第四十八話
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仲間を取り戻すために使う目的は叶った。
期せずして妙なことにもなっちゃいましたがね!
仲間と合流するだけじゃ物足りない。いや、決してそういう意味ではなく!
せっかく潜入したのだ。
囚われた他の子たちを助けたいし、仲間と合流したいし、最上級の部屋も地味に気になる。
湯が常時わき出る豪勢な大理石と金獅子の風呂だの、寝転がったらつるつる滑りそうな上質の絹のベッドだの。
だっていうのに、ルカルーが着替えられる服はなし。
どうせなら捕まる前の服も残しておいてくれたらいいのに。
そこまでのフォローはなしか。外に出ることを、そもそも想定していないかもしれないな。
「ここにいる子達を救っても、それだけでは足りないぞ?」
「どういうことだ」
他にもいるのか?
きょとんとする俺に、ルカルーは髪の毛を整えながら答えた。
「ここは魔王と手を組んだ企業によって運営されている。どうやら魔界における裏社会の頭のような奴がいて、地上から定期的に人をかっさらっては、女は風俗、男は過酷な地下労働を強いているらしい」
地下労働。女は風俗。
なぜだろう。俺の胸の中がざわざわする。
すっごくざわざわする。
「従業員がぼやいていた。その力の結晶となるカジノが近くにあるらしい。そっちを潰してみなを助ける必要もあるとルカルーは思う」
カジノかよ!
ますますもってざわざわするぞ!
だがしかし、金の気配! 圧倒的金の気配!
「どうする?」
「本来なら魔王を倒す方が先決だが、俺たちには金が必要だ! そいつが魔王を倒して逃げない保証もない!」
胸を張ってすげえ情けないことを断言する俺です。
「よし、このビルの女の子を解放したらみんなと合流してカジノへ行くぞ!」
燃えてきたぞう!
「じゃあルカルー、パンツ!」
「ふたりきりなんだぞ? もうすこし、まともなお願いの仕方はないものか」
「――……すみません」
「まだ時間はあるし、一度で終わりというのもなあ」
「……意外と余裕あるなあ、おまえ!」
「呪いは解けた。兎たちもいるのだろう? 厄介なのは社会の治安維持部隊であって、個々の戦闘力でいえばルカルーより強い奴は滅多にいないことがわかったからな」
「――……いつでも外に出られたと?」
「客だってぶちのめせた。だからこその罰でもあった」
お仕置きだべえがくすぐりって、なんだろうなあ。なんていやあいいんだろうなあ。
強いて言えば昭和感よ。
「クラリスもクロリアも助けたのだろう?」
「まあ……あとはルカルーだけだ」
「なら急ぐこともあるまい」
優雅に笑うルカルーの顔から、なぜだか肉食獣の強さを感じる。
「もっと近くにこい、タカユキ。くすぐりにはうんざりだが、さっきのはよかった。もう一度だ」
「もう一度っすか」
「不満か?」
「滅相もないっす」
ただ、ちょっとね? ちょっと思うんす。
こんなことしてていいのかなあって。
「お前のカードだと、外に出られるまでもうちょっと時間がかかるぞ? ルカルーの逃走防止にな」
「そうなの!?」
「一時間したら確認の電話がくる。これまではぶちのめして、ルカルーが出て気絶した客を迎えにきてた。ご丁寧にルカルーを縛る魔法使いの護衛つきでな」
「……魔物も大変だね。お前を捕らえるだけで精一杯だね」
「別に壊して出てもいいが、それするとうるさい連中が来ると口を酸っぱくして言われてる。ちなみに待遇はよかったぞ? くすぐられる以外は、飯はうまいし」
適応能力たかくなったね! 出会った頃より成長したね!
「というわけだ。ルカルーはもっと楽しんでもいいと思ってるが、どうする?」
「……見られてない?」
「待機部屋じゃないからな」
いろいろ苦労したけど、図太く無事でいるあたりほんとにこいつはたくましいな。
ほら、と耳元で囁かれて開き直ることにした。
彼女をそっと抱き締めて――……階下の人を助けに行くまで、もうすこしだけ。
つづく。




