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夏休み 『ご褒美』

「ちょっと、もっと丁寧に」

「そ、そんなこと言われても……」


 広げられたパラソルの下では、寝そべったアキラちゃんに信二がサンオイルを塗っていた。


 大胆に見せつけられた背中はきれいで、コメさんも歓声を上げたほどだ。


 なぜ信二がこんな羨ましいことをしているかというと、例の行方不明が関係している。


 信二はあのとき、在庫室でカプセルのマジックアイテムに気づいたが、背後に迫っていた岡村に襲われ、閉じ込められてしまった。


 大きな怪我はなかったものの、ボランティア部の面々はひどく心配していた。信二はそのことに罪悪感を感じ「なんでも言うこと一個聞きますよ!」と安請け合いをした。


 その結果、コメさんの缶ジュースやいづみちゃんの肩もみ。ムギさんの部屋の掃除から衛の筋トレ補助まで色々聞いていた。


 しかし、アキラちゃんからは今日までなにもなかった。


 女性陣の水着披露が終わるまでは。


「サンオイル塗ってくんない? 言うこと聞くんでしょ?」


 その瞬間、いつもお調子者の信二はドギマギし、僕ら三人はありったけの嫉妬と殺意を向けた。


 だが、いざその様子を目にすると殺意も薄まっていった。


 頭の上ではレオーネが口を開けて噛みつく準備をしており、ヨイチの刀が常に股間に突き付けられていた。

 ついでに背後では、バンバが指をバキバキと鳴らしている。


「あ、あのぅ……これは?」

「おっと手が……なんてことが起きたときの予防」

「申し訳ないでござる、信二殿。不要な膨張を確認したら、遠慮なくいけという命令でして。痛みは感じさせず、素早くやるでござる」


 レオーネもニヤリと笑い、遠慮なく噛みつく気満々だった。


「ウキッ!」


 バンバもニカッと笑い、きっと手加減なく殴る気満々だ。


「え、い、いや、その……あ、あははは。おい、晴人。お前代わりに」

「海だー!」


 ということで、信二とアキラちゃん以外のメンツは一足先に海を楽しんでいたのだ。


「ふぅ、ちょっと休憩」


 砂浜に上がると、入れ違いにアキラちゃんと信二たちが波間にやってきた。


「終わった?」

「うん。こいつ手際悪くて、手つきがなんとなくいやらしかったけど、及第点」

「あははは」


 乾いた笑いを浮かべる僕に、アキラちゃんはペットボトルを渡してくれた。


「はい。水分補給もしっかりね」

「ありがとう」


 どこから見ても非の打ち所がない美女だ。


 改めて考えると、やっぱり信二に嫉妬心が湧いてきた。


「よう。やっぱりご褒美だったんじゃないのか?」


 アキラちゃんとヨイチ、レオーネとバンバが海に入ると、僕はげっそりとしている信二に声をかけた。


「んなわけあるか。そりゃあ、目の前にはご褒美みたいなもんが広がってたよ? でも、生理現象ひとつで死ぬんだぞ? 胸のドキドキがどっちなのかわからなかったわ!」


 信二は「キィー!」と声を上げると、海へと潜っていった。


 僕は砂に腰掛け、アキラちゃんがくれたジュースに目をやった。

 それは、以前ひかりちゃんといっしょに飲んだものだった。


「……おい、アメ」


 声と共に、頭上に偽物の夜空が広がり、星の目が僕を見下ろした。


(なんだ? 礼ならいいぞ。こっちも眼福なものを楽しんどるからな。あの小僧は脅されてたが、儂はなんの縛りもなく見られたしな。いやぁ、四人ともなかなかに大胆な水着を)

「聞きたいことがある」


 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべるアメに、僕は真剣な声を発した。


「お前、ひかりちゃんのことでなにか隠してるだろう」


 僕はジュースを一口飲んだ。

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