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勇者タカユキと悪魔の薬~異世界パンツ英雄譚2~  作者: 月見七春
第八章 今日から僕らの共和国
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第六十九話

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 街と港を挟んだ道の途中、右手にある山が合戦で率いる俺の軍の本拠地だった。

 その向こう側、切り立った山の滝の前にある砦こそクロリア率いる軍の本拠地である。

 馬で駆けてだいたい十数分。間にあるアスレチックコースの建設は大変だったんだが……ともあれ。


『さあさあ、実況にまいりましょう! そろそろ合戦がはじまりますよー。実況はわたくし、今日はあくまで司会のコハナと』

『天使で小生意気、天界から実況に来ましたコルリと』

『……魔王だ』

『以上の三名でお届けしまぁす』


 だ、大丈夫なのか? もっと他に人選があったのでは?

 はらはらしながら空を見上げる。共和国に来た魔法使い達による映像投写の呪文だ。

 コハナたち三人が笑顔で手を振っている。魔王も笑うんですね、とか突っ込んだら負けなんだろうなあ。


『さて、本日の合戦はお祭りの中でも目玉の行事です★ 魔界から来たネズミ親分を元締めとする、どっちの軍が勝つのか? 賭けてみるのも一興ですねえ』

『なお上限が設定されているから気をつけてね。お遊び感覚でよろしく』

『私はクロリア一択だな。勝てよ、妹』


 遠くの陣地から喝采が響く。


『コハナは勇者さま一筋ですから★ がんばってくださいねえ』


 周囲に集まる俺の仲間たちが大声で応えた。

 俺? 俺は無理。はずかしくて。あとあいつの一筋は、俺がちゃんと相手をすること前提だから。

 ……待てよ? 俺が構わずにはいられないようにビッチを演じるくらい、コハナはお手の物なのでは? くそっ! あいつにだまされている気がする。でも好き!


『僕は半々かな。賭け金のレートとしては、若干クロリアこと元魔王の方が低い。つまり有利とでているね』

『内訳だが、クロリアの軍勢にはスフレ王国一の戦士ネイトと精霊術の使い手たる巫女ナコ、聖女ペロリに狼の皇女ルカルーがいる。遠距離もいけるが、なにより瞬時に相手に迫る瞬発力と近接の強さがウリのチーム分けだな』


 魔王の解説わかりやすっ。確かにその通りだ。ペロリとルカルーが相手についていて、しかもガチンコ強そうなネイトさんが向こうにいるから近接はかなり怖い。

 そのうえ、クロリアとナコがいるから遠距離も決して薄いわけじゃないのが恐ろしい。


『対する勇者チームは地上最強の呼び声高い魔法使いプリスさまとそのご息女で、スフレの筆頭魔法使いだったクルルさまがおります。遠距離最強の二人だけじゃありませんよ? ルーミリアの仮面の狼とスフレ第一皇女であったクラリス様というロイヤル溢れる魅力も炸裂します』


 魅力が炸裂してどうすんだよ、というツッコミは聞こえるが……まあいえないよな。ルカルーの兄ちゃんがいることは。

 クラリスが錬金術を使えることを敢えて言わないあたり、コハナや魔王の意図を感じるが……まあいい。

 実況がはしゃいで話し、街から喝采があがるのを聞きながら手を叩く。


「みんな、集まってくれ」


 クルルとプリスさん、それにルカルーの兄ちゃんとクラリスをはじめみんなが集まってくる。

 大勢の人と魔物を率いる軍団長として四人には活躍してもらうことになる。

 作戦を説明するべく、俺は陣地の砦に設置されたテーブルに紙を広げた。

 このあたりの地形をまとめてくれた開拓班に感謝。


「山にいたる道は一つ。ここを防ぐために軍勢を置く必要がある」

「どういう置き方にするのかな?」


 ルカルーの兄ちゃんの問い掛けに、俺はプリスさんを見た。


「お願いできますか?」

「んー。近接の軍勢と混戦になったら防ぎきれるかわからないから、そのフォローをお願いできないかしら」

「クラリス」

「かしこまりましたわ」


 迷わず願う俺にクラリスは笑顔で頷いてくれた。よし。


「クルルは中心地点に陣取って、敵を分散させながらたたいて欲しい」

「分散させていいの?」

「混戦に持ち込んで、繋ぎ止める。その間に俺と仮面の兄ちゃんが前線に出てきた将を討ち取る」


 なるほど、と頷くクルルよりも、仮面の兄ちゃんの反応を伺う。


「一人ないし二人、将を討ち取ったら敵の陣地に向かう……でどうでしょうか」

「君が大将だよ、タカユキ。私はその命に従おう」

「なら、これでいきましょう。クロリアは俺よりも賢い。何か変だと思ったら声を上げて、連携していきましょう」


 俺の話にみな、笑みを浮かべる。


「どうせなら勝たないとね」

「今では領主の勇者さま、ですもの」

「きみに勝利を捧げよう、タカユキ」

「素敵なところを見せて」


 おう、と頷いて、位置につく。

 そんな俺に近づいてきたのはクルルだった。


「ちょっと、いいかな」


 手招きされて近づく俺に、クルルはいつものようにパンツを差し出してくれた。


「あ……悪い」

「いいよ。ただ……攻撃されたら脱げちゃうんだよね?」

「まあ、そうだな」

「だったら……パンツ履いてないところ、見られたくないかな」


 あ。そ、そっか。俺がパンツを借りたら、そうなるのか。


「パパとママもいるし……それに」


 周囲をきょろきょろ見てから、クルルが頬に口づけて囁いた。


「タカユキにしか、見せたくないもん」


 じゃあね、と照れ笑いを浮かべつつ離れていくクルルを見送って、パンツを握りしめる。


「あんまりぼうっとしてたら、ヤキモチ焼いちゃいます」


 入れ替わりで歩いてきたのはクラリスだ。

 空いている俺の手を取り、パンツを渡して微笑む。


「わたくしの……お大事。見せずに済むように、どうか……勝利をくださいまし」

「わかった」


 頷く俺にクラリスは目を閉じた。

 頬に口づけると少し残念そうな顔をされるけど。


「唇は、この後の式にとっておいてくれ」


 そう言うと嬉しそうに笑ってくれるんだから、よしとしよう。


「さて」


 用意された馬に跨がり、パンツをそれぞれの腕に巻き付ける。

 右手を伸ばして取り出す武器は、大剣。

 俺が世界に召喚されてはじめて手にした武器だ。

 息を吸いこむ。

 万感の思いがこみ上げてくる。


『そろそろ……準備ができたようですね。それではぁ!』


 コハナがトーンをあげて、


『ピジョウ共和国、お祭り第一回! 陣取り合戦、はじめえ!』


 叫んだ瞬間に花火があがる。

 馬の腹に足で触れ、手綱を握った。

 ぐん、と前に駆け出す馬に並ぶ白馬。隣にはルカルーの兄ちゃんがいて、ルーミリアから移住してきた狼たちが続く。俺の後ろにはスフレと魔界から移住してきたみんながいる。

 後ろをふり返ればクラリスが、クルルが、プリスさんがいる。

 なんとか勝ちたい。それに……ネイトさんともやり合わないとな。

 気張っていこうか!




 つづく。

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