第五十九話
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まあね。そう簡単に宝石を手に入れられるなんて思ってませんでしたよ。
どっちかといえばすげえ簡単に終わるかすげえ手間取るかの二択だと思ってもいましたし。
ここ最近手強いことの連続だったから、どっちの目が出るかって考えたらね。めんどいほうだろうなあ、と思っていたんです。
でもなあ。
「よし……じゃあ最後の一人ね。あなたを通すなら……そうねえ、なにがいいかしらねえ」
いつかのルーミリアの壁の前に悪魔で門番のねーちゃんが、なんで洞窟の前にいんのかな? 俺の邪魔がしたいのかな? なんなのかな?
「待って。中に入れてもらえない理由がわからない」
「あら……ごちゃごちゃいうと通してあげないわよ」
「いやいやいや! なんでいんのか教えてくれよ!」
「それはコハナにおもしろ映像を……こほん」
「今コハナっつったか? 言ったよな!」
「それではぁ……勇者タカユキにお願いすること、それはぁ……」
くっ! 意地でも無視する構えかよ!
「そうね。嫁への愛を叫んでもらおうかしら」
「なんでなん」
「結婚したらどういう風に幸せにしてあげるかで、はいどうぞ」
想像通りのスルー……くっ!
後ろで待っているペロリもナコもじっと待っているだけ。既に通してもらうための御題はこなしたあとだからな!
助けてくれてもいいのよ? という視線を送るが二人揃って笑顔で手を振ってくるだけ。
伝わっていない……!
「じゃあまずは魔法使い娘へ」
見たことのない鉄の塊を取り出して俺に向けてきた。
「さん、にい、いち……」
かちん、と合わさる不思議な板を使って指示を出されてテンパる。
断ったら即死魔法とか使われたりするのかな。それともどこかへ飛ばされるのかな。攻撃くらったら脱衣しちゃう世界の法則が働いているみたいだけど、試す気もない。外で宝石とりにいこうっつって出てきているのに、ペロリたちの前で脱いでいる場合でもないのだし。
ああもう。しょうがねえな。
「えー……クルルへ」
やばい。出だしから既に恥ずかしさがやばい。
言わなきゃだめ? という顔で三人を見たら三人揃って真面目な顔で頷いてきた。
逃げ場なし。
なにこのビデオレターちっくなの……うっ(ry
「えっと……思えばこの世界に来て、最初に俺の味方をしてくれたのは、他でもないクルルでした」
女子三人がにやにやしながら俺を見つめてくるのなんなの? 殺す気なの?
「正直ケンカはたくさんしたし、耳かきをせがまれてめんどくさって思う夜もありましたけども」
あ、ペロリがそうじゃないって顔してる。わかってるっての。
「そういう時間も全部こみで、クルルとはいいときも悪いときも共有してきましたよね。正直、クルルでなければ乗り越えられないことばかりでした」
すらすらと言葉が出てくるし、すげえとも思う。
なにがすごいって、ああ普通に言えちゃうくらいにクルルへの気持ちは固まってるんだなあってところがだ。
「これから先も、なにがあってもクルルがいてくれたら幸せだし……クルルも同じ気持ちでいてくれるといいなあって思ってます。なにより、幸せにしたいと思うから」
はずいけど。
「今後ともよろしくお願いします」
自然と浮かぶ笑顔を向けて言った。
これでいいんだよな、と思ったら板きれをかちんとやられた。
「じゃあ次いくわよ。スフレ王国の皇女さまへ、愛のメッセージ……さん、にい」
かちん、とやられる。
そんなに早く切り替えんのかよ、と内心でツッコミつつ咳払いをした。
「クラリス」
名前を口にしてみれば、自然と俺の中の気持ちが見つかる。クルルに対して話してみたからすぐに要領はわかった。
「思えば俺がこの世界に来たのは、スフレがクロリア率いる魔王の軍勢にやられて危機的状況にあったからだ。女神に召喚されて右も左もわからない俺と、親を失い、カナティアをはじめスフレを率いて立て直すことに必死だったクラリスの出会いは、思い返してみれば衝突から始まっていたように思う」
剣を突きつけられた瞬間を今でもはっきりと覚えているよ。
「でもエルサレンの街に来たきみの素は、最初にあった時の張り詰めたものからずいぶん違っていた。思えばあの瞬間から俺はきみに惹かれていたし、素のクラリスでいられるような世界であればとも思えた」
はずかしいというよりは、真剣になるな。
「きっときみを助けに来た。そう思って今日までやってきた。それはこれまでも、これからも変わらない。だから一緒に幸せになろう」
微笑む俺にペロリが手を叩き、門番の姉ちゃんが板きれをかちんとやった。
「ん。いいわよ、通って」
妙に満足げだな。
「はあ……これ、結局なんなの?」
「そのうちわかるわよ。それより宝石取るならさっさと持ってったら? 明かりなんてないから、ぼやぼやしてたら日が暮れて何も見えなくなるわよ」
「おうっ」
そいつは困る。
鉄の塊を手に指を鳴らして消える門番は放っておこう。
「さて、行くか……なんだよ」
ペロリが俺の腕に抱きついて幸せそうに笑っているのはなぜなのか。
「将来が楽しみだなーって思って」
「意味がわからない」
「わからないなら考えるだけ時間がもったいないから、さっさとついてきて。行くよ」
歩いて行くナコの尻尾も機嫌良さそうに揺れていた。
さっぱりわからない。
わからないといえば住処へと戻って出迎えてくれたコハナが妙に上機嫌なのもげせない。
何かが水面下で進んでいるような気がしてならないが、誰に聞いても教えてくれないのだ。
腑に落ちないのだが。
「魔界とルーミリアの職人をお呼びしましたので、装飾を決めるために話してきてくださいませ。聖女さまも連れて、ね?」
コハナに背中を押されてしまうと抗えない俺です。
ほんと、なんなのかね。
つづく。




