047 視察と休暇(4)
なかなか筆が進まないですが少し書き溜めたいところ。
ギルド証明が出来上がるまで5日かかるそうなので、各所知り合いのところに顔を出す事に。
学院には写実に関する育成と有用性について話を詰め、
役所では都市部周辺の治水計画と進行具合、治安問題などの組織に関する報告を
商会関連では、利益の還元具合のチェックに走る。
都市の中核メンバーには、自分の息の掛かった人間。
自分の理念に沿う人間が多く在籍しているので、さほど認識誤差は無いようだ。
それでも都市近郊までしかその成果は浸透していない。
離れれば離れるほど封建社会の色が濃く残り経済活動が停滞して見える。
そのあたりをこの視察で少しでも改善できると良いのだが、そこまで分からないかもしれんしなっと。
「しかし、飯が美味くなったな」
定食屋で飯を食った感想がこれだった。
外食という概念の定着もあるのだが
実際問題、年々と美味さが増していくので改善を味わいで実感できる。
現代日本のレベルは無理だが、みんな美味いものが食べれるといいのにな。
そんなこんなで、5日を過ごしてギルドから認証を受け取り都市を後にした。
ギルドの依頼を受けれなかったのは痛いが、休暇もそう長くは取れないだろう・・・・。
骨休めってなんだろうな。
整備された街道を行く事で移動に関してはかなり短縮できるようになっている。
しかし、それでも馬の限界だろう。
冶金の技術自体はあるから、ネジやらバネの概念を研究させて機械仕掛けから発展させたいところ。
蒸気機関車とか夢よのう。
そこまでやるには炭鉱やら鉱山やらの資材面での問題もあるので一朝一夕では無理だろう。
そのうちの目標の一つにしておくか。
・・・・、仮定だがここが元居た世界の日本であるなら
外国、ヨーロッパ辺りの大陸があればその技術が既にあるのではないかと思わなくも無い。
だがあくまで似ているだけで、差異も見受けられる。
封建社会なのはあったが、階級的なものはあまり日本の史実とは異なる。
なんにしても語学が駄目だから、無理そうだな。
概念だけあれば作れそうな気もしないでもないのだが、そこまで手を加えていいのかも気になるところ。
本当に今更なんだが。
思考はそれたが、視察という名の外遊を楽しまねば。
色々と思いながら東へ抜けていく。
ここでの旅の醍醐味というと自然豊かな景観と美味しい空気ぐらいだろうか?
もともと旅行好きでもなかったので、偉そうに醍醐味とか言えないのだがそれでも旅が楽しいと思える要素が少ない。
もともとが生まれた土地を離れる機会がある職業は限られており、旅行の概念が無いのだ。
街道整備の副需で宿場や外食用の酒場が活気付いてきているがその土地ならではの食文化まで広がっていないのが現状のようで、唯食べるだけという感じだろう。
地酒なども特色があるわけでもないのでそういった楽しみも無い。
近代だと貴重と思える大自然もここでは日常足を延ばす範囲で見受けられる。
自分自身もこちらに来てかなり経つので、広大な自然というものの尺度が変わってしまった。
街道沿いをぐるっと回ってみての感想としては、流通が増えて経済が回り始めている印象は受けるがまだまだ発展途上の歩みを踏み出したといったところか。
あの街と比べると寂れてるといった印象が拭えないのが侘しい。
観光という概念からいうと都市部の発展している町並みの方が珍しいようだ。
それも高層ビル群を知る身からすと大して驚けないのだが。
視察はおおむねふらふらする事と途中開発中の温泉地区で温泉に入るの事ぐらいしか楽しめなかった。
面白いものというのはそうそう無いものだな。
娯楽の普及にもう少し力を入れてもいいかもしれない。
それには税率の引き下げも視野に入れねばならないが、自分ではどうにも出来ないだろうか。
野盗が出ない、飢餓で苦しむ人が減っている等この身でこの国での成長を感じられたのだが満足できない自分が居る。
『大変ありがたい』と役人からも感謝の言葉も貰うのだが納得できない。
他人の事なんて正直どうでも良いのだが、良きを知ると現状に甘んじる事が出来ないという状況を体感したのだろう。
官僚やら議員が腐るのも良い生活を味わってしまったら、それを忘れる事が出来ないからだろうなとそんな事を思った。
自分のやっている事は悪ではないのだろうが、ここでは良い事なのかどうなのか。
そんな思いが頭を堂々巡りさせながら、城下町への帰路に着いた。
回れたのは街道が整備された城下町から円状に広がる地区だけだった。
さらにそこから広がる地域には貧困があり飢えがある状況だという。
直にはそれに対応できない事の歯がゆさと自己欺瞞のような行政の進め方が思いにしこりを残す結果になった視察であった。
まあ前半遊んでいたようなものなので、多少は悩んだ方がいいのだろう。