041 歓待
幾日かの日程を消化して隣国へたどり着いた。
感想としては、文化と技術は特に変わりはなさそうな感じなのだが、
外延にはやはり貧民街のようなものが見て取れる。
どこでも格差は減らないものだなと嘆息してしまう。
進む先には城とは異なり敷地が広い屋敷といった風情の建物だった。
背を超える壁と立派な門、内部の建物もかなりしっかりした造りで金が掛かっていそうだと判断した。
平安時代の屋敷といった風情だなと城と比べてみた。
優雅さを求めて作られているのではと思う見た目なのだが、片や城で片や広い屋敷となるとここ近年での情勢格差によるものなのだろうかと疑問が出る。
城であれば戦を前提に攻防の為となるのだが、それを常として使っているとなると戦が起こる素養が国にあるはずだ。
しかしすぐお隣では国のTOPが広いだけの屋敷に住んでいるとなると、戦乱と呼べるほど危機迫ったものを心配しなくてもいいからだろう。
貧富の格差があったり、町並みだけなら統治にさほど差がないだろう事からどういった仕様なんだろうなとなるわけだ。
「お待ちしておりました」
出迎えたのはナガマツとは比べるべくもない好青年だった。
短く刈りそろえられた髪が活発さを物語っているような感じなのだが、
爽やかな笑顔とか苦手だな。
サギサワと名乗った大名は権力者のくせに慇懃丁寧だった。
こういったタイプはまったくもって腹黒カテゴリーなんだろうと決め付けた。
使節の一員として付き従っては居るのだが基本的な遣り取りはアチガワが代表で受け答えをしている。
長々と労いの言葉を交わしているの聞いていると眠くなる。
ご飯食べて風呂に入って眠いな。
退屈だなーと目線を彷徨わせる。
流す視線が回りの雰囲気を感じ取った。
周りに控える臣下はサギサワと違って歓迎してない様子。
きな臭いと感想が出た。
「そちらがお話のあった方ですか?」
どうなるやらと考えていた所でサギサワから声が掛かった。
「お噂はかねがね伺っておりますよ、竜神の加護を持ち様々な英知を用いて豊穣をもたらしたと」
「加護?巫女?」
何の話だとアチガワを見るがうんうんと頷くだけで説明は無い。
竜神というとアレの事だろうが加護など貰った覚えは無いし、英知なんてものとはとんと縁が無い。
しかし大名もふざけているいるといった感じでもない。
噂にしても本人はわからないだろうし、可能性はあるのだが・・・
「臣民の間で最近噂に上がる事が多いのですよあなたの事が」
「私のような者の噂などお耳汚しなのでしょうが、気にかけて頂き光栄です」
なんて心にもない台詞が出てくるあたり、毒されているに違い無い。
何がキーワードなのか解らないがここに来た理由に引っかかりそうだ。
「まあなんにしても長旅でお疲れでしょうから、本日はゆっくり休んでいただき明日また歓迎の宴を開かせて頂きます」
そこで初日の折衝は終わりの様だ。
まあ細かい政治の話をされてもサッパリだろうから早めに退散出来るのはありがたかった。
体力的には向上しているとはいえ旅の疲労を感じ無いとまではいかないのだから。
使節の一段として連なる部屋へと一行は案内されひと段落を着いた。
「明日からが交渉ごとの本番ですね」
荷物を降ろした所でアチガワがそう切り出した。
声を掛けられたからにはこちらに興味があるという事だろう。
目的が何であれ警戒レベルがかなり高くなってしまった。
「おいしい物でも食べれると思ったのだが」
「それでしたら明日の宴で心行くまで堪能できるのではないでしょうか」
「宴なんてものは基本堅苦しいし、政治に関わるものじゃ食べてる余裕があるかどうか。
それよりも大名が言っていた事に関して問いただしたいのだけども?」
改めてアチガワに視線を送るが涼しい顔だ。
憎たらしい事このうえない。
「あなたの事は竜神の加護を受けた、聞いた事も無い知識を駆使する英知ある者として伝え聞いているそうです」
「その伝え聞いてる時点でいろいろ釈然としないのだが」
「十中八九間者からの情報でしょうが、それをとやかくもいえません」
「なんにしてもご指名なんだからなんらかの思惑はあるのだろうと思うけど、具体的にこちらの対応はどうするんですか?」
方針が無いと動きよう無いんだが。
「特に決まっておりません、相手の出方を伺いこちらの利益に繋がるように話を進めるのが我々の仕事です。なにより不透明なことが多すぎるのでなんとも方針も立てづらいのです」
「私が居る真意も解らないということですね」
ますます面倒事の予感がするのだが、なるようにしかならないか。
情報が少なすぎて判断する事がほぼ出来ない状態なのだし。
「なんにせよ失礼の無いようにだけお気おつけて下さいね」
そんな面倒事はお断りだと心の中で舌を出した。
更新遅れてます。
筆が進まないですが感想お待ちしてます。