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5話 付き合おっか

 美久の友達か? いやだったら美久はあんなに暗い表情をしないだろう。

「美久行こうぜ」

「う、うん」

 美久の手を引き帰ろうとするが後ろから声をかけられる。

「はぁ、待てし。こっちは話し中なんだけど」

「そうなの? でも帰らなきゃいけないんだ悪いな」

「だから待てって言ってんだろ!」

 そう言い美久を囲っていたリーダー格であろう人が美久の手を掴んだ。

「悪いけど今度にしてもらえないかな?」

 正直逃げ出したいくらい怖かった。でもここで逃げたらきっと後悔する。それだけはなんとなく分かった。

 だけどこれじゃあ埓が明かない。美久もさっきから俯いていて何も話さない。握っている手も力なくダランとたれている。

 金をあげて帰るか? などと考えているとふと美久の表情が見えた。その目は虚ろで光がなくあの美久とは信じられないような顔をしていた。その時俺の中で何かが弾け言葉が無意識に口からでた。

「おい、いい加減手放せよ」

 美久の手を握っていた女を睨みつける。すると女はたじろぎ手を放した。

「チッ」

 そうして女が舌打ちをしながら離れていったのでこちらも家に向かって歩き始めることにした。





 家の近くまで来ると美久が口を開いた。

「ごめんね、ありがとう」

 その声は震えていて聞き逃してしまいそうなほど小さかった。

「別にいいよ、それよりあいつら何なんだ?」

「中学の時の同級生」

「でも美久って小六の時引っ越さなかったっけ?」

「うん、でも引っ越したのって神奈川県だからたまたま遊びに来てたのかも」

「そっか。それより嫌われてたって言ってたけどほんとにそれだけか?」

「…………」

「まあ、言いたくないことだったらいいよ」

「ううん、でもちょっと長くなるからそこの喫茶店でも入ろう」

 俺はそれに首肯し店に入った。

「で話なんだけど――」

 俺らは喫茶店に入り注文をしたあと話を始めた。

 話によると美久はいじめをけていた。

 始まりはあのさっき美久の手を掴んだ野村圭(のむらけい)という人が好きだった男子に告られたことらしい。それから野村は美久に対し暴言を吐くようになった。それに釣られるように周りの奴らも美久に対して暴言を吐くようになった。そしていじめは一回始まるときっかけがない限りエスカレートするばかりでとどまることを知らない。例に埋もれず美久に対するいじめもエスカレートしていった。美久は教師に助けを求めたらしいのだがそれが更なる悲劇の始まりだったらしい。結局教師は何もせず美久がただ先生に助けを求めたという結果だけが残ってしまった。それは野村の耳に入り暴力までいじめをエスカレートさせることになったらしい。

「大変だったな……」

 確かに俺もいじめられていただけどここまでひどくはなかっただからかける言葉が見つからなかった。だからといって何もしないわけにはいかない。

「美久はどうしたい?」

「……もうあの人たちとは関わりたくないし高校で同じ目にあいたくない」

「じゃあさ誰かと付き合ってしまえばいいんじゃない? そうすれば告られることもなくなるし。それにもうあの人たちと会うこともほとんどないだろうし」

 自分でも斜めすぎる解決法方だと思った。しかも正直言ってこの方法はあんまりつかって欲しくなかった。これが成功すれば俺はぼっちに逆戻りするだろうし。まあ、仕方ないかグッバイ俺の青春。

「じゃあ、空君私と付き合ってください!」

 ま、しょうがない付き合うしかないよな。うん、しょうがな……うん?

「俺?」

「はい」

 美久の目は真剣そのものだった。じゃあしょうがない――

「俺でいいの?」

「空君がいい」

「じゃあ、はい、付き合おう」

 二人して頬を赤らめる。




 結局あのあとしばらく話てから家に着いた。残念だったな全国のモテない男子諸君! まあ、俺も実感全然ないんだけどね。

「あ、お兄ちゃんおかえり~」

 玄関の扉を開けると妹とエンカウントした。これは戦いだ悟られないよう気をつけろ。

「あ、ああただいま」

「お兄ちゃんどったの顔赤いよ?」

「いや、ちょっと運動したからかなアハハハハ」

「へ~。で何があったの?」

 こいつ全く俺のこと信じてねーな。

「何でもないよ。さて夕飯何かな~」

「ね~鬼いちゃーん」

「なんか字ちがくないか?」

「そんなことないよ鬼いちゃん」

「鬼いちゃんって言ってない?」

「言ってない」

 ならいいんだけどねー。でも言ってるよね? イントネーション的に。




 結局あのあと教える教えないを十分ほどくり返したので布団に入るのが少し遅れてしまった。

 まあ、今日はいいこともあったしいいか。

 そしてすぐに心地よい眠気が訪れるのだった。



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