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夢 『目覚めて、今』

 最悪の気持ちで目を覚ますと、まだ見慣れない天井が広がっていた。


 悪夢を見ていたらしい。寝汗がひどい。


 時計を見ると、もう正午を回っていた。


 どうりで部屋が明るいと思った。とりあえず水を飲んで、テレビを点けた。お昼のバラエティー番組が、行ったこともない都会のグルメを紹介している。

 自分には関係のないことだと思いながらも、視覚から食欲を刺激され、冷凍しておいたカレーを食べることにした。


 それにしても、ひどい夢だった。


 はっきりと内容を覚えている。

 当たり前だ、すべて僕が実際に体験したことなのだから。


 どれも、僕がアメのことを隠す原因になった出来事だ。


 こんな夢を見たのは、きっと先日の金髪豚野郎のことが原因だろう。

 みんなに嘘をついたままなことが、どうしても罪悪感として積み重なっている。


 過去の三つの経験から、僕はそれぞれ教訓を得た。


 小学生のときの事件から、アメの力をみだりに人に見せてはいけないのだと知った。

 だから、訓練してフォトンボールとしてアメの力を部分的に扱えるようになったし、アメにはなるべく僕の傍にはいないようにしてもらった。


 中学の事件からはアメの力の強さを知った。

 アメの力を目の当たりにするのは、あれが初めてだった。だから、二度とあんなことが起きないように、フォトンボールの訓練をさらに積んだ。

 また、あの一件は僕の感情の高ぶりにアメが反応したことが原因だった。だから、小学校以来距離を空けていたアメとの関係を修復しようと努めた。お互いにちゃんと向き合えば、暴走することもないだろうと思った。


 そして、高校での事件ではアメの恐ろしさを知った。

 あの男たちにアメがなにをしたのかは、はっきりとはわからない。でも、とんでもないことをしたのは事実だろう。しかし、僕が最も恐ろしいと感じたのは、アメの力よりも存在そのものだった。


 アメを手に入れるために、犯罪も厭わない人間がいる。

 アメという使い魔は、僕のような平凡な人間の手に余るほど巨大で、強大だ。


 でも、どんなに強くても、アメは僕にとって唯一の使い魔だ。


 この事実は変わらないし、冴えない僕の最大の誇りでもある。


 だから大学に入るまでにさらに力をつけ、信頼関係を深めた。

 どんな困難も乗り越え、打ち勝つために。


 まぁ、そんなことを言いながら初日から襲われてしまったけど、かけがえのない仲間を得ることができた。

 これは、今までの僕にはなかった大きな進歩だと思う。


 カレーを食べ終わる頃、やっと悪夢の残り香を消すことができた。


 また気分が落ち込まないよう、空気を入れ替えることにした。

 窓を開けると、気持ちのいい風が、カーテンを軽やかに持ち上げた。


 暖かい空を見上げてふと、アメは今どこにいるのだろうと思った。

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