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第六十七話

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 祭りの前日、俺は葉っぱ一枚で特別に作られた二足歩行型重機に跨がっていた。

 起動実験をしているのだ。

 パンツ力というものが俺の身体には流れているらしく、それを使って動くようにしたんだとか。

 説明をしたクロリアを半目で見た時の彼女の反応はこうだ。


「バカみたいな力なんだ。詳しく聞くな。理解しろ。そういうもんだって。私だって考えたくないんだ」


 ぶすっとされました。


「えっと……まずはどうしたら」

「歩くことだけを考えて」

「歩く……」


 イメージしながら台座の脇にあるスティックを引く。

 それだけで重機の足が動いた。


「おお!」

「動いた」


 会心の笑みを浮かべるクロリア。

 クラリスと二人で重機を改造してくれたのは彼女だ。

 そんな彼女をしてみても、葉っぱ一枚のパンツで重機を動かすということは難しかったのだろう。いまは成果が出て大層うれしそうである。


「……ねえ、クラリスさま。裸で重機うごかしてるの、私たちの旦那なんだけど」

「かっこいいです……」

「えええ……そうかなあ」


 言うな、クルル。

 二足歩行型重機といっても、全長は大したことない。

 それに台座の周辺は露出しているので、起動実験を見守っているクルルからは裸のように見えるらしいのだが。


「ふふ、クルル! 安心してください!」


 重機を前のめりにして台座が彼らに見えるようにしてみせつつ、どや顔で言いました。


「履いてますよ!」

「葉っぱじゃん」

「でも、履いてますよ!」

「……あれ、量産するのやめた方がいいかな。共和国が裸族の集まりみたいに思われるのいやだもん」

「ちょ」


 思いのほか不評だなあ!


「かっこいいです……」

「く、クラリスはこういってるぞ!」

「葉っぱだけ……争いをしない象徴で、素敵すぎます……これが領主の正装束なのかもしれません」


 両手を組み合わせ夢見がちに俺を見つめるクラリスの目の下には、一目でわかるレベルのくまがくっきりとできていた。


「徹夜続きの妙なテンションで血迷っているだけかな」

「ちょ」


 クルルには大不評だ。

 あれえ? いいと思ったんだけどなあ。だめかなあ。


「落ち込んでいる暇はないぞ、葉っぱ変態野郎」

「ちょ」

「せっかく重機を動かしているんだ、さっさと働け。ひとまず合戦の砦を作ってもらう」


 いそいそと重機にのぼってきたクロリアが俺の後ろにある椅子に腰掛けた。

 まさかの複座式。


「指示するから、その通りに動けよ。あとあんまり揺らしたら殺す」

「こわっ」


 やれやれ。もっと華々しく楽しい感じを予想していたんだけど。

 裸に見えるからかなんなのか、あちこち出回っても女子の評判はすこぶる悪かった。

 意外にもルカルーの兄ちゃんやクルルパパ含め、男性陣の受けはよかったんだけど。

 だめかなあ。葉っぱ。俺はありだと思うんだけどなあ。


 ◆


 昼間になった俺は重機から降りてクロリアとふたりして、それぞれ与えられたベッドに突っ伏していた。

 なぜって、あれだよ。

 二足歩行はだめだよ。

 縦揺れひどすぎて酔う。


「なんとなくロマン優先で作ったけど、次からキャタピラにしよう……そうしよう……」

「車みたいなノリがいいかもな……うぷっ」


 うつぶせだめだ。吐く。


「二人とも無茶するよね。でもこのペースだと危ないから、午後はお兄ちゃんはペロリのパンツで手伝ってね」

「うっす……」


 治療してくれるペロリには頭が上がらない。


「ねえところで、お兄ちゃん。葉っぱパンツ脱がないの? 裸みたいでちょっとどうかと思うよ」

「うう、ペロリにすら不評とは……」

「むしろどう足掻いても葉っぱ一枚というデザインで女子に好かれるのは無理があるだろう」


 クロリアのツッコミに唸る。


「むう……いけると思ったんだが」


 俺の元いた世界で一世風靡したような。

 その四文字時点で死語なノリ? おう……。


「南国風に調整してみたら? 葉っぱ一枚が股間にある感じじゃなくて、おっきな葉っぱを腰に巻き付ける、みたいな」

「だめだ、ペロリ。葉っぱが一枚股間を隠している、この危うさがいいんだ……」

「じゃあむりだよ。どうしていいかわかんないもん、その葉っぱ」


 くっ! なんということだ……!


「強いて言えばすぐ飛んでいきそうで、今にも見えちゃいそうな危うさが嫌かも」


 全力で駄目だし食らってる感。


「ぺ、ペロリは俺の股間きらいなのか?」

「それとこれとは別だし、そういう質問はどうかと思うよ、お兄ちゃん」

「あ。はい」


 くくく、と笑い声をあげるクロリアをぎろっと睨むけれど、効果なし。


「ったく、しょうがない……脱ぐか」


 いいと思ったんだけどなあ。裸の肌色と同じパンツに葉っぱがくっついているこのデザイン、どう足掻いてもぽろりしようがない出来映えは見事だと思うんだが。

 そうか……だめか。

 そう思って脱ごうとした時だった。


「ん?」


 でろでろでろでろでろでろでろでろ、でーでれん。


「え、嘘やん」


 脱げない。ちょ、え? 脱げない!


「待って」


 全力で引きはがそうとするのだが、どういう理屈なのか脱げない!

 脱ごうとするたびに呪われた音楽がパンツから流れる。なんということだ!


「く、クロリア! 助けて、このパンツ脱げない!」

「ああ、お前のパンツ力を吸う力が悪さしているのかもしれないな」

「……」


 どうしよう。作ってくれた本人にはとてもいえないが、しかし思わずにはいられない。

 お前なにいってんの?

 言おうものならお前が作らせたんだろう、とぶち切れられそうだし、それは紛れもなく正論なので言えない。言えないけど、なんだろうな。このパンツを巡る時空のアホらしさの増し加減。


「ちょっと待ってろ」


 立ち上がってクロリアが俺のベッドにうつってきた。

 そして俺の葉っぱに手を当てる。葉っぱ越しに懐刀に触れているのだが、クラリス同様目に隈作ってどこかぐるぐる回っている徹夜明けのクロリアは気づいていない。


「さん、にい、いち」


 よし、と呟いてクロリアが離れた。

 そしてそばにいるペロリに言う。


「離れた方がいいぞ」

「なんで?」


 疑問を抱きながらもクロリアに従うペロリ。それはいい。

 だが、どうしたことか。

 パンツから、ぴっ、ぴっ、ぴっ、なんて音が鳴るのは。


「く、クロリア!? なにしたの!?」

「じばくそーちだ」

「お前パンツになにしかけてんの!」

「みんな灰になればいいんだ! これで今夜はすっきり眠れるぞ! あは、あはははは!」


 やばい、とっくにおかしくなってた! くっ、くそ、どうしたら、どうしたらいいんだ!


「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げ――」


 ぴー……ぼかん!

 こうして俺は爆死を遂げ……たりはせず、黒焦げになって煙をぶほっと吐き出し、あわてて駆けつけたペロリに治療してもらうのだった。

 とほほ。




 つづく。

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