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その腹黒さも一面である  作者: 縁側之猫
3章 領内外
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044 視察と休暇(1)

ナガマツとの面会は案外直でき、視察の名目の旅はあっさり許可された。


始終笑みで機嫌よさげなその様子は逆に不気味だった。


こんな上役は本当に嫌だ。


「さてと、まずはホームタウンに寄るか」


街道整備も行き届いた自分の力を注いだ街へ行くことへ。


親は無くとも都市は育つといった所か。


自分が居なくても街はまた大きくなっていた。

要所として街道が整備されており、ある程度大きくなった事もあり年々その規模が大きくなっているようだ。


街の外周も広くなっていたが内部の通に面する建物も立派になっている。

人通りの多い表通りに面する建物は多種多様な仕事を生業とするものが入っているようで、扉の横に掲げられる看板は見知らぬマークが描かれていることもある。


自分が関わっていた時などほんの初期だけだったなと少し物悲しくなりつつ目的の場所へ向かう。


正面だけなら昔と変わらない佇まいを残しているのだが、両隣に在った筈の建物は増築されたそれにより侵食されていた。

それだけでも規模が大きくなったのだろうと伺わせた。


昼時に近い時間だったが人の出入りは多く、その活気は喧騒という表現で伝わる。


建物内部の構成は変わっていないようだが、室内面積は以前より広くなり人がごった返していても良いようになっていた。


「壁を抜いて広くしたのか・・・。この階層の建物で強度大丈夫なのかな」


地震大国出身としては気にかかる事がおもわず口から漏れた。


「なんでも、この都市一の棟梁が手がけたらしいから下手な武家屋敷より丈夫だよここは」


こちらの不安のつぶやきを聞いた男が心配すんなよと、がはははと笑いながら声を掛けて歩いていった。

親切な通行人Aだな。


都市一なら大乗なんだろうと心配を止めて、受付の列に並ぶ。


盛況なこの施設は、6人待ちの状態だった。

待つのが面倒な事だ・・・・。

自動発行機もなく整理券の配られないので地道に待つしかないのだが、とりあえず本でも読みながら順番がくるのを待ってみる。


十数分経ってようやく順番が回ってくる。


「冒険者ギルドへようこそ」


営業スマイルで受け付けてくれるお姉さま。

接客業界に欠かせない業務用の笑顔だが悪い気はしないので効果はあるんだろう。


そう、説明しよう!!

ここは忘れがちだが異世界という事で趣味で作った冒険者ギルド(何でも屋紹介所)だ。


まあ実質は職業紹介所としての機能だったのだが、町が街になり都市になっていく段階で行政でも職を斡旋するようになり内容も変わった。

行政からの斡旋はほぼ長期から中期にかかる正社員と期間社員といったものを中心に。

冒険者ギルドの方は中期から短期にかけてのアルバイトに似た待遇の仕事を斡旋するようになった。


このあたりは身元の有無が必要だとか住民登録、税金等の兼ね合いで変化したそうだが趣味の残滓がまだあってうれしい限りだ。


夢想した、モンスター退治や採集採掘で報酬を得るような組織にはならなかったのだがなんだかんだと定職に就けないような人々には重宝されるようで、治安維持もかねて腕っ節に自信のある人間はこちらに一度はお世話になるようだ。

名が売れるとスカウトされるといった道もあるようで。



兎に角ここによったのは、


「ここの職員のノブヨシさんに取り次いで欲しいのですが」


「ノブヨシさんですか?」


そんな職員いたかなと受付さんは思い出しているようだ。


「・・・え~と、もしかして支部長のノブヨシ様ですか?」


「ガラの悪い男だったのは覚えてますが、役職は無かったような気がします」


「少々お待ちくださいね」


少し引きつったような顔されたが、支部長では無いだろう。

もともと町のチンピラだったしな。


こちらの遣り取りが聞こえていた何人かは好奇の視線を向けているようだ。


他人の視線ほど嫌なものは無いなと居心地が悪くなる。


しばらくして戻ってきた受付嬢はこちらにどうぞと奥に案内してくれた。


奥に抜けた所で中庭のような広場に出た。

入った事はなかったが広さからみて鍛練場のような所だろうか、巻き藁とか立ってるし。

こういのは必要だ!!と提案して場所と予算の関係で却下されたのを懐かしく思う。


「うけとれよ!!」


大音声が響いた方に顔を向けると棒が投げ渡された。


「積年の恨みを今日こそ晴らすぞ」


声の主はそういってこちらに迫るのだが、懐かしい顔だ。

受付嬢は探し出してくれたようなのだが、面会相手はなぜかこちらに襲い掛かってくる。


ガラも悪いがやはり頭も悪かったのだろう。


手に持った木刀でこちらに殴り掛かって来るが、渡された棒でそれをいなしていく。

打ち合う毎にカンカンと木質特有の音が響く。


数合打ち合い、まあそうだなと納得して攻勢に転じる。

相手をいなして足を払いにいったり急所へ突きをもっていったりと一気に攻め立てる。

相手も最初の勢いを為持てず防御に転ずる。


持ち前の腕力も加えてそのまま一気に押し切り、蹴り倒して押さえ込む。


「相変わらず猪突猛進だな、いい加減搦め手を覚えたらどうだ?」


「うるせーよ、俺は正面からお前をぶちのめすんだ」


ぎゃーぎゃーと騒ぐので鳩尾へエルボーをひとついれて黙らせる。


おぉーーといつの間にか増えたギャラリーから声が漏れた。

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