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その腹黒さも一面である  作者: 縁側之猫
3章 領内外
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042 宴の席

フラグは得に立たなかった?

歓迎の宴の名目で宴会が開かれているが楽しくは無い。


お偉方の顔色を伺って食べる食事が美味いといえるはずも無いからだろう。

食事の味は状況に左右されるものだと実感できる時間だ。


実際問題立食パーティーとは異なり座して取る形式の食事では食べるのがメインなのだが、挨拶周りも含めて尋ねてこられるのでご飯どろこでもない。


話題の大半が

「豊作を司るとされる竜神様とはどのようなお姿なのでしょう?」

「あなたに英知を授けたのはどなたなのですか?」

「ぜひとも富を増やす方策を」


などなど怪しい情報を元に半信半疑で話しかけてくる者ばかりだ。

会話が面倒なことこの上ない。


ああ喋らなくて頷き一つで意思を組んでくれる従僕が欲しいものだ。


「ヨシカさん、大名様がお話がしたいそうなので来て頂けますか?」

辟易している所に次なる苦難をアチガワが笑顔で持って来た。

なんとも憎たらしい事だろうか。


サギサワは一段高い座敷で側近らしき人と話していたが、こちらに気づくとにっこりと笑顔をくれた。


笑顔はいいが爽やか過ぎて逆に怖いんだが。


「ヨシカ殿宴は楽しんで頂けていますか?」


宴の楽しみ方なんて知らないので頷けないのだが、やはり食事は気の置ける人間と食べるか一人に限る。


「ありがたい限りです」

税金で食べる食事は精神的にずっしり来るし。


「それにしても、ヨシカ殿は本当に不思議な方ですな」


「どこがでしょうか?」

これでも一般人代表なぐらい普通だと思っているのだが、

すっかり慣れた外見と腕力を思い少しだけ不思議生物だと訂正を入れた。

それにしたって、考え方は一般人からかけ離れていないと。


一般の基準抽出自体が偏りなくできるわけ無いので一般と言う括り自体が幻想の類いなのだが。


「その雰囲気もそうだが、素性もしれぬ身で国に影響を与える事が出来る手腕の源も謎のままだ」


元々がここで生まれ育ってないので仕方がない。


「知られていないだけでそんなに大層な事では無いですよ」


「興味をそそられるという一点だけでもその価値は計り知れないのです」


どう計り知れないのかわからんとです。


「好奇心ですね、人生は長いですから理解出来ない事がある方が充実しますよ」


全知全能とは退屈なものはないだろう。

退屈は良くない、特に為政者は悪い嗜好に傾倒しやすい。

少し足りないぐらいが方が幸せだろう。


「ではあなたを傍において置ければとても充実するのでしょうね」


「ご冗談を私は自他とも認める退屈極まりない者です。側に仕える事になってから一日で後悔しますよ」


退屈極まりないかどうかはさて置き、平凡だからつまらないだろう。これでも友人は片手の指で足りて居たので間違いない。


「私としては益々興味が深くなったのですが」


「残念ながら既に君主に仕えている身ですので、二君に仕える訳にもいきません」


仕えたくて仕えているわけでもないのだが、この位の口実には使わせてもらおう。

日頃こき使われている事だし。


「使者殿」


サギサワはアチガワへ話しを振るようだが、視線を送って下手な事を言うなよと警告してみる。

まあ視線だけで会話が出来るわけもないのだが。


「ヨシカ殿を我が国お譲り頂けないか?」


ストレートな要求だが物じゃないんだから、譲るとか譲らんとか勝手に話をするなと思うのだがな。

君主制では在り得る流れか。


「残念ですが私どもの殿もいたくヨシカ殿をお気に入りでして、手離される事は無いかと。

それに我が国も行き届かぬ所が在りますので、ヨシカ殿にはまだまだご助言いただかなければなりません」


目力が通じたかどうか不明だが、一応断ってくれたようだ。

頷かれた二人とも殴り倒して逃亡生活の始まりだったな。


平穏が好きなのに生きる環境を早々変えられてたまるか。

それ以上に窮屈な思いはしたくないのだ。自由気ままでなくてもいいが居心地の悪い環境はご免だ。

サギサワの近くはどう考えても居心地が悪いし、改善も見込めない。


妙な状況になるのは勘弁してもらいたいものだ。


「そうか、とても残念だね」


諦めが思いのほか良いのか、だがその爽やかさも見る側からすると気分が悪い。


徹底的に合わない人種のようだ。

ウマの合わない人間とは係わり合いになりたくないものですよ。


その後も益体の無い話につき合わされご飯も不味く食べさせてもらい宴は過ぎていった。


外交としては及第点のような話し合いだったそうで、結局自分がこの場に参加した意味を見出せないまま隣国を去り帰国の運びとなった。


今ひとつすっきりしないままだったので、気分転換に名物食べたり書籍買い漁ったりと帰路は奔放に過ごしながら懐かしき土地に戻っていったのだった。


3/9誤字訂正。

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