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その腹黒さも一面である  作者: 縁側之猫
3章 領内外
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038 判断

自分が理由だと言われても困るのだが


それほど何かに影響を与えた記憶が無い。


「もともとこの土地は竜神の加護のお陰もあり豊穣でした、そこに貴方の事業が加わり数年で小さな農村まで豊かにしたのです」


話だけ聞くと悪い事はしてないのだが、貧富の差が激しくなったという事か。


「それに加えて流民も減り野盗などの危険が無いのですから」


条件が変わらず、近隣が発展したからといって生まれ育った地を捨てられるものだろうか。


地元というのは良くも悪くも捨てがたいと思うのだが。


「なら同じように発展させれば同じように伸びるでしょ?」


「技術よりも思想の方に問題がありますね。民の為に事業をするという事が普通できませんので」


上は下を見るだけで同じ視線は持てないということか。

経済活動が活発だと回りまわって豊かになるのだが、なかなか慣れ親しんだ考えは抜けないものかな。


自分にしても現代日本の常識は捨てきれないし、別に進んで捨てようとも思わない。

それに似たようなものだろう。


国境線についての事情は解ったとして、こちら側が受け入れを拒否できない理由はなんだろうか。

話だけで判断すると、国としては長期的に見て受け入れるメリットが無いのだから断ればいい。


村人には恨まれるかもしれないが国としては妥当な判断だと思う。

リスクを負ってまで迎え入れる必要が感じられないのだが。


解らない事は聞いてみるに限るということで聞いてみた。


「理由としては幾つかの思惑が重なっているという所ですね」


「思惑ですか」


「簡略に言うと領土問題という事なのですが」


隣の領土から領民を受け入れるのと領土問題とどう繋がるのか?


「まず受け入れを押しているのは、武家の一門。町の領主を任されている公家。そして儀典院ですね」


「武家は・・・領土の治安を考えれば否定派なのでは?」


よそ者を自分の土地に入れるというのは様々な問題を抱える事になる。

普通は治安を預る武家はそれに反対するようなイメージなのだが、


「武家の一部です。これは不遇の領民を受け入れて、その報復が有ればそれを口実に領土を広げたいという所ですね。武家は武力抗争で武勲を立ててその恩恵で領土を広げて行きます、領土にも当然限りがありますので新たに手にする機会を欲する一部がという事になります」


「親切心からではなく、自分たちの利潤の為ですか」


「次に町の領主ですが、こちらは新しい領民を受け入れる事で自分の土地を開拓刺せる為ですね」


「開拓事態は今も継続して行っているのでは?」


「おっしゃる通り開拓は継続して行われていますが、余り豊かで無い土地には住む者が少ないのです。よそ者であれば与えられる土地に文句を付けようが無いので、開拓が難しい土地に送る事がおおいのです」


「領民になっても土地を選ぶ権利が無いのですか」


そんな規則があっただろうか?


「他国の人間であればと括りはあるのですがね、間諜や工作員という可能性も当然あるので移り住んで直ぐは住む場所は限定されると言う事です」


「でも土地を捨てる事も出来ますよね?」


流民と言われる人々は土地を捨てて別の土地に行く事があるはずだが、


「流民になると基本は暮らしが経ち行かなくなりますから・・・。あなたの行った事業で流民を受け付ける素地が出来てきましたがそれでも流民になるのには抵抗がある民がほとんどですから」


しみじみといった感じでそう補足された。


「最後に儀典院の場合は、その性格上奉仕の心で願い出ています」


「裏があるわけではない?」


宗教組織というのは基本後ろぐらい所があるような気がするのだがそうでもないのか。


「まったく無いわけではないですが、基本はそうです」


宗教は怖い怖い。


しかし拠り所の神が実在しているのでそこまで暴走しないのだろうか?


実情わからないから触らぬ神に祟りなしか。


「基本は今の三つの勢力が賛成しています。それに対して反対を表明しているのは公家の一部のみですね」


「殿は?」


こう言った意見が割れる時はトップが最終判断するはずだが。


「今回の件に関しては内外交担当の我々に一任されております」


まるなげなのか・・・しかし何故か。


「ただ貴方へ助言を求めて共に解決するよう言付かっております」


それでこの移動なのか、面倒事をまたもや押し付けられたような。


恨みの数値があれば確実に数値が跳ね上がっただろう事だろう。


「そういう事なら、全権委任されているので深く考えず利益を優先させればいいのじゃないかな」


「極論からいくとそうなのですがね」


アチガワの言葉が尻すぼみになっていくのを聞いて、何かまだ問題があるのかと疑問に思う。


「アチガワさん、私はこの問題が解決したら元も仕事に戻れますか?」


「殿からはそう伺っております」


「そうですか」


言質を取って方針を決めた。

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