかもしれない……」

 カフェには心地よいジャズが流れ、コーヒーの香ばしい香りが広がっていた。玲奈は少し躊躇いながらも、彼の向かいの席に腰を下ろす。

「ここ、よく来られるんですか?」

 玲奈が尋ねると、彼は微笑んだ。

「ええ、落ち着く場所を探していて。たまたまこの店に入ったら、すごく雰囲気が良くて」

 玲奈は少し嬉しくなった。このカフェは、彼女にとって特別な場所だった。仕事帰りにホッと一息つく、そんな時間を作るために通っていた場所に、偶然にも彼がいたことが嬉しかった。


 それから話が弾み、二人は仕事のことや趣味のことについて話すようになった。彼は営業職をしているらしく、日々の忙しさや出張の話など、面白いエピソードを交えながら玲奈を楽しませた。

「玲奈さんは、どんなお仕事を?」

「私は……事務職です。毎日パソコンとにらめっこしてばかりですけど」

「それはそれで大変そうですね。肩、凝りません?」

 そんな何気ない会話が心地よく、時間が経つのを忘れるほどだった。

 その日は連絡先を交換することなく別れたものの、玲奈の中には彼との時間が心地よいものとして残った。

 

 数日後、再びカフェで偶然の再会を果たした。

「これはもう運命かもしれませんね」

 彼が笑いながらそう言うと、玲奈はくすっと笑った。

「そうですね」

 今度は自然な流れで連絡先を交換し、その流れで「今度食事でも」という話になった。

 初めてのデートは、意外にも居酒屋だった。

「こういう店、よく来るんですか?」

 玲奈がそう尋ねると、和也は笑って答えた。

「営業職なんで、取引先と飲みに行くことが多くて。だからこういうお店の方が落ち着くんですよ」

 店内は賑やかで、活気に満ちていた。玲奈は居酒屋のざわめきを心地よく感じながら、和也の話に耳を傾けた。


「玲奈さんは、お酒強いんですか?」

「そんなに強くないですけど……少しなら」

「じゃあ、軽めのカクテルにしましょうか」

 和也はメニューを見ながら、玲奈が飲みやすそうなものを提案してくれた。その細やかな気遣いが嬉しくて、玲奈は自然と笑顔になる。

 親しみやすい口調と、肩肘を張らない態度。玲奈は次第に緊張を解き、仕事のことや日常の何気ない話をしながら、楽しい時間を過ごした。

 店を出ると、夜風が心地よかった。ふと、和也が玲奈の髪が風に揺れるのを見て、微笑んだ。

「風、冷たくないですか?」

 玲奈が「大丈夫です」と言うと、和也はさりげなく自分のジャケットを脱ぎ、玲奈の肩にそっと掛けた。

「無理しないでくださいね」

 その優しさに、玲奈の心がふっと温かくなった。

 彼の気遣いが嬉しくて、思わず小さく笑う。

「ありがとうございます」

 その夜、玲奈は帰宅してもずっと和也のことを考えていた。

 ——もしかして、私……この人のことを?

 胸の奥に、小さな恋の芽が息吹いたことに、玲奈はまだ気づいていなかった。



 仕事でミスをして、上司に怒られた帰り道。

 いつものようにカフェに立ち寄る気にもなれず、玲奈はふらふらと足を引きずるようにして駅へ向かった。

「……お疲れさまです」

 ふと、聞き慣れた声に足を止める。

 そこには和也が立っていた。スーツのまま、少し息を切らしている。


「なんで……?」

「連絡、なかったから。なんとなく……嫌な予感がして」

 玲奈は驚き、そして心がじわりと温まるのを感じた。

 何も言わなくても、気づいてくれる人がいる。そんなことが、どれほど救いになるか。

「ちょっと、行きたいところがあるんです」

 和也は玲奈の手を取った。玲奈はその手の温もりに、何も言わずついていった。

 タクシーを降りた先は、人気のない高台だった。

 街の光が遠くでまたたき、夜風が優しく頬を撫でる。

「ここ、俺が好きな場所なんです。何もないけど……落ち着くから」

 玲奈は黙って隣に立った。沈黙が苦ではない。不思議と、ただそこにいるだけで心が満たされていく。


「玲奈さんは、頑張りすぎるところがあると思うんです」

 和也がぽつりとつぶやく。

「たまには、誰かに甘えていい。俺がその誰かじゃダメですか?」

 その言葉に、玲奈の目からぽろりと涙がこぼれた。

 和也は何も言わず、そっと玲奈を抱きしめた。

 その胸はあたたかくて、鼓動が心地よく響いていた。

「ありがとう……」

 玲奈はただ一言、そう呟いた。




 ――恋してる・・・。


 今ハッキリとそう言える。

 あの日会ったその時から、私の頭の中は彼が支配していた。

 紛れもなくこれは恋だ。


 待ち合わせ場所に早く着きすぎてしまった。

 19時の約束に1時間も早く来てしまった。

 それだけ気持ちが逸っているのだろう。


 まだまだ時間がるので、本屋にでも行こうとした時、声を掛けられた。

「お姉ちゃん?」

「えっ?あぁ茜?どうしてこんな所にいるの?」

「友達とお茶してたのよ。帰るとこやけどお姉ちゃんは?」

「えっ?ああ、わたしも友達とご飯の約束してて・・・」

「そうなんや、ほんじゃあ遅くなるの?」

「そうね・・・少し遅くなると思う」

「わかった。お母さんにそう言っとくね」


 そう言うと茜は帰って行った。

 彼の事はまだ誰にも言っていない。

 まだ正式に付き合って欲しいと言われたわけではないし、今の時点ではただの友達と言えるだろう。


 わたしたち姉妹は血の繋がりがない。

 わたしの母と茜の父が再婚したからだった。

 まだ二人とも小学生で、茜が3年生わたしが6年生だった。

 お互いに一人っ子だったため、姉妹ができたことがすごくうれしかった。

 茜も「お姉ちゃん」と慕ってくれ、妹ができたことにうれしくて仕方なかった。


 仲のいい姉妹としてなんでも話した。

 だから今回もことも何度も言おうかとしたが、まだ早いかな?と思ったのだ。

 彼にも家族のことは何も言っていない。

 ちゃんと彼氏、彼女となったら言おうと思っていた。


 そんなことを考えていたら約束の時間が近づいていた。

 待ち合わせ場所に行くと、彼が待っていた。

「和也さん!」

「あぁ玲奈さん。こんばんは」

「早かったんですね」

「いや、俺も今来たところですよ」

「わたしは早く着きすぎたので本屋に行ってました」

「そうなんですか、ならお待たせしたのは俺の方だったんですね」

 そう言いながら和也は頭を搔いた。

「いえ、わたしが早く来すぎたので・・・」

 和也はふふと笑いながら「じゃあ行きましょうか・・・」と私を促して歩き出した。



 連れて来てくれたのは、イタリアンレストランだった。

 大阪駅近くに建つ超高層ビルの最上階にある、このレストランからの眺めは、それは素晴らしかった。

 梅田の高層ビル群の夜景が目の前に広がり、キラキラと輝いていた。

 

 予約もしていたようで、案内された席には予約席の表示があった。

 夜景を眺めながら食事ができるなんて、夢のようだ。


「綺麗ですね・・・」

「ほんとにここの景色は最高です。ここ梅田の夜景は世界的にも有名ですからね」 

 二人で窓の外の夜景を眺めていると、食事が運ばれてきた。

 ワインで乾杯をすると和也が唐突に話し始めた。

「玲奈さん、俺と結婚を前提に付き合ってもらえませんか・・・」

「えっ!結婚・・・!?」

「あぁぁ・・・いきなりで申し訳ない、今すぐと言う訳ではないんだ・・・俺は玲奈さんとこれから先もずっと一緒にいたいんです」

「はい・・・わたしも一緒にいたいです・・・よろしく願いします」

 まだ正式に付き合い始めた訳ではなかったのに、いきなり結婚前提とは・・・少し驚いてしまったけれど、決して嫌ではなかった。 

 これからも大切にしたいと思った。


お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ