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勇者タカユキと悪魔の薬~異世界パンツ英雄譚2~  作者: 月見七春
第四章 温泉の街ファース、湯船に染み入る悪魔の薬
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第三十一話

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 帝都へいざゆかん!

 そのためにまずは中継地点にある常闇の街ルナティクを目指す必要がある。

 これだけの大所帯ともなると徒歩で二日はかかりそうだ。

 しかも妊婦二人を歩かせるわけにはいかない。

 当然、馬車に乗せる。

 二人の安全を考えて乗せるとなると、荷台は少し狭すぎるし、老いた馬に引かせるのも忍びない。

 というわけで馬車から新調しなきゃいけない模様です。

 さあ、参った。


「なんか大変そうかな」

「お前ね……」


 脳天気に言うクルルにツッコミを入れつつ、街を回る。

 保養地というだけあって長旅で訪れる馬車を見れる職人などもいるようだ。

 なので早速頼んだんだが。


「乗り心地のいい大きな馬車となると、材料費から何から結構するが大丈夫か?」


 お金がかかりそうです。


「それにそいつを引く馬は?」


 とてつもなくお金がかかりそうです。


「材料はこちらで調達しますので、どこいらの樹がオススメかお教えいただけますか?」


 ついてきてくれたコハナの問い掛けに職人が細やかな説明を始めた。

 どこそこの樹をどういう風に持ってこい、とか。

 そういう話は正直俺では覚えられそうにもない。


「じゃあその分の諸経費はざっと抜いてぇ、監督していただく感じでお願いしまぁす」


 コハナの営業スマイルはしかし、職人には通用しなかった。


「ふん……材料を持ってくるってんなら格安で引き受けてやるよ」


 いぶし銀のおじちゃん、優しい。


「馬だけはなんとかしろよ。しょっぼい馬連れてきやがったらただじゃおかねえぞ」


 優しいけど手強い。

 老馬じゃあ許されないだろうし、不憫だし。

 馬ねえ。


 ◆


 コハナと街外れにある牧場を訪れた。

 馬を一頭譲ってもらえないか尋ねたんだが、牧場主の顔は冴えない。


「別に譲るのはいいんだが、街の外に連れて行こうってんならオススメはしないよ」

「どうしてだ?」

「うちの子は特に臆病なのが揃っているから、最近魔物がよく出る旅路じゃ何かと不便が多いと思う」


 さらなる難問追加か。

 コハナと顔を見合わせる俺に「ただ、そうだな」と牧場主が声を上げた。


「なにかあるのか?」

「いや……ちょっと前に帝都から逃げるようにやってきた貴族さまが言ってたんだ。少し北へ降りた草原地帯に巨大な馬を見たって。魔物が出る草地にいるような巨大な馬っていうなら、あんたたちの要求に応えられるんじゃないかと思ってさ」


 なんとなく予感を覚えてコハナの目を見た。

 閉じられていたけれど、それは嬉しそうに緩んでいたよ。


「勇者さま、クエストですね」

「お仕事って言え」


 やれやれ。

 樹の運搬も含めて色々と大変そうなので、ルカルーとペロリについてきてもらうことになった。

 クラリスとナコと三人で温泉を満喫するクルルから、パンツを借りることも忘れない。

 街の外に出て、まずは馬を目当てに歩いていた時だった。


「あーあ! クルお姉ちゃんたち来ちゃったから、お兄ちゃんもそっちにかかりっきりって感じだったよね。昨日の夜はもっと一緒に遊びたかったのになあ」

「聖女さま、妊婦相手にわがままを言っても仕方ないですよ」

「お兄ちゃん、ペロリはいつでもお迎えする気だよ?」


 コハナと話すペロリの言葉に動悸息切れ眩暈が止まりません。

 咳を出したらしばらく咽せそう。死ぬほど咳き込みそう。


「今そんなことになったら、よっぽど魔界ですごいお宝を見つけないと財政破たんは確実ですね」

「ルカルーはスフレの畑が気になるな」


 コハナの言葉に頭痛がして、ルカルーの言葉にはっとしたよね。


「あれ!? 今うちに誰もいなくね?」

「そうですね」

「畑の手入れはどうすんの?」

「そこはさすがに、クルル様が近所の方々に手入れをお願いしたのではないのですか?」


 コハナの言うとおりならいいけど、一応帰ったら確認しておこう。

 冒険を終えて荒れ放題の畑に帰るとか、マジで達成感消し飛びそうだからな。

 そんなことを考えていた時だった。


「御免」


 刀を差した着流しの男が岩陰から出てきて俺たちの前に立ちふさがったのだ。


「貴様、何やつ」

「……ただの、山賊さ」


 ふ、と微笑む男の圧迫感は尋常ではない。


「できるな」

「……ふ、お前こそ」


 にらみ合う俺たちの空気の緊迫感たるや。今までのノリとは違うものなのだが。


「なんかわかりあってる感じのところ悪いんですけどぉ」

「殴ってもいい?」

「山賊にくれてやるものなどない。帰れ。今すぐ引き返せ。さもなくばすべてを奪い取る」


 むしろ俺の仲間の方が山賊っぽい件について。


「まあ待て。こいつは俺が倒す」


 彼女たちを制して、クルルのパンツに念じて大剣を取り出した。

 しましま模様をしちゃあいるが、その異様は龍さえ断ち切る大業物である。


「さあ、こい!」

「……待て。なぜその剣はしましま模様なのだ?」

「クルルのパンツの大剣だからだ!」

「いやいやいやいや。ん? 待って。ん? パンツの大剣ってなに」

「説明すると長くなるから、以下略だ」

「いやいやいやいやいやいや。略されるとさ。その、さ。気になるでしょ。なんていうか、俺たち今まですごいかっこよさげな空気を演出したじゃん? お互い演出しあったじゃん?」

「……そうだな」


 なんかめんどくさそう、殴ってもいい? という仲間達の声はよそにして頷く。


「だからさ。お互いに死力を尽くして戦った上で納得して終わりたいわけ。わかる?」

「……まあ、わからなくもない!」

「なのにさ。パンツの大剣でやられましたなんてさ。口が裂けても言えないじゃん。俺の身なりみてよ。ちょっときめちゃってるわけよ。ね? この世界観でパンツの大剣に負けましたは……そりゃあいえないわ」

「……それも、そうかもな」


 お兄ちゃんさっさとやっちゃいなよ、とペロリが言うが俺は相手の言葉のもっともらしさに思わず頷いていた。


「もうちょっとマシな武器ないわけ?」

「えっと……どれにもパンツの、という枕詞がつきますけど」

「ちっ……やめだやめ! そんな奴と戦わないから……けっ! なんだよパンツって。お前はなに、パンツの妖精かなにかなの?」

「勇者ですけど」

「勇者がパンツとかはずかしくないの?」


 あああああ!

 久々に言われた! それ! 久々に問われた! 山賊にアイデンティティーを揺らがされそうになってる! 泣きそう!


「……は、はずかしくないですけどぉ!?」

「あーもうだめ。やめだやめ。普通の武器もってきて。ね? 今度からそうして。俺は今日のところは引き下がるから。じゃ」


 言うだけ言って山賊はどこかへと歩き去ってしまいました。

 なんだろう……この感じ。


「気にしたら負けですよぉ? さっさと斬っちゃえばよかったんですよぉ」

「そうだよ。律儀に相手に付き合っちゃう人の良さみたいなのがお兄ちゃんにはあるよね」

「美徳だとルカルーは思う」


 なんか、その。すみません。がんばります……。




 つづく。

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