第十二話 「新たな出会い」
奎は兵士に運ばれて謁見室を出るとすぐに目隠しをつけられる。
「(なんで!クソ!誰か助けてくれよ!西園寺先生…!!)」
「ーーー!!ーーー!、ーーーー!!」
猿轡を付けられているため奎が何を叫ぼうと何も響かない。だが兵士たちは奎の様子に若干苛立ったようで
奎は腹を殴りつけられる。
「黙れ異端め!」
「ーー!!!!!」
あまりの痛みに叫ぼうとした。だがそれは声にならない叫びに変換された。
すると兵士の一人が何かを持ってくる。
手に持つのは草だった。
奎は見えないので何も分からないが兵士は草を柱にある松明に当てて燃やすとその草からでた煙を奎にかがせる。
するとーー
「(何だ…これ。途端に眠く……)」
奎は意識を失った。
兵士は奎の意識がないことを確認すると急いでそこから奎を運び出した…
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「ん…ん。!」
目覚めた。
横たわる床はおそらく石でできており冷たさと若干の痛みを感じる。柱には一本の松明が立てかけられている。そして石でできた天井…
「戻ったのか!?」
奎が飛び起きて周りを確認する。
奎は転移直後のあの地下室に戻ったと思った。だがそれは次に視界に映るものによって否定される。
それは、鉄格子のようなもの。
「は…?どこだよここ。」
奎がそう呟くと隣から声が聞こえる。
飄々とした男の声だ。
「おう相棒、ここは悪人を捕まえておくとこだよ。」
奎が声に気付き隣を見る
「だ、誰…ってうわッ!!」
寝転がり奎の方を見ていたのは顔が包帯でぐるぐる巻きにされた男だった。見えるのは焦茶の目だけ。
すると包帯男が奎の方に寄ってくる
「そこまで驚かれると相手が相棒でも傷ついちまうぜ。まあ人には事情ってやつがあんだよ。」
「えっ!おい!近づくなー!ていうか相棒って何?」
「ん?俺たち同じ牢屋に入れられた仲間じゃねぇか。だから、相棒。仲良くしようぜ?」
包帯男の発言により奎は思い出す。自分が判術石に触れ、そして割れ、そして拘束されたことを。
「え…じゃ、じゃあここってモルグリムさんが言ってた…異端収容所?」
「まあそうだな。俺たち異端者をイジメる酷いとこだぜ……あっ!相棒名前なんて言うんだ?俺の名前はシダルタ。姓はねぇ。」
シダルタが意気揚々と自己紹介をしてくる。
それに奎も返す
「お、俺は、神代奎。好きなものはラーメン。よろしく!」
奎は入学式の時に練習した自己紹介がそのまま出てしまう。ラーメンなんて異世界にはないかもしれないのに…
「らーめん?まあいいか。ケイね。カミヨケイ。珍しい名前だな相棒。」
「結局相棒なら名前聞いた意味ある?」
「だははは!まあいいじゃねぇか!今日から相棒はここでのキツい生活を強いられる。だが大丈夫だ!」
シダルタは立ち上がると腕の筋肉を隆起させて言う
「俺がいるからな!!」
キメ顔をしているのかもしれないが包帯で見えない。
「…よろしくな。(こんなヤベェやつと同部屋かよ…)」
神代奎のシダルタとの異端収容所生活が幕を開ける…