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4話 買い物

 ――目を開け携帯の時刻を見るともう八時半だった。

 急いで支度を済ませ玄関へ向かう。そして扉を勢い良く開けると――

「おはよう、空君」

 と、元気のいい挨拶が聞こえてきた。

「おはよう、美久」

 とりあえず挨拶を返す。

「じゃあ、行こうか」

「うん」

 先に歩き始めると美久も隣に並んで歩き始める。

「美久はクラスの奴と馴染めそうか?」

「う~ん、正直言うとまたダメかもしんない」

 アハハ、と恥ずかしそうに美久は笑う。何故かズキと痛みが走ったような感覚に陥る。

「そういう空君はどうなの?」

「俺? 俺は……」

 少し言うか迷ったが美久には何となく言おうと思った。

「俺も正直馴染めそうにないよ。まあ、努力はしてみるけど」

「まあ、私は空君がいるからいいけど」

 今度はさっきと違って楽しそうに笑う。

 声に出すのはさすがに恥ずかしいが正直俺も美久がいればそれでいいかなと思っていた。

「あ、見えてきたよ」

 話しながら歩いていたからか随分早く着いたように感じる。目線を少し上げるとそこには馬鹿でかい建物があった。これこそがわが街の誇る最大級のショッピングモールである。まあ、他の街にもこれくらいのはたくさんあるが。

 そんなことを考えているとアミナに着き美久が声をかけてくる。

「じゃあ、どこから回る?」

「うーんと、本屋とかは?」

「へー、空君、本とか読むようになったんだ」

「本といってもラノベだけどな」

「あ、ラノベなら私も読んでるよ! 神さんとか」

「あれ、面白いよな」

  神さん。神をなのるヒロインと主人公のラブコメだ。ギャグのセンスがかなり良く、つい笑ってしまう。

「じゃ、本屋さんに行こうか」

「おう」

 テクテクと歩きながら行き先を決め今度はそこに向かって歩き始める。そして五分くらい歩いただろうか本屋に到着した。そこはやはり街の中で一番のショッピングモールと言うべきか本が充実していた。

 店に入ったすぐのところにランキング形式で本が並べられ見やすいよう工夫もされている。更にはブックカバー、しおりなんかの本関連のものまで置いてあった。一人テンションを上げていると隣から同じくらいテンションを上げた声が聞こえてきた。

「すごいね」

「ああ、こんだけいろんな本があるの初めて見た」

 とりあえず二人してラノベ売り場まで行く。そこには、やはりというべきか物凄い量のラノベがあった。あまり見たことのないラノベから人気のラノベなんでもあった。更にはラノベ内でも一二を争う作品は本だけでなくグッズと一緒に売られているいた。やはり本屋に来て間違いはなかったな。全ては作戦通りだ。と、一人妄想にふけっていると袖をくいくいと引っ張られる。

「ねね、なんかおすすめの本とかない?」

「えーと、これなんかどうだ?」

 少し移動してラノベを取り手渡す。

「《俺はこのデートに全てをかけている!》?」

「そう、俺が初めて読んだラノベ」

 途中まではお約束通りなんだけどいきなり意味不明なことになるというテンプレを壊していく作品だ。

「ありがとう、読んでみるね」

 おう、と返事をすると美久はレジに向かって歩きだした。俺も一冊新刊を手に取りレジに向かう。




 ふーふーとコーヒーに息を吹きかける。あれからまた少し店内を物色して今は喫茶店でくつろぎ中だ。

「それにしても美久がラノベを読むなんて意外だったな」

「そう?」

 本当に意外に思った。どちらかと言うと美久は純文学を好むのだとばかり思っていた。

 まあ、人は見掛けに拠らないしな……。

「それよりこれからどうする?」

「うーん、じゃあ私の買い物に少し付き合ってよ」

 という訳で何故か女性物の服屋に連れてこられた。そして何故か俺のすぐ後ろの試着室では美久が着替えていた。流石に美久がいるときは周りの人も無関心だったが俺だけになったとたん訝しむような視線が俺を突き刺すようになった。まして後ろは試着室だ不審者かなにかに思われてそうで速攻逃げ出したくなる。もういっそ逃げてしまうか……? だが美久が……。

 そんな自問自答を繰り返していると後ろから声をかけられた。

「空君どうかな?」

 後ろに振り返ると顔をほんのり朱色に染め白いカーディガンと紺色の膝まであるスカートを身にまとった美久がいた。

「す、すごい似合ってると思うよ」

「ありがとう」

 そうとても嬉しそうに笑った。

 



 美久は結局あの後もう二着、着たものの結局最初のだけ買ったのだった。そして今は映画館の中。見ているものは美久さんチョイスのベタベタの恋愛もの。正直言って恋愛ものって上手く出来すぎていると思うんですよ~。なんてことを考えていると少し、ほんとに少しアレなシーンに入ってしまった。ほんとにちょとなんだからね! ともかく早くこのシーンを終わらせて欲しい気まずくて仕方ないし。

 チラリと美久の方を見ると顔を真っ赤にして固まっていた。これがもし漫画なら湯気が出てるんだろうな~。

 結局あのシーンはあの後五分ほど続き映画が終わる頃には二人共力尽きていた。

「ご、ごめんね」

 美久が照れながら謝ってくる。

「いや、気にしてないよ」

 こっちまで恥ずかしくなってきた。

「飲み物買ってくるけど何がいい?」

「じゃあ、ミルクティーで」

 はいよ、と返事をしながら歩き始める。しばらく歩き自販機に五百円を入れミルクティーとコーラのボタンを押す。数秒後ガコンという音と共にジュースが落ちてくる。それを素早く取り出し元の場所にまで戻ると数人が美久を囲んでいた。なにごとだ?

「星野~久しぶりになんかおごってよ~」

 そんな声が耳に入ってきた……。


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