第四十四話
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クルルと一緒にテレビを眺める。
いや、そこまでのんびりするなよって話なんだけれどもさ。
待って。大事なことがあるんだよ。
「普通に」
「出てるよね」
俺たちを陥れた魔王がテレビに映っているのだ。よりにもよって! しれっと!
浮かない顔のクロリアや、よく似た顔の大人たちと一緒にな!
あれが要するに魔王一族ってことなのか?
だとしたら面倒だな。さくっと全員倒せないものか。
『人間たちのいる世界を手にするために、現在開発中の薬について――……』
思わずクルルと顔を見合わせる。
「普通に」
「言っちゃってるね」
女神とはまた別の意味でツッコミどころが……。
ま、まあ、手っ取り早くていいと思っておくか。うん。それがいい。精神衛生上それがいい。
「どうする? 乗り込む?」
「先にクラリスを助け出したいんだが……待ってたら映らないかな、居場所」
「タカユキ、それはさすがにそんなに楽に――……」
俺の肩をぺちぺち叩くクルルなのだが。
『わたくしいま、タイパの臨海地域にある研究所にきております! こちらでは魔王さまがお作りになっている薬を研究しているとのことで』
ぱっと映し出された場所、地図、そしてクラリスの顔写真。
なんだろうな。
「情報化社会って怖いな」
「普通は隠すべきことだと思うんだけど、じょーほーかしゃかい? になると、明らかにしちゃうのかな?」
「それか俺たちが来ていることに気づいていない、か」
「危機感を覚えるほどじゃない的な?」
これだけ繁栄していれば当然かもしれないなあ。
「まあいいや。さくっといっちゃおうよ」
ベッドをぺしぺしとクルルがはたくと、ふんわりと浮かび上がる。
空飛ぶベッドとは……どんどん頭が痛くなってくるな。
「掴まって、タカユキ」
「……いいのか?」
「未練はないよ。ここにあるのはやっぱり夢でしかないし、私はとっくに家族のことも大事に思ってるの」
微笑むクルルの魔法によって、俺たちは部屋からベッドに乗って飛び出した。
けれどこいつの本当の魔法は、思いきりの良さなのかもしれない。
◆
めちゃめちゃ繁栄している魔界において目立つ移動方法で目的地に辿り着いた俺たちは、魔王軍に取り囲まれました。
ベッドで着地したクルルが俺を見て呟く。
「なんで?」
「いやいやいやいや! どう考えても目立ちすぎですからね! やること一緒だから別にいいけども! クルル、パンツ!」
差し伸べた手にクルルがパンツをのせた。
すかさず取り出す大剣を――……。
「おお?」
――……大剣を振るいたいんだけど?
「ええと」
何も出ない。
「あれ? ちょ、待って」
俺たちを取り囲む防護服を着た魔物たちが渋い顔をして腕組みをする中、俺は腕を振った。
「出ろぉ! あれ? でないな。ん? あれ? どうしたのかな? 機嫌悪くなっちゃったかな?」
左手でパンツを握りしめて、右手をぶんぶん振る俺ってなんだろう。
変態かな。なんなのかな。
「待って。待って? すげえ目つきで俺のこと見てるけどお願いだから待って。すげえ頑張ってるんだけど。あれえ? っかしいなあ。マジででないなあ」
ひきつった笑顔で周囲の魔物たちを見る。
「魔界だからうまく力が出ないのかも……もっとパンツと密着するしかないよ!」
「ええ!? なにその理論!」
「かぶればいいんじゃないかな! クロリアが前に戦った時いってたし!」
「それは前の冒険について知らないと言えないのでは?」
「えーっと。魔界の言葉で言う……マーケティング?」
「正解! って言ってる場合でもねえか。よし、じゃあ……えっと、こうか?」
失礼して、とパンツをかぶる。
「ちなみにクルル、感想は?」
「今さらどうとも思わないよ……強いて言えばその質問にデリカシーの欠片もないと思うくらい」
呆れた声で言われた。
昔のお前はもっと恥じらいがあったのに、と言ったらベッドごと背中にぶつかられたのでもう言わないようにしよう。
「えー、じゃあみなさん、お待たせしました。いきますよー?」
とげとげしい空気の中を無理して笑顔になりながら、右手を振るう。
「出ろ!」
念じて出た大剣はいつにも増して頼もしく見える。
「来い!!!」
漫画なら俺の顔に集中線の効果が入る勢いですよ!
「……いや、あのさ」「こいといわれても」「一度緩んだ空気をどうしろと」「というか魔界における犯罪者はお前だからな」「だいたいパンツかぶってなにしてんの?」
「え、あ、え?」
最後のツッコミが特に心が折れそう!
「銃刀法違反。わかる?」「犯罪よ、犯罪」「刃傷沙汰とかさー、困るんだよねー」
「あれえ?」
真面目なトーンで駄目だしされてる!
「じゃあ、とりあえず署まで来てもらおうかな」「話は全部そこで聞くから」「カツ丼くらいは出してやるよ」
「ガチの犯罪者扱いに俺泣きそうなんだけど!」
どんどん迫ってくるんですけど!?
な、なんだろう。今までにない危機感があるよ!
なんか意味もなくすっげえ悪いことした気持ちになる!
「ちょっと! なに押されてるのかな!」
「いやでも」
「ここでは私たちは侵略者、いいからやるよ!」
「ざっ、罪悪感がだな」
「いいから!」
なんかすいません! と叫びながら俺は大剣を振るい、周囲の魔物をぶっとばしたのでした。
「み、峰打ちだから!」
さすがに止めは刺せなかったです。
さ、さっさと研究所に入ってクラリスを助け出して、おさらばしよう!
つづく。




