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幼馴染は息をしない  作者: Sin権限坂昇神
11/13

第十一峠 破滅に恋する女の子

 絶望から始まる恋もある ――頭乃峠爪限無-かしらのとうげつめかぎりなし-(胴体)

 この上ないものは必ず存在する。アタシにはなれない、勝てる気がしないもの……。


「なでじー……ま――?」


 偶然だった。風邪(かぜ)で休んでいたけど、父に「撫島(なでじま)くんが宿題を持ってきてくれるそうだ」と言ったことで、居ても立ってもいられず家を飛び出した。ずっと家で寝るのが嫌だったのもあるけど、少しでも撫島と遊びたかった気持ちが大きかった。それからマスクをしてパジャマ姿のまま家を飛び出し、10メートル先にある河川敷に入った所で撫島を発見し、喜び勇んで呼びかけようしとして――止めた。


「……」

「……」


 撫島との距離はおおよそ50メートル。目がいいアタシは撫島が河川敷の草むらに腰を下ろす撫島と隣にもう一人、背が同じくらいの誰かがいた。二人は仲良く何かを話していた。別に撫島が同世代の子供と話すのは何度も見てきたし、なんとも思わなかった。

 でもこの時だけは違った。小さくて細い何かがアタシの体の至る所をチクチクと刺すような感覚に襲われた。時々ぶるっと体が(ふる)えるくらいに痛い針に刺されて、これ以上刺さると死んでしまうと思った私の足が感情を置いて、後ろに振り向いて静かに駆け出した。あのままあそこにいればアタシはどうなっていただろう。そんなことを何度も思いながら家路に就いた。


 あれから体がバラバラになって、胴体(どうたい)だけになったアタシは(しばら)くして(さと)った。それは【破滅(はめつ)】の信号であり、アレを感じた瞬間から、アタシにはあの子に何もかも叶わないのだと思い知らされた。






「破滅……いい言葉よね?」


 昼時の暑い太陽が地上を照らす頃、撫島の家の二階の窓の外で相対する二人の目はギラついていた。胴体(どうたい)が人間でそれ以外が機械の少女は不敵な笑みを浮かべて、左足が人間でそれ以外が死体の少女を()め回すように見ながら続けた。二人とも元は同じ人間の体の一部。


「勝てないものを見ると、周りのもの全てをぶっ壊したくなる気持ち……あなたに分かる?」

「……意味が解らない」


 左足少女は怪訝(けげん)な顔を浮かべて(つぶや)いた。父の命令である『胴体の行動を逐一(ちくいち)報告(ほうこく)しなくてはいけない』ことを思い出した左足少女は忍ばせておいた尻ポケットに手をかけ――、


「まだダメ……」

「!?」


 手がこれ以上動けない。とんでもない力を使っているわけでもないのに、いつの間にか背後に回り込んだ胴体少女は一瞬にして左足少女から無線機を奪うと指で軽くグチャリと壊した。この間速すぎて左足少女は終始棒立ちのまま動けず、いやこれ以上動けば命はない、というほどの圧が胴体少女から伝わってきた。左足少女がただじっと睨みつけるだけで動かないことを確認すると、胴体少女はにっこりと目と口で笑って言った。


「あ・り・が・と♡ お礼に聞かせてあげる」

「な、何を――」


 そっと、胴体少女はこれ以上話せないように左足少女の(くちびる)に人差し指を強めに押しとどめて続けた。


「アタシのも・く・て・き。――だから、ここでじっとしてて? 開けちゃだめよ?」


 胴体少女はそう言って、二階の窓を静かに開け広げ、優雅(ゆうが)に中に入っていった。まだ左足少女が撫島に色々してそれほど経っていない。つまりまだあそこには眠らせた撫島もいるし、撫島を心配して魂の自分が……、


「……っ!」


 一体何を考えている胴体のアタシ。元は同じ自分の肉体のはずなのに……何もかも理解できない。九年間一緒にいて、たったの五年で胴体に何が起こったというのか。でもそれ以上に……、


(お前の目的って……何――?)


 こっちを知りたい気持ちが何よりも大きかった。






 一方その頃、撫島家の中では撫島(なでじま)(たか)(あき)の部屋の前で隆明本人と隆明の家庭教師が倒れていた。その二人を起こそうとして何故か倒してしまった幼馴染(魂だけ本人で体がプラモデル)の頭乃峠(かしらのとうげ)は、自分の取扱説明書を(めく)りながら、自分に傷を治す方法がないか必死に探していた。だが本はとてつもなく分厚いため、未だに全ページを記憶できず、今の所傷を治す項目は見たことがない。焦るアタシ。


「あーもう! 何でやりすぎるかな~アタシ! えっとこれじゃなくて……これでもない――どこにあんのー! こんだけあるんだから絶対治す方法あるはず……!」


 と、プラモデルになった自分にできることを必死に探している峠は、救急車を呼ぶことを忘れて只管(ひたすら)にページを(めく)っては指で文章をなぞって読み続けていた。


(あーあ、やっぱりこうなった)


 そんな峠を傍観(ぼうかん)しながら、ゆったりした足取りで二階の窓から歩いていく人影が一つ。隆明と家庭教師の(ばん)()(りよ)(いま)だに壁や床に激突した部位を(おさ)え苦しんでいる。このまま救急車を呼ぶなり病院に連れて行かせず放置すれば傷は悪化するだろう……。一刻も早く二人を運ばなければならない状況の中で

魂の(アタシ)は役に立たない。

――役立たずは放っておいて……、私の仕事をしましょうか……。人影は目を細めてそう思って、そーっと横たわる隆明の肩に手を置いて、唱えるように呟いた。


『起きて、私だけの撫島。誰にも振り向かないで、ただ私だけを……』

「ん……何で体が……?」


 さっきまで苦しんでいた隆明は、人影が触れ何かを唱えた瞬間に痛みが一気にどこかへ吹き飛んだ。隆明は驚きながら目を開き切る前に――、


『見て……』


 人影……(もとい)、機械の体の胴体峠の唇は導かれるように隆明の唇に吸い込まれた。じっと本を読んでいたプラモデル峠はというと、ふと誰かの気配を察して視線をずらして――、キスの瞬間を目撃した。


「……ん!?」


 撫島隆明は今までの人生で最大の絶叫が出た。が、口が完全に(ふさ)がれくぐもった声で留まり、手を動かそうとしてもがっちりと相手の指ががっちり(から)んで簡単に抑え込まれた。機械の手足の前では人間は無力であった。こうして撫島隆明の初めてのキスは奪われたのだった。


「な、に、してんだ―お前―!!!」


 当然、魂峠は怒りを沸騰(ふっとう)させるが、胴体峠はまるで見せつけるかのように隆明の唇に張り付いて魂峠を()め回すようにキスを続けていた。

胴体でその他が機械の頭乃峠、

魂でその他がプラモデルの頭乃峠、

左足でその他が死体の頭乃峠、

左腕でその他が獣の頭乃、

右足でその他が○○の頭乃峠、

右手でその他が○○の頭乃峠、

頭部でその他が○○の頭乃峠、


と、これをいちいち書くの大変なので色々悪戦苦闘中です。以後見分けがつくように精進するぞー。時間がかかってしまいましたが、許してくださいまし。現在進行形で考えてます。整理がつくまで時間がかかるのでね……言葉としてアウトプットするのはやっぱり語彙力の量が物をいうので、色々本を読みながら収集を続けないと……。というわけでまた次回。早くできたら早く書きます。


あ、絵も少しずつ進めなくては……元絵はあるけど、分裂した後の絵がまだなんだよな……。

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