神代
世界は初め灰色の泥だった。
やがて泥は沈み、天が生まれた。
それから更に長い時をかけて海と陸とが生まれた。
その頃地上は泥濘みばかりがあるだけだった。
始めに海から神が産まれた。
次に泥からは巨人が生まれた。
神々は暫く海の中で暮らした後に陸へと上がった。
それは神々と巨人達との争いを生んだ。
永き争いが続き泥濘みばかりの大地が踏み締められると、やがて乾いた土が姿を見せ始めた。
泥濘みが減ると巨人はその勢力を減らし、代わりに土塊から人間が産まれた。
人間が争いに加わると程なくして、巨人達と契約を結んだ。数で劣る巨人と力で劣る人間が手を組むこととなった。
人間は脆く短命であったが子を成す事に長けていた。
人間は瞬く間に地上のあらゆる場所へ広がっていった。
ある時人間は大きな山の頂きで火を見つけた。
乾いた土より産まれた人間には火を扱う事ができた。
火を手に入れた人間の躍進は目覚しいものがあった。
遂には神を地上から放逐し、更に勢いを増した人間の軍勢は巨人たちへと矛を向けた。
争いという程のものさえ起こらなかった。
数に勝り火から生み出した道具を使う人間たちにとって最早巨人はものの数では無かったのだ。
全ての敵を退け、地上の王となった人間は長い繁栄の歴史を踏み出した。
しかし、それは呪われた歴史の始まりでもあった。
地上を平らげて後、人間はまず海に面した所に砦を建てた。
これは神々を監視する為である。
次に人間は火の山の峰に宮を建てた。
これは彼らが火を神聖なものとし、聖なる山の火が絶えぬ限り人間の世が続くと信じたからである。
そして人間は巨人を恐れた。
戦いの後姿を見せぬ巨人らに、いつ寝首をかかれるかと震えたのである。
人間たちが眠らず火を灯し続けるのはこの為である。