死人
流血表現あります
「うわああっ!?」
家来が悲鳴を上げる。
次から次に棺の蓋が開き、這い出てくる死人たちは、歯をむき出しにして次々と襲いかかってきた。
城中の者が刀を手に応戦するが、普段から刀を握らない者ばかりだ。あやかしを相手にしたものも少ない。――無惨にも死人の餌食となった。
「上様を守れぇ!!」
皆、必死に将軍を取り囲み、盾となる。白木蓮は先頭切って死人の首をはねていった。
「上様を安全な場所へお連れせよ!」
だが、将軍は首を振った。
「あの小梅とかいう小僧がいる限り、どこへ隠れようと無駄だ。この城に、安全な場所などない。――・・・それに」
将軍は抜刀すると、家来の首へ迫る死人の口内を突き刺した。ズ・・・と引き抜けば、死体は崩れ落ちた。
「俺も久しぶりに暴れてみたくなった」
返り血が顔に飛ぶ。白い軍服を朱色に染める将軍は、どう見ても守られるだけの男ではなかった。
家来たちは眼を丸くする。将軍は「どけ!」と一声怒鳴る。あっさりと家来たちは道を開けた。
「し、しかし上様! なりません、お命が危のうございます!」
「武士でありながら刀すら満足に振るえぬ貴様らよりマシだ。――それより、大奥や女中たちのところへゆけ! 足手まといだ」
将軍は白木蓮の隣へゆくと、ニヤリと笑った。
「血がたぎるな、佐々木。あやかしは、人を斬るのとはまた違った趣がある」
「は。何匹斬っても罪にはなりませぬ」
将軍はもう一度、後ろを振り返り、もたもたする家来たちに「早くいけ!」と檄を飛ばすと、刀を構え直した。
「ゆくぞ、佐々木!」
「はっ! どこまでもお供いたします!」
二人はともに死人の群れへ突っ込んでゆく。次々に首をはね、血の花を咲かせていった。
将軍の腕は龍胆に引けを取らない。誰に教えられたのかは不明だが、隣で戦う白木蓮を追い越し、あっという間に先へゆく。
(この方は、将軍の器に収まる方ではないな)
もし世継ぎとして生まれていなければ、下手をすれば龍胆と同じく人斬りになっていたやもしれない。
高揚した頬、すがすがしい汗、絶えず唇を彩る獰猛な笑み――・・・。それらは明らかにこの状況を楽しんでいる。
あやかしを斬るのが楽しくて仕方ない。そう全身が物語っている。
――おもしろい。
白木蓮は笑う。この男の顔を龍胆に見せてやりたかった。きっと、三人、よい友になれるだろう。
そんなことを思いながら、白木蓮は付かず離れず将軍の背について行った。




