034 仕事始め
新章突入です。都市育成が行き詰ってるので迷走中ですが宜しくお願いします。
神なるモノと会って来たが特殊な加護を手に入れたわけでもない。
伝説にある武具を手に入れたわけでもない。
得たのはモノになるかどうかも分からない知識だけだった。
という前おきをしておいてから現状の把握に努めよう。
一月を要した仕事も終わって城下町に帰って来たが特に凱旋祝いも無い。
事務的に大名への報告をして終わり。
掛けられた言葉も、
「御苦労、今日は休め」
という有難いお言葉のみだ。
権力者ってのはそんなもんだし、自分は特別でもないので仕方が無いか。
それはさておき古巣の都市へ何通か手紙を書いてその日は眠りについた。
自宅という安心できる場所だからなのか、気付かない疲労が溜まっていたのかぐっすり眠れた。
一カ月休暇無しで働いて翌日から仕事とか普通なら過労死が見えそうだがなんとかなるか。
久しぶりにすっきりした朝を迎えて登城する。
大名には挨拶しないのだが自分の部屋に行き一月分の仕事の成果を確認する。
仕事をしていると帰って来たと思えるのだから恐ろしい事だ。
宮仕えに満足などしていないのだが、慣れというのはこれだから・・・。
昼過ぎまで報告を聞くのに時間を使い昼食をという前にいつも通り控えていた人へ声かける。
「コジュウロウ、基本的には問題なかったようだけど。この三点だけ確認させてください」
書類を三枚向けてそう切り出した。
「これ、ですか」
三枚の書類は一件なんの変哲の無い運送系の書類だ。
ただし、注意して見ると問題に気づける。
「南部の物資運搬に関する書類ですね」
「これだけ見ると特に問題点は分からないんだけど、こっちの書類と比べると差異が出てくる」
追加で用意しておいた書類を三枚出す。
コジュウロウは書類を受け取って熟考しはじめる。
しばらくして成程と頷いた。
「経由している筈の町の数が違いますな」
「運送費用は最短距離で出す筈なんだけど、これを見る限り水増しして請求している」
「しかし、書類の書き損じなのでは?運送総量が増えているのですから」
人のやることだからそれはあるのだが、
「それはそれで書類処理の方法に問題があると言う事になるので、どちらにしても精査して改善が必要になる」
「確かに」
「こういった事務処理は手法が浸透するまでまだまだ掛かるかもしれないけど、一つずつ問題を見つけて解決していくしか無い。それと問題点を洗い出せる人材の育成も必要かな」
今だ近代的な事務処理が根付かないのはやはり識字率の問題や学問と呼べるものが無いからだろう。
事業が拡大するのに対応出来る人材が揃わなくて効率が悪いという事だ。
まあ、運用系の専門家でもないのでアドバイス程度になるし正直面倒なので人材育成を急がせるべきなんだろうなと。
「兎に角その書類については確認しておいて下さい」
「手配しておきます」
「さーてお昼ごはんだ~」
間延びして身体の凝りをほぐして立ち上がる。
仕事ばかりしていると食事が楽しみの5割は占めるようになる。残りの4割は寝る事で、残りの一割が趣味なのだが、現代日本のブラック企業なんかに勤めたら趣味一割も無くなるのかなともの悲しい思いがした。
城の廊下を城門へ向かって歩いて行く。
本来昼食などは、お座敷があり厨房で作られた食事が振る舞われる。
しかし城では相変わらず親しい人間が居ないので所在なくご飯を美味しく食べれないので城下へ食べに出ている。
城と比べると食材の質も落ちるのだが、交通網が整備されて食材が豊富になってきている事と田園の拡張で作物の種類が増えている事もあって質素過ぎるという程でもない。
また行きつけの何件かの食事処には、試作料理の名目で日本で食べていたような料理を幾つか作ってもらい好みの食事のラインナップを増やしているのもあり苦でも無くなっている。
ふと思い出して食時前にギルドに寄って行く。
領主(つまり大名)のおひざ元なのにここのギルドは出張所扱い。
本店を移転するのが筋なのかもしれないが、主要施設が集中しすぎると人の流れが無くなりそうなのと利権に群がるコバンザメでもでやしないかと心配してそのままだ。
学院に関してそのうち学園都市でも作りたいなとは思っている。
ただし、子供であっても労働力になっているここでは学問は道楽の一種という認識がまだまだ高い。
識字率を上げるには幼児の時の教育が大事なので、義務教育化したい所なのだがまだまだ領民全ての子供に無料で教育を施す為の行政整備が追いつかないのが現状。
そのあたりの価値観がやはり上の方で認められて居ないのだろうが、近代化を進めていけばその辺りの重要性があがるのかなと期待はするのだが。
モデルケースとしての都市での学院は、都市での税収の一部でそれを行っている。
食費などは流石に実費なのだが、大量生産して安く提供する食堂やら教材関連の無性提供など出来る限り入りやすい環境造りをしているのだ。
そのあたりはやはり自分が決定をだせる権限を持っているのでやりやすい。
実際は末息子が責任者の筈なのだが、職員一同こちらの意見は汲んでくれるので有難い限りだ。