使者の恋心(2)
目が覚めると薄暗い部屋に寝ているようだ。
まわりに目をやろうと身体を起こそうとして全身に激痛が走る。
「ぐあっ」
苦痛でうめき声が漏れた。
一体何があったというのだ。
思い出してみるが最後の記憶は激しい衝撃だけだ。
恐らくだがこちらが刀に手を伸ばしたで、取り押さえられたのだろうがそれにしてはこの痛みは・・・。
「目が覚めたようですね」
掛けられた声にはっとしてそちらを見ようとしてまた痛みに悶えた。
「ああ、動かないで下さい。大変な怪我をされているのですから」
「怪我・・・だと」
「ええ、ヨシカさんに手加減抜きで蹴り飛ばされて壁にめり込んだと聞きましたよ」
唖然とするといのはこの事だろう。
ヨシカといえば会いに行った人物だ。
しかし細身で背丈もさほどない見た目だった。
とても自分を蹴り飛ばせるとも思えなかったし、あの時は一瞬で横から衝撃を受けた筈なのだが。
「ヨシカさんも百貫もある岩を持ち上げれる人ですから・・・」
こちらの疑問を見てとったのだろう、親切からかそう言った。
言われた事実から、例にもれずあの者も粗野でありありえぬ力を使うのだと認識を改める。
「ここはどこだ」
「・・・牢屋になります」
「牢屋だと!!」
どなり声を上げてしまい、身体が軋んでまた悶え苦しむ。
「あなた様がヨシカ様を手打ちにされる所でしたので、そのままお返しする訳にはいかなくなりまして」
とらわれの身という訳だな。
「ここに居る間の看病を任されたウメと申します」
改めてそう言えわれ、こちらも要約声を掛けている人物に目を向ける事ができた。
「!!!!!!!」
そう、その時の感覚を言えば衝撃が走ったのだ。
鼓動が速くなり、血が巡るのを感じたがそのまま意識を失った。
@@@@ 時間経過 @@@@
数日が経った。
気がかりであったヨシカをお館様の所へ連れて行くというのは随伴出来なかったが適ったようだ。
こちの質問にあけすけ無くウメが答えてくれた。
そして一週間が経つ頃には自分の気持ちが確かになっていた。
激痛で起きる事もままならなかった為、食事から下の世話まで彼女に頼りきりであったのだが嫌な顔をせず甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
そんな姿を見るつれて、自分が惚れているという事に思至っただ。
一月も経つ頃に、自分の思いを告げた。
しかしすげなく断られた。
「なぜだ!!」
強い口調で迫ってしまったのだが
「あなた様は武家のお方です、私は性も無い者です。私の様な者を娶るなどとんでもない事です」
身分の差という事だろう。
実際問題武家や公家の者がそれ以外の下層の者と婚姻を結ぶ事などあり得ない時世だ。
それでも自分の思いは諦めきれず。
その知性があれば大丈夫(医療に携わるほどなので)だとか
お前しか居ないとかいろいろと迷走してみたが今だ色良い返事を貰えない。
強引に娶るという事も可能ではあるのだが、身体治りこの町で暮らすようになり。
自分の考え方が少しずつではあるが変わっている事に気付いた。
ウメの褒めるヨシカの治政を見て廻っているうちにいろいろと思う事もあったのだ。
この都市では身分の差別が薄い、本来忌避されるような職であっても普通に扱われる。
根底は個人の裕福さだろうか。
農民と商人との格差がかなり狭いのだ。
着るものや住む場所、食べる者に至ってもかなり配慮されている。
そして自己で何かを考える、行動するという事とそれが行える行政になっている事。
こんな町は見た事が無かったのだが、居心地は悪くない。
そして昔はお館様への忠義のみがあったのだが、今ではウメへの思いが強すぎて身体が治っても城下へ戻る事が出来ないでいるのだ。
最近はこのまま武家という身分を捨てようかとまで思うほどだ。
この思いが無くなるまでは、この町を出る事は無いだろう。
「ところでツバキ、使者が一目惚れってそんなに絶世の美女だったの?」
「いえ・・・、普通の顔立ちの子でしたけど」
「けど?」
「ヨシカが考案したなーす服が原因ではないかと」
「え・・・」
「衛生管理としては大変重宝しているのですが、あの服を着た女性に看護されるところっと行ってしまう人が多い用で」
そうなのか・・・と乾いた笑いがでていたヨシカだった。
ヨシカとしては、見た目よりも衛生管理の観点から汚れが目立ち作りやすくて動きやすい服。また見た目で直ぐ分るといいな程度で提案したのだが。
後日なーす服教会という謎の地下組織ができたとかなんとか・・・。




