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代償  作者: 月明かり 桜月
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4. 命を手に入れて、自由を失った。自由を失って、命を手に入れた。

誤字があればすぐに修正します。

赤野あかの 唯奈ゆいな - - -



 朝、目をあけたら、苦手なベットの上で横たわっていた。ベットにはいい思い出がないから、あまり好きではない。隣のベットでは、兄が寝ている。昨日兄だと知ったから、あまり実感がわかない。昨日の夜、、、いや、今日の夜か。兄が、生まれてから今に至るまで、全て嘘をつかずに話してくれた。


「兄さん、起きてるでしょ?」

「ばれてたか。」

「さっきから寝息が不自然だったからね。」


 兄さんが話してくれたんだ。私も話さないといけない。

あと、


「兄さん、私、夜起きてたよ。話もちゃんと聞いてた。」

「あぁ、起きてたのか。」


 私が体を起こした後、兄さんも体を起こした。

 それから10秒くらい間を置いて言った。


「、、、私はね、小学生の時から病気だったんだ。お母さんは、何の病気かは教えてくれなかった。『あなたは病気なの。』それだけ。何の病気かは知らないから、余計不安だったんだけどね。治るかどうかも、私には教えてくれなかった。『大丈夫、私が必ず治してあげる。』いつもそう言ってくれてたんだ。でも、お母さんは嘘をつかなかった。本当にお母さんのおかげで、病気が治ったんだ。なんでだと思う?」

「え、、、?母さんが医者になった?」

「まさか。いくらあのお母さんでも、医者になるのは難しいよ。ヒント、『お母さんのおかげで』。」

「、、、、、、わからん。正解は?」

「お母さんがドナーになったから。お母さんのどこかの臓器が、私の体の中にある。お母さんはひどいよ。未熟な命を助けるために、立派な命を自ら捨てにいったんだから。私に、『ありがとう』すら言わせてくれないんだから。」

「、、、嘘はつかないでくれよ。」


 目を瞑ってそう言う兄さんの横顔は、なぜかとても綺麗だった。


「嘘なんかつかないよ。お母さんが、兄さんに言った言葉を、私にも言ったんだから。『誰も嘘と証明できない嘘をつきなさい』って。証明できるから、嘘は1ミリも塗ってない。今はできないけど。でも私、それが真実ってわかんないんだよね。お母さんの日記に書いてあっただけ。」

「、、、母さんが、臓器提供をできる状態になった経緯とかも?」


 次は私に目を向けながら言ってくれた。


「うん。自分で計画を練ってた。どうやって脳死できるか。臓器が提供できなくなるかもしれないのに、可能性だけで実行したみたい。」

「その日記はどうしたんだ?」

「日記の最後に、『唯奈、見ているなら、このノートと、私と過ごした日の記憶を捨ててくれ』ってね。日記は捨てたけど、記憶は一切捨ててない。それと、私を一人にしないために再婚のことも考えてくれてた。その再婚相手は、クズみたいな人だったけど。」

「母さんはすごいけど、男運はないよな。」


 兄さんは苦笑いしなが言う。


「うん、本当に、、、。その再婚相手が、お店を建てているんだ。評判がいいからやけに忙しくて。体が動かせるようになってから、そのお店で無理矢理働かされたんだ。ちょうど一年くらい前からかな。学校にも、ちゃんと行けるようになって、真剣に勉強して。兄さんみたいに、友達はいないけど。まぁ、学校が終わったら、お店に戻らないと怒られちゃうから、友達ができないのは無理もないよね。でも酷いよ。今まで全然行けなかった学校も、まともに楽しませてくれないんだから。」

「今は夏休みなんだっけ。」

「そうだよ。皆、計画を立てていて、楽しそうだったよ。一日のスケジュール、遊びに行く場所、宿題。私の仕事に休みなんて無いのに。給料もほとんど出ないから、やりがいすら無い。」


 無意識に出た暗い声を、聴いていなかったように、兄は口を開いた。


「じゃあ、」

「?」

「これからもいっぱい、友達できるな。」

「そんなことができたら、どれだけ嬉しいか、、、。それに『これから』って、まだ一人も友達できてないのに、、、。」

「は?8人いるじゃん。いや、正確に言えば7人か?まぁ、ひのが見つけてくれる限り、これからもできるよ、友達。」

「ここのチームメンバーを、友達に入れていいの?」

「いいに決まってるだろ。逆に友達じゃなかったら、どうやってチームになるんだよ。それに、学校でもたくさん作れるさ。」


 ため息をつく。


「たとえ友達がいても、それだけだよ、私の人生は。兄さんと比べたら、全然苦労してない。」

「、、、お前は、自分の人生をどう思ってる?」


 何を聞いてくるかと思えば、


「死にたくなるくらい辛くて、苦しかった。そう思ってる。」

「俺も同じだ。人生っていうのはな、誰の人生とも比べられないんだ。ここにいるやつは、一人一人苦労してる。皆、苦労のしかたは違うけど、皆、自分の人生を良い方向に変えようとしている。目的は一緒なんだ。」


 また ため息をつく。


「私の周りには、すごい人が多すぎるよ。」

「ハハハ。」


 兄さんが立ち上がった。


「行こうぜ。そろそろ皆起きてくる。」


 時計を見ると、7時半を示していた。


「皆早起きだね。」

「健康第一の生活だからな。」


 私も立ち上がり、部屋を出る兄さんについて行った。


「あと、唯奈。」

「何?」


 兄さんがドアノブに手を置いたのと同時に、私に顔を向けて言った。


「真夏に長袖と長ズボンって、俺から見れば、何かを隠してるように見えるんだが、あってるか?」


 まさか、そんなところを当てに来るとは予想外だった。


「大正解。兄さんなら、隠してるもの、わかるでしょ?」

「簡単すぎて あくびが出てくるよ。」

「起きたばっかりなのに?」

「あぁ、実を言うと、マジで眠いんだ。あと、しばらくは、兄妹のこと隠してくれ。」

「、、、ドッキリ?」

「そうだ。お前の生まれた日に、決行だ。」

「了解。」

前書きや後書きに書くことがなくていつも困っています(笑)

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