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枯れ花に口づける鬼  作者: 夢咲 紅玲朱
屍食鬼編

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19/58

おびき出される鬼


雪が囚われている屋敷。それを山奥から眼光鋭く見つめながら、龍胆は昔を思い出していた。


『ゆき、龍胆ちゃんのお嫁さんになるんだから』


かわいい雪の声が脳裏にこだまする。


――もう、潮時が来ているのかもしれない。


開け放たれた障子によりかかる男と目があった・・・気がした。


白木蓮はにやりと笑う。


(あの男の、俺への執着は尋常じゃないな)


龍胆は編笠を脱ぐ。後ろでくくった長髪を風に遊ばせ、気配を隠さず見つめる。


「ぎゃあっ!?」


ふと、叫び声がした。


振り向けば、階級は下なのだろう。素人丸出しの隊士が荷物を地面に散らばらせ、尻餅をついていた。


龍胆は月光を背に、白髪をなびかせ、獰猛にらんらんと光る青い瞳をしていた。


「で、でたっ!! 鬼だ、鬼が出た―っ!!」


そう言って、山道を転がり落ちるように逃げていく。


「・・・落ちたものだな、討伐隊も」


龍胆は興味をなくし、視線をふたたび白木蓮へと移した。


すると、屋敷では動きがあった。


大木に雪を縛り付けているではないか。


「雪っ!」


龍胆は叫ぶ。


それから、大きな樽のようなものをゴロゴロと雪の眼の前へ押してくる。

屍食鬼だから中身が手に取るようにわかる。


御様御用おためしごようの死体を持ってきたのか!?」


首のない死体。つまり、死罪になった罪人の死体だ。

おもに刀の試し切りに使われるのだが。


刹那、白木蓮の怒声が飛んできた。


「そこにいるのはわかっているぞ、屍食鬼!!」

「チッ」


龍胆は舌打ちする。何をしようとしているのか、あっさりと想像できた。


(雪と死体を餌に、俺達を誘い出すつもりか)


白木蓮は更に続ける。刀を抜き、ギラリと鈍く光るそれを雪の首へ添えた。


「出てこないのなら、この娘の命はないぞ。鬼ども。さあ、かかってこい!!」



雪は呆然としている。寒風の中さらされ続けて頭はくらくらする。なにより龍胆に迷惑をかけている。おずおずと困ったように、こちらの山を見上げていた。


龍胆は深く息を吐いた。やがて、足元へやってきた子ども――菫に「どうする?」と試すようにいう。


菫は「ぼくが従うのは雪お姉ちゃんだけですよ」と言う。可愛らしい、つぶらな、黒眼だ。


「雪お姉ちゃんは僕の最初の飼い主に似ているんです。今のぼくにとって、雪お姉ちゃんは命そのもの。・・・それを、また人の手で失うようなら」


――あの場にいる全員、まとめて喰い殺す!!


刹那、火車のそれを思わせる真っ青な色へと、瞳が変貌した。


青い炎がばっと燃え、巨大な黒猫が出現する。


「俺も乗せていってくれるかい?」


龍胆は苦笑いして訪ねたが、シャーッ!!と牙をむかれ、辞退した。勢いもそのままに、雪のもとへとまっしぐらに山をかけ降りていく。


「雪・・・、いったいどんな教育をしたんだ」


龍胆はため息を付くと、瞬間、姿を消した。




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