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第三十九話

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 帝都の前に到着した俺は、笑顔が引きつって仕方なかった。

 途中にある崖を降りて目にした大地には、びっしりと隙間なく魔物たちがいる。


「異常繁殖かな? 虫さんかな? ルカルー、ナコ、二人が偵察したときからこうだったの?」

「まさか」「爆発的に増えてる」


 っていうかむしろ爆発してない?

 爆発して四散した肉のすべてから魔物ができてない?

 それくらいの勢いじゃない?


「まあまあタカユキ、なんとでもなるよ」


 俺の腕に寄り添って立っているクルルが笑う。


「むしろ直線ルートでお城へ行くのに手間取りそうくらいの感覚だよ?」

「あのな……いや」


 簡単に言ってくれますけど、と思ったんだが。

 そういやクルルは魔法使いなのだった。


「全部やっつけられるか?」

「街にさえ気を遣わなければ楽勝かな」

「帝都を破壊するのは許さないからな、兎」


 ルカルーが鋭い目つきで見るから思わずクルルが俺の背中に隠れる。


「ししししし、しないよ。当然だよ、仲間の故郷だもん」


 相変わらず、兎と狼の力関係は強い。

 ルカルーが止めなかったらしてただろ、と思いつつ。

 仕方ない。


「みんなのパンツを俺にくれ」

「「「「「「 えっ 」」」」」」

「いや、みんな揃って今? それ言うの今? みたいな顔すんな! そんな目でこっちみんな! いいから、貸してくれ!」


 手を出したらいそいそと彼女たちが揃ってパンツを脱ぐ。

 色とりどりのほかほかパンツが俺の手の上に。

 クルル、クラリス、ルカルー、ペロリ、コハナ、ナコ。

 六つの彩りを腕に巻き付けて、まず取り出すは弓。

 ナコのパンツから念じて出す攻城兵器だ。


「みんな、後ろに回っててくれ」


 弓の弦を引く。矢などないその弓に光が凝縮していく。その熱はもしかしたら、ナコが俺に向けてくれた思いの熱でできている。


「ペロリ、ルカルー、道を作るから先陣を」

「がってん!」「わかった」

「クルルは好きに暴れてくれ、ルカルーの怒らない範囲でな」

「わかったかな!」

「クラリスとコハナは俺の後ろについてきてくれ。状況判断と指示だしはクラリスに、コハナはクラリスの防衛を」

「かしこまりましたわ!」「了解です」

「ナコ、殿を頼むぞ」

「ん……わかった」

「じゃあ――……いこうか」


 すう、と息を吐く。


「一蓮托生、連帯責任だね!」

「いやいまは違うから! クルル、それだと最後にやな感じになるから!」


 思わず言い返した時でした。指がすっと弦から離れたのは。


「あっ」


 光の矢は幾筋にも分かれて、魔物の群れのど真ん中をぶち抜きました。

 すかさず駆け出すルカルーとペロリ。

 魔物達が気づき、隊列を整えようとするのだがそうはさせない。


「トルス・コンプレシオ・マキシモ!」


 クルルが両手をかざした途端、魔物たちの頭上に見渡しても全貌が掴めないほど巨大な魔方陣が浮かび、そのまま地面へと落ちた。

 途端に魔物たちの動きが封じられる。まるで上から押しつけられているみたいにだ。

 一緒になってルカルーとペロリも這いつくばっているのはどうなんだ?

 あれは間違いじゃない? 解除したほうがよくない?


「く、クルル、やりすぎじゃね?」

「二人ならいけるかと思って」

「確かにね、うん、確かに二人ともなんとか身体を起こして歩き出しているけど、最初の走りっぷりが嘘みたいにのろくなってるから! やめてあげて!」

「しょうがないなあ」


 ぱちんと指を鳴らした途端、全力で歩こうと頑張っていたルカルーとペロリの身体がね。

 びゅんっ!

 って勢いで帝都に飛んでいったよね。


「ばっかお前どうすんだよ! いきなり二人と分断されたぞ!」

「いたいいたいいたい! なんで妊婦の頭を鷲掴みにできるの信じられない!」

「ちょっと! お二人とも急ぎますよ!」


 クラリスに背中を叩かれて我に返り、慌てて走る。

 クルルの魔法の威力は凄まじく、魔物たちは未だ動き出せずにいた。

 その間を俺たちは走り抜けていく。

 帝都まで案外あっさりたどり着けるのでは? と思ったのだが、帝都の方から魔物の大群が押し寄せてくるではないか。


「いっそ全員まとめて魔法かけられなかったのかよ!」

「帝都がぺっちゃんこになってもいいなら今すぐにでもやりますけど!」

「やめてください」

「ほらみなさいよ!」


 ケンカしてる場合じゃない、とクラリスの声が響く。

 コハナは終始楽しそうな顔をして、クラリスを抱きかかえて走っていた。

 ふり返ればナコがあちこちに意識を向けながら弓を構えて後に続いている。

 クルルは魔法で空に浮かび、俺の横を飛んでいた。

 帝都に飛んでいった二人の基礎戦闘力は俺たちの中でも抜群に高いから、魔王とさえ出会わなければ大丈夫だろう。

 とはいえ悠長に構えてもいられない。


「どうするの、タカユキ! どんどん敵が増えてくよ!」

「我に秘策ありってな! いいから突っ込め!」


 みなが頷き、けれど帝都までの距離は絶望的で。

 だから、耳に聞こえるナコの歌声に笑う。

 降りしきる雪の一粒一粒が小さな兎となって、地面に落ちた。


「みんな、帝都に連れてって欲しい!」


 ナコの呼びかけに兎たちがいっせいに集まって、巨大な兎となって応える。

 クルルの手を掴み、俺たちの前へと躍り出た兎の背中に飛び乗った。ナコが、クラリスを抱えたコハナが続く。


「掴まって!」


 ナコの呼びかけに慌ててクルルを抱いて兎の背中にしがみつく。

 直後、飛んだ。物凄い加速度に息さえできない。

 着地して、飛んで。次いで駆けて。あっという間に辿り着く。

 目がくらくらしているクラリスと目が合った。


「中の救助、頼んだぞ……クラリス。お前が指揮をとるんだ」

「あ――……はい!」


 一瞬寂しげな顔をするが、すぐに決意に変わる。

 スフレの皇女がきっと城を睨むと、その思いに死神は応え、駆け出した。


「ナコ、お前もだ。ルカルーが無理をしないか見てやってくれ」

「ん」


 兎の背中をぽんぽんと叩いて雪へと戻すと、ナコはコハナとクラリスの後を追いかけていく。


「さて、クルル。わかってると思うが」


 腕に抱く少女から手を離す。

 念じて取り出す武器はただ一つ。

 竜さえ斬り殺す大剣だ。


「制限なしでばんばん倒していいってことでしょ?」

「ああ」

「はじめての共同作業?」

「いやいや、魔物退治だし、それって別に今回がはじめてじゃないから。うれしはずかしついでにときめく共同作業は式までとっておいてください」

「しょうがないなあ」


 でも、いいよ。

 そう言って彼女は俺から離れて微笑んだ。


「頼めるか、クルル」

「誰に聞いてるの?」


 当然でしょ、と告げてすぐ。


「タカユキの隣に立つ役目を他の誰にも譲る気なんてないよ」


 それにね? と彼女は胸を張る。ドンとな!


「私とタカユキなら、どれだけ敵がいたって楽勝でしょ?」

「ああ……違いない」


 彼女に頷いて、前を見る。

 先ほど潰されそうになった魔物たちが身体を起こした。

 そして魔法の範囲外にいた連中も集まってきた。

 見渡す限り魔物だらけ。これで生き残れたら勇者ってよりも英雄だな。

 どっちでもいいさ。まずは退散願いますかね!


「いくぞ、クルル」

「うん!」


 二人して群れへと挑んでいく。

 互いの顔に不安なんて、あるはずもない。




 つづく。

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