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オンハーツ  作者: 陽光
【02】王都は同胞の名前です
27/30

09話 うっかりしてました

お久しぶりです。

遅くなってすみません。

やっとうpできましたよ……!


小説もユーザーもお気に入り登録したくださった方がたくさんいらっしゃって、すごく感激しています。

うpしましたが話が全然進まなくて申し訳ないです。

一体何話で完結するんでしょうね……。

この話で新キャラ登場させる予定だったのですが(笑)


今回説明が多いです。

読みにくかったら本当に申し訳ない……。


 僕はいつも七時から八時くらいに起きる。一般的な貴族より早く使用人や騎士より遅いという何とも中途半端な時間帯だが、それが僕の習慣だ。九時前にフレドが起こしに来るまで本を読んで、それから外で朝食をとり、食後に軽く運動、というのがいつものパターンである。


 ところが今日、予想外に早く目が覚めてしまった。精神的な疲労のせいで早く寝たのが原因だろうか。時計は六時をさしている。


 そうそう。オンハーツの時計は地球とほとんど変わらない。違うのは魔力で動くという点と、懐中時計が主流だという事か。腕時計は邪魔になるので好まれない。あと、時計があるわりに時間の感覚がアバウトだったりする。一応基準となっているのは王都の時計だが、電波時計のような便利なものは存在しないため手元の時計が十数分合ってなかったりするのが当たり前なのだ。



 閑話休題。



 借りてきた本を読んでもかまわないが、ちょっと時間がもったいないような気がする。昨日とは別の場所を探検しながらひと汗流してくるのもいいかもしれない。


 そう思い、動きやすい格好に着替えるとベッドの近くに置いてあった剣を持って窓から飛び出した。





 今更な気がしないでもないが、僕の使っている客室は一階にある。というか、そもそも城自体が二階までしかない。塔だって見た感じ三階くらいだろう。天井が高いので日本の家より大きいが、それでも低いような気がする。立派な建物が高いというのは僕の偏見だろうか。


 城に限らず、僕の屋敷も二階建てだ。ところが、町の建物は三階四階だったりするので面白い。王都やオルディラのような大きな都市がそうなのは土地が狭いので上に伸ばした結果だろう。田舎は大抵一階建てだった。


 リッツィア王国は国土を広げる事が難しい国だ。浮いているという事は地上から離れているわけで、支配しても上手く統治できるとは思えない。仮に他の浮遊大陸が存在したとしても離れている事には違いないから、大陸が落ちない限りは他国を侵略しようなんて考えない方が身のためである。金と命の無駄遣いだ。


 つまり、土地に限りがあるこの国で広い土地を持つ事は権力の象徴であった。だから貴族の屋敷は無駄に広い。昔の地球の人間のように高い塔を造らないのは飛べるから、というのもあるだろう。天に対する憧れがないとも言える。



 またまた閑話休題。



 窓から出てすぐのところも運動するには十分だったが、せっかくなので僕は庭を散策しながら開けた場所を探した。毎日ある程度は体を動かさないとなまるので、いざという時のためにもこの習慣は欠かせないものだ。いくらチートだって鍛えなければ宝の持ち腐れなのである。


 しばらく行くとハーミアの庭が見つかった。ハーミアとはリッツィア王国の国花でバラに似ているが棘がなく、ツーンとしたミントのような匂いがする。きれいなスカイブルーの花が咲くのも特徴だ。


 よし、ここにしよう。


 青と白が美しいハーミアの垣根は一見迷路にも見える。実際のところそれほど高くないので僕のような子供でもない限り迷う事はないだろう。


 まずは剣を置いてウォーミングアップ。軽く柔軟をしてからゆっくりとした動きで型をなぞる。これが案外しんどくて、頬を汗が伝った。


 一通り終わって魔法で汗を飛ばすと、木に立てかけていた剣を手に持つ。この剣は普通の剣より短くなっていて子供向けに作られたものだ。木刀や訓練用の刃を潰したものならともかく、子供用の真剣は特注でもない限り売っていない。が、フィーリッツ地方では珍しくも何ともない一般的なものである。


 こういう剣は軽く作られていて普通の大人向けの片手剣や両手剣より威力がない。扱うのが子供なのだから純粋な力でも差ができやすく、対人では隙をつくる程度にしか役立たないだろう。町の子供達が使う分には魔物相手しか想定していないので問題はないのだが、僕の場合事情が違ってくる。


 外見からも想像できる通り僕は力が強い方ではない。竜人であるカインはもちろん、同じ年頃の翼人の子供と比べても少し弱いらしい。武道の才能はあるがそういった方向には恵まれなかったようだ。


 一方で魔法は頭脳戦である。魔力の量が多いと威力のある魔法を使えるが、だからといって強いという事にはならない。自分が使える魔法をいかに効率良く的確に使用できるかが鍵となる。だから、魔法のプロとも言える翼人や魔人相手に魔法戦は部が悪い。人間ならともかく、長く生きているので経験の差が如実に表れるのだ。翼人が圧倒的に多いこの国では対人戦で勝とうと思うと魔法を囮に剣で勝つのが一番だと僕は思う。


 まぁ、これはあくまで僕の意見だ。マクレン叔父やグロウに習ったわけではないので試してみない事にはわからない。とにかく、僕は剣が非常に重要だと思っている。


 力で押し負けるなら技術を磨くべし。僕の剣は柔の剣だ。つまり相手の力を利用して守り、攻撃する。図らずも我が騎士団の女性団員と似た戦い方なのだが、翼人全体としてそういう傾向にあるので気にしない。うん、気にしない。魔法に特化している分腕力などは弱いのだ。カインがうらやましいとか思ってないよ、うん。



 そんなどうでもいい事を考えながらも体を動かす。フィーリッツ地方は色んな武術が入り乱れた地域なので最早流派どころか武器の違いすら超えてしまっているが、基本の動作はどんな武道でも同じだ。意識しなくても体はいつもの動きをなぞっていた。


「はっ、ふっ」


 声を漏らしながら剣をふるう。魔法を使う事も想定してイメージトレーニングも欠かせない。例えば生垣の向こうから魔物が出てきたらどう対処すべきか。火や雷は危ない。となると、水や氷だろうか。


「……あ」


 やってしまった。


 僕は凍りついたハーミアを見てフリーズする。始めの頃はよくあったミスだが、かなり恥ずかしい。無詠唱ができる弊害だった。


 無詠唱とはそもそも、想像だけで魔法を発動させるものである。つまり考えた事が現実になるという非常に危険なもの。素質がある一部の人にしかできないらしいが、魔術ならともかく魔法が使える翼人や魔人だとかなり神経をすり減らされる。普通は詠唱しないと発動できないというすり込みを幼い頃からするらしく、僕が魔法を使う時に短く詠唱するのもそのためだった。それでもこうした事が起こるのは前世の知識のせいだろう。無詠唱で魔法を使うチートな主人公の小説もあったからできるものだと認識してしまっているのだ。


 つくづく損しかしていないような気もするが、僕を構成する要素の核とも言うべき前世は何ものにも代えがたい大切なものである。



 また話がずれたが、僕はため息を漏らしつつ生垣に近寄った。凍った程度なら手で触れずにゆっくり溶かせば何とかなる。火の魔法でなくて本当に良かった。水でも生垣に穴が開いていたかもしれない。


「んん?」


 ハーミアの様子を見るために覗き込んだ僕は、花とは違う白を見つけて目を瞬いた。生垣の向こうに回り込み、それを見て息を飲む。


 真っ白な髪に中性的な美しい顔立ち、ほっそりとしているが女性的ではない体つき。驚くほど美人な青年である。


 ……え、まさか魔法が当たったりとかしてないよね?


 我に返った僕は慌てて駆け寄ったのだった。



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創作垢作りました。

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詳細は活動報告にて。



04/14 誤字修正

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