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異界教室 -クラス転移したけど俺だけ追放-  作者: きなこと餅
第二章 『異端収容所編』
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第十三話 「初めての朝と食事」

奎が起きて数分後鉄の扉の音が響いた。


「おい、異端者共餌の時間だ。」


看守の役割を担っているであろう兵士がぶっきらぼうに言い放ち鉄格子の小窓から食事が投げ入れられる。奎とシダルタの足元に転がったのは二人分のカビが生えたパンのようなものと水だった。


「初めての食事がこれかよ…」


異世界での最初の食事。

幻想的な料理を期待していたわけではないがそれにしたってこれは酷過ぎた。

奎が呟くとシダルタが返す


「初っ端から気を落とすなよ相棒。今日はスープあるだけマシだ。」


そう言ってシダルタが指差すのは水だった。


「えっ!これスープなの!?」


奎が驚く。

どれだけ見てもスープ?は少し濁った透明で、薄い泥水のようにしか見えなかった。匂いを嗅いでみても無臭だ。


「スープ…そう思った方が良くねぇか?パンにつけて食べようぜ。」


そう言ってシダルタはカビの生えたパンをスープ?に付けて食べ始めた。

しかしパンを咀嚼した瞬間になる音は、


ゴリっ!バリっ!


だった。


「な、なあシダルタさん、パンから鳴る音じゃなくない?」


奎が聞くとシダルタは噛み途中だったパンを一気に噛み切り飲み込むと答える


「相棒。ここのパンにパン屋のような品質を求めちゃいけねぇぜ。ここのパンは防御力が高すぎる…あとさん付けじゃなくていいぞ?シダルタって呼べよ相棒!」


そう言ってシダルタは水を飲み干し奎が食べ始める前に朝食を終えた。


「お、おう。シダルタ。じゃあ、食うわ。」


奎がため息を吐きつつ、仕方なくパンをスープ?に付けてから口に運んだ。

ーー硬い。


噛み締めるたびに頭が痛くなるほどの硬さ。

スープ?につけたが水分はパンの内部まで行き通っておらず表面を濡らしているだけだった。

やっとのことでパンを噛み切るが鳴る音は食べ物が立てる音ではなかった。


バリィッ!!ゴリィッ!


歯がすり減る感覚がしたが、なんとか奎はパンを飲み込みスープ?を飲み干し異世界最初の朝食を終えた。


「(みんな今何してんだろうな…もしかして俺と同じようにここに捕まってるとか…)」


奎が一点を黄昏ながら物思いに耽っているとシダルタが話しかけてくる。


「相棒、何でこんなとこに来ちまったんだ?」


「……」


奎は転移前に見た小説を思い出す。

異世界転移で異世界から来たことを明かすのは、リスクが高いことを。

そのため奎は慎重に事実を抜き取り理由を作り言った。


「あの、判術石を割ってしまって…それで。」


瞬間、シダルタが吹き出した。


「ははっ!相棒、マジか!?判術石割るやつとかほんとにいるんだな!!」


腹を抱えて笑うシダルタに奎は不機嫌そうにパン屑を投げつけた。


「笑い事じゃねぇよ…」


「いやいや最高だわ。判術石割るような極悪人がいるとはアスフェリアも落ちたもんだな。」


ようやく笑いを収めるとシダルタは今度は自分の話を始めた。


「俺はな、ナフタリから来た。アスフェリアの治安見に来て国境越えた瞬間、即御用ってわけだ」


「ナフタリ?」


「何だ相棒ナフタリ知らねぇのか?とんだ世間知らずだな。」


「俺、なんかこの世界についての記憶が抜け落ちちまったみたいで、何も知らないんだよ…」


奎はこう言ったが嘘である。だがこの嘘によってシダルタから異世界の情報を得られるかもしれない。そう思った。


「なるほどね。そういうことか相棒。なら仕方ねぇなまずナフタリ知らねぇなら四大国も知らねぇよな?」


「知らないな。」


奎がそう言うとシダルタは空中でジェスチャーをしながら解説し始めた。


「まずな?四大国ってのは世界を四つに分けた結果出来た四つのデカい国のことだ。まずここは東のアスフェリア。そして俺が来た南のナフタリ。西がエルデンローザ。北がグリムヴァルトだ。その中でも最も治安も秩序も最悪なのがアスフェリアだ!」


そう言ってシダルタは目をかっぴらいた。


「アスフェリアってそんな最悪なの?謁見室は綺麗だったぞ?」


「王都は綺麗だろうな。だが王都より外に出てみれば治安は最悪。それでたまたま治安改善に動いてた兵士たちに捕まった運の悪い奴が、俺たちだ。」


そう言ってシダルタは胸を張った。

だが奎は一つ疑問が浮かんだ。俺。ではなく俺たち。複数形なのだ。


「俺たち?って仲間も一緒に捕まったのか?」


するとシダルタは少しバツが悪そうに包帯の頭の部分をポリポリ掻きながら言う


「まあ…な。妹と一緒に捕まったんだわ。アウロナってんだけど俺がどんだけこの異端収容所内を探しても見つからねぇんだわ。」


そう言ってシダルタは分かりやすく肩を落とした。

シダルタが黙ってしまったので気まずくなった奎はさらに質問を投げかけようとしたがーー


「異端者ども!作業の時間だ!」


突然、牢屋の外から号令が響いた。


看守たちが鐘を鳴らしながら歩いて来る。

シダルタが軽く伸びをすると、奎に向かってニヤリと笑った。


「さてと、初日から根上げんなよ?相棒。話の続きはその後だ。」

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