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1話


 「ぶふぅー、ぶふぅーっ!」


 「ふぅー···」


 ここら一帯で捕食者として君臨していた大蛙──名称【戦河童】は、たかだか腕サイズの人間に傷を負わされたことが気に食わなかったのか、荒い息を吐く。捕食者としてのプライドがあったのだろう。緑色の体表を真っ赤に染め上げ怒りを露にする。

 男は反対に、冷静に、両手に持つ野太い大刀を握り直し呼吸を正す。この男に誇りも矜持もない。あるのは目の前の獲物を狩ることだけ。そのために、冷静になる。

 

 「ゲェロォォォォォ!!」

 

 先制攻撃を仕掛けるのは【戦河童】。空飛ぶ竜をも捕まえる舌を、男に向かって突き出した。

 勘のいい獣型モンスターがギリギリで躱せるレベルの速さ。耐久に秀でた頑丈なモンスターを貫けるレベル。

 上等な武具を持ったところで、身体能力がモンスターより格段にも劣る人間に、対抗する術はない。

 

 「甘ぇ!」


 男は舌が当たる場所を予想し、地面に大刀を突き立てる。

 【戦河童】は男の行動が予想外かつ本能が危険だと告げるが飛ばした舌はもう戻せない。ズバーッ、という音とともに勢いよく舌が裂けた。

 僅かでもズレていたら胴体にポッカリ穴が空いていた。無謀とも取れる行為を危なげなくやってのけた。


 「ぐぇ、げぇぇぇぇ──!!」


 「終わりだ」


 痛みで悶絶する【戦河童】を、無防備な腹から順に切り裂いた。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 俺はハルク・レイライン。村を襲うモンスター退治を生業とする転生者である。五歳の時に両親をモンスターで喪くし、自分がサラリーマンで交通事故で死んだことを同時に思い出した。

 この世界はモンスターが本当に強い。一体一体が馬鹿デカイし素早いしなんか特殊能力持ってるし。聞いたところによると、モンスター討伐には冒険者総出、あるいは騎士団総出で挑むものだとか。ヤバすぎる。被害を出さないよう王国や領地に魔除けの道具を使うらしい。嫌いな植物があるんだって。作られる量には当然限りがあって、自生している村はいいんだけど、してない村は毎日が命懸け。視察に行った村がすでに滅んでたってのはザルみたい。この村には自生してない。なので、俺がモンスターと戦っている。

 渡り合える俺が特殊······でもなくて、中には一人で挑める強者がいるとのことだが、ソイツらも転生者なのだろうか?転生者はスペックが高いのは、物語でありがちだよね。

 まあいいや。子供の時襲われたが、モンスターに見付からなかったことは不幸中の幸いだった。んで、近くの農村で暮らす爺さんに引き取られ、今に至る。


 「爺さん、終わったぞー」


 「おう。死体はどうした」


 俺は古きよき木造建築の暖簾を潜る。正式名称は忘れたが、武家屋敷の縮小版みたいな、江戸時代っぽいこの家は結構好き。

 中では囲炉裏で鍋料理を作っている爺さんがいる。二人暮らしだ。


 「適当に剥いで村の連中に渡した。あと、蛙の腹に臭ぇ毒肝があったから、それを森周辺にぶちまけた。ここ一年はしばらくモンスターは来ないだろうよ」


 「そうか、それなら大丈夫だな。着替えてこい。飯にするぞ」


 爺さんに言われ、家の隣にある倉に移動する。長い間使われてなかった倉を、今は俺の部屋として使っている。中には狩猟用の道具が散らばっている。この村にはジジババしかいないので、若者が好む娯楽用品は置いてない。

 着ている衣服を脱ぎ捨てる。汗と血でまみれてるので洗わなくちゃいけない。めんどくさい。はぁーっ、と溜め息吐いた。濡らした手拭いでささっと体を拭いて家に戻った。

 鍋のいい匂いが、改めて食欲を煽る。椀に入れられた料理を一心に、口の中にかきこんだ。

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